空港やイベント会場など広大な敷地に広がる青空駐車の問題点

複数の階層に分けられている立体駐車場や地下駐車場などでは、カメラやセンサーなどを設置すれば、比較的安価に車両の入出庫などを管理できます。

しかし、地方の空港やイベント会場、テーマパークなど、広大な敷地の駐車場、いわゆる青空駐車では、駐車場管理が困難なケースがあります。敷地が広く、膨大な数のカメラやセンサーを設置しなければならず、管理が煩雑になります。敷地が広ければ配置する警備員の数も多くなりコストが増大する可能性もあり、駐車場内が混雑していればより駐車場管理は手間がかかってしまいます。

また混雑している駐車場を利用する側にとっては、空いている駐車スペースを見つけることがかなり難しくなります。また、駐車場が空くのを待つために、路上で車を止めて待つ「駐車待ち路上駐車」も、周辺の道路を混雑させ、場所によっては安全を脅かしかねない深刻な課題となっています。

そこで、広大な敷地の駐車場管理を効率化するために登場したのがLiDAR技術の投入です。

LiDAR技術の仕組み：正確に物体を捉える

LiDARとは「Light Detection And Ranging」の略で、レーザー光を使ったリモートセンシング技術です。この技術では、照射したレーザー光が物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を計測し、物体までの距離や方向を正確に測定します。特に光束密度が高く、短波長のレーザーを使用するため、高精度な3Dスキャンが可能で、物体の位置情報や形状を詳細に検出できることが特徴です。

駐車場管理におけるLiDAR活用

LiDAR技術は、駐車場管理における革新的な管理ソリューションとなっています。従来の駐車場管理では、超音波センサーやカメラに依存しながら駐車スペースの占有状況を監視していましたが、これらの方法は駐車スペースごとにセンサーを設置する必要があり、インストールが複雑でコストも高くなりがちでした。LiDAR技術は単一のセンサーで3D環境認識を行うことで、システム全体の構造を簡略化し、設置およびメンテナンスのコストを削減します。次章ではLiDARのメリットを具体的に紹介します。

①リアルタイムで駐車スペースの利用状況を把握し入出庫を効率化

3D LiDAR技術により、駐車場のナビゲーションシステムは、よりスマートで効率的なものになります。

LiDARセンサーは広大な駐車場をリアルタイムでスキャンし、空いている駐車スペースを正確に特定することで、車両の駐車時間を短縮し、混雑軽減に寄与します。駐車場の混雑状況が可視化され、利用者がスムーズに入出庫できるようになることで、スムーズな駐車場利用を実現します。また、リアルタイムの駐車場空き情報をアプリなどを使ってドライバーに事前に提供することで、利用者の待ち時間も軽減され、駐車場の利用効率が向上します。さらに、多くの利用者が自分の車をどこに停めたか忘れてしまったとしても、無人駐車場ナビゲーションシステムを導入すれば、将来的には駐車場内で自分の車を素早く特定できる機能の提供も期待できます。

ただし、アプリは駐車場の特性に合わせて開発する必要があるため、別途アプリ開発会社などに依頼する必要があります。
いずれにせよ、こうした簡略化されたシステム構造は、駐車場管理の効率化にも大きく貢献します。

②LiDARによる全天候監視とデータ利用の効率化

LiDAR技術の利点は、全天候で安定した運用が可能な点です。夜間や雨天などの悪天候でも、高精度のデータ収集が可能であり、駐車場管理システムは常に正確なナビゲーション情報を提供できます。これにより、安全性が確保されるだけでなく、駐車場の利用効率も向上します。

さらに、LiDARシステムは駐車場の使用データを収集・分析し、将来的な駐車場の設計や運営の最適化に役立てることも可能です。例えば、各駐車スペースの占有率や平均駐車時間などの重要な情報を収集・分析することで、管理者は駐車場の利用状況を網羅的に把握でき、資源配分をより適切に計画・調整することができます。

③LiDARでの監視システム導入がもたらす設備維持費の削減

従来の駐車場管理は、超音波センサーやカメラに依存しながら駐車スペースの占有状況を監視していましたが、LiDARシステムでは1つのセンサーで最大50台の駐車スペースを一括で管理できます。各駐車スペースに個別の検知装置を設置する必要もありません。屋外の駐車場にある街灯などの支柱やサインボードなどのインフラ側にLiDARセンサーを取り付けることで、地面の掘削や追加の構造物の設置を避けることもできます。

LiDAR技術は単一のセンサーで3D環境認識を行うことで、設置およびメンテナンスコストの削減を可能にします。

LiDAR技術導入による空港・大型施設平場の駐車場の稼働率向上

LiDARをベースにした駐車誘導システムは、すでに韓国の空港で実際に導入されています。点群データを活用して駐車スペースの使用状況を把握し、ソフトウェア上で駐車場のステータスをリアルタイムで表示します。使用中と空いている駐車スペースは色で区分されるため、直感的に駐車場の使用状況を把握でき、利用者が駐車スペースを探す時間が大幅に短縮されます。

日本でも週末や大型連休には、空港の駐車場がかなり混雑します。駐車場管理にLiDAR技術を投入すれば、飛行機に乗り遅れるといったトラブルを大幅に軽減できる可能性もあります。