現在、官民一体の取り組みとして進められている自動運転について、最近では国内・海外問わず、自動運転の社会実装に向けた実証実験のニュースが活発に聞こえてくるようになり、いつから一般的に普及するのか気になっている方も多いのでないだろうか。
・自動運転はいつから普及するのか?
・現在の自動運転の実用化状況はどうなっているのか?
・今後、どのようなスケジュールで社会実装されるのか?
今回は上記のような疑問を解消するために、レベル別や業界別について詳細に説明する。
また、「自動運転とはそもそも何か?」「自動運転のレベルとは何か?」という疑問を持つ方は、最初に下記の記事を読むことをおすすめする。
自動運転はいつから実用化されるのか。レベル別の状況を解説
自動運転の実用化時期について解説するためには、レベル別の状況や国内の法規を把握しておく必要がある。
自動運転のレベルについて詳細を知りたい方は、下記の解説記事が役に立つだろう。
まず自動運転の現状として、国内・海外問わず、自動運転レベル2が主流となっている。自動ブレーキやレーンキープ等いわゆるADAS(先進運転支援システム)の事だ。そこからHONDAレジェンドのように一部の限られた車両では自動運転レベル3のシステムを搭載した車両がある。
また、2023年4月には道路交通法が改正され、法律上は自動運転レベル4での走行が可能となっている。政府はこういった法規や自動運転に関わる民間企業と連携しながら、2025年以降を目途に徐々にレベル4の車両の普及を目標としている。この具体的な進め方が記載されているロードマップについては、次の章で後述する。
そして、一切の制約なく完全自動運転を実現するレベル5の実現時期は、未だ不透明である。道路交通を取り巻く全ての不確定要素をクリアしなければならず、煩雑な道路や歩道との境界がない道路を、豪雪・豪雨下においても平時同様に走行するのは困難を極めるためだ。「現在考えられる技術では実現困難」とする著名なエンジニアも決して少なくない。
自動運転の実用化スケジュール
自動運転の普及は自動車メーカーだけの取り組みでは到底達成出来るものではない。
まず一つ目は、法整備だ。2024年1月に自動運転レベル4の車両が公道を走れるよう法改正された事がこれに当たる。その他には自動運転に関するインフラ整備が挙げられる。高精度3次元地図や路車間通信システム(V2I)の整備をはじめ、サイバーセキュリティ対策なども必要だ。そのため自動運転の実用化は、政府が策定した「官民ITS構想・ロードマップ」に沿って政府・民間が一体となって進めている。
まず、下記の「官民ITS構想・ロードマップ」によると、自動車の自動運転は「移動サービス(タクシーやバスなど)」「物流サービス(トラックなど)」「自家用車」の3つのカテゴリに分け、スケジュールを組んでいる。
1つ目の移動サービスでは、2024年では遠隔監視を必要とする限定地域の無人移動サービスや、高速道路でのバスの運転支援・自動運転の市場化に取り組む計画となっている。無人移動サービスについては2025年中の実現を、高速バスの自動運転については2025年以降の実用化を目標としている。
2つ目の物流サービスでは高速道路での自動運転レベル4のトラック走行や、限定地域において無人の自動配送サービスを2025年以降での達成を目標としている。
3つ目の自家用車は高速道路での自動運転レベル4を2025年中の達成を目標にしている。このスケジュールを見ると、一般消費者が自動運転レベル4の車両に触れる機会が来るのは早くて2025年ということだ。
業界別の自動運転の課題と実用化状況
自動車業界では、自動運転の実用化に向けて、官民ITS構想・ロードマップに乗っ取り、様々な取り組みが進められている。しかし業界が変われば、自動運転の実用化に向けた課題は異なる。
この章では、自家用車に加えて、物流業界のトラックや移動サービスのタクシーにスポットを当てて自動運転の課題と実用化状況を解説する。
自家用車の課題と実用化状況
まず、自家用車の自動運転については、自動運転レベル2が主流であり、一部の限られた車両で自動運転レベル3のシステムを実用化されているのが現状だ。現在は自動運転レベル4の開発が進められている。
交通状況をリアルタイムに取得するためのセンサーやカメラの高精度化、歩行者や自転車・周囲の車両状況を判断するAI、大量のデータを蓄積・高速処理する技術など、使用される技術は多く、当然課題も多い。例えば、自動運転車両が常に車両位置を把握するために衛星測位システム(GNSS等)を利用する手法が有効とされているが、衛星受信が難しい衛星不可視エリアも多くなるといった課題を抱えている。
また、リアルタイムで高精度3次元の地図データの更新や生成が要求されるが、安全な自動運転のためにはリードタイムをさらに短縮する課題もある。
そういった自動運転の仕組みや技術は、下記の記事で解説しているため、気になる方は一読いただきたい。
物流業界におけるトラックの課題と実用化状況
大型トラックの自動運転の実用化状況は、2024年1月現在では自動運転レベル2まで実用化されている。国内では三菱ふそうから発売されている「スーパーグレート」がその車両に当たる。そして大型トラックのさらなる自動運転技術の開発が進められているが、普通乗用車とは異なり、レベル3の自動運転の実用化をスキップして、レベル4の実用化が進められている状況がある。
この開発の背景には、物流業界が直面する「EC取引の増加による宅配便の需要の増加」、「トラックドライバーの不足」そして2024年に導入される「トラックドライバーの時間外労働の規制」といった事情がある。そのためトラックドライバー不足が懸念されており、物流業界の「2024年問題」と呼ばれるほど注目されている。
そんな「2024年問題」を解決策として官民一体となり取り組まれているのが、大型トラックの「レベル4」での自動運転だが、自動運転レベル3では無人運転が出来ないため、必要なドライバーの数が変わらず物流業界としては実用化の旨みが少ない。それならばレベル3の実用化をスキップして、ドライバーレスとなるレベル4の開発に着手しようという発想だ。
特に、深夜長時間労働を伴う長距離トラックをレベル4で自動化することで、コスト削減と人材最適化の有望な戦略として考えられている。
政府は、2024年度に新東名高速道路の一部に自動運転車用のレーンを設置する計画を立てており、これにより特に夜間のトラック運行において、「レベル4」の自動運転が実現できるように検証を進めていく計画となっている。
移動サービスにおけるタクシーの課題と実用化状況
国内タクシーの自動運転の実用化状況は、2024年1月現在では自動運転レベル2まで実用化されている。タクシー車両自体は一般市販車と変わらないため、2024年1月時点では車両の技術レベルほぼ同等と言えるだろう。
一方で移動サービスとしての側面を見ると、一般市販車にはない問題がある。それは地域によって移動サービスに求められる役割や問題の深刻度合い、原因・要因が異なる課題も存在することだ。
地方部では人口減少に伴い、電車やバスなど公共交通機関の維持が難しくなるため、免許を持たない住民の移動が制約される懸念がある。また、東京のような人口が多く公共交通機関が充実して都市部では、交通渋滞が課題となっている。
「官民 ITS 構想・ロードマップ」では、これらの課題に対して、「AI や IoT 等の新たな情報通信技術を駆使した鉄道、バスといった公共交通とのシームレスな連携により、モビリティサービスと自動運転技術とを融合することが重要である。」と認識されている。
まとめ
本記事では、自動運転はいつから実用化するのかという疑問をテーマに、現状と将来の展望をレベル別、業界別に詳細に解説を行った。自動運転技術の実用化は段階的に進んでおり、各業界で異なるアプローチと課題が存在している。
各自動車メーカーや関連企業が力を入れて開発しており、また自動運転の普及には、法整備やインフラ整備など、政府と民間企業の協力が不可欠のため、官民一体となった推進が行われていく。
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