1.工場データに占める設備データの割合は少ない!?

スマート工場を実現するにあたり、工場の生産現場のデータを広く収集することは必須要件です。
最初にデータ収集のターゲットとなるのは、PLCや信号灯のような設備データです。実際に、多くの生産部門では、PLCや信号灯のデータを収集して活用した経験があるのではないでしょうか?

しかし、PLCや信号灯など設備から収集できるデータは、工場全体で取るべきデータの何割にあたるでしょうか。
生産現場には設備主体の製造ラインもあれば、作業者主体の製造ラインもあります。そして、一概に設備主体といっても、イーサネット通信に非対応というような、そもそもデータを収集することが困難な古い設備も数多く存在します。また、作業者主体の製造ラインではロボットや搬送機を活用した自動化の検討をされている製造ラインもあるかもしれません。しかし、近年、多種多様な消費者需要への対応が求められる中で、柔軟性が高い作業者主体のラインを残すことは、製造業における強みの源泉につながる場合もあります。

こういった多種多様な生産現場がある中で、工場を俯瞰し、データ収集の現実性を考慮することは非常に重要です。
本記事では、工場のデータの特性を見極め、収集する際にぜひ押さえていただきたいポイントをまとめております。

2.工場データの分類

スマート工場で実現したいことは、多種多様な生産現場を捉えながら、生産性や収益性といった観点で工場の全体最適をすることです。
そのためには、製造における主体(設備/作業者)や、設備の種類(新しい/古い)が異なるとしても、共通化された考え方を確立し、その基準に則ってデータを収集することが重要です。そのデータをインプットとして、データを標準化し蓄積を行うことで、工場全体を俯瞰的に捉えた精度の高い分析や予測といったデータの活用が可能になります。

ここで、工場のデータを特性に応じて分類してみたいと思います。
前述した通り、設備主体/作業者主体の製造ラインの分類ができます。
設備主体の場合には、新しい設備であればPLCや信号灯からデータ収集ができます。古い設備の場合、機械の信号を設備の改造によって収集する、または、後付センサーをつけてデータを収集するといった方法が考えられますが、データ収集の難易度が高くなります。
そして、作業者主体の場合には、そもそもデータソースが存在しないため、作業者が状況入力するなど何かしてもらう必要が出てきてしまい、データ収集に伴う製造現場の負担が増します。

工場データ 収集の容易さと現場の負担の関係

3.データ収集のアプローチ

こうした生産現場のデータ収集では何を意識すべきでしょうか?
まず、PLCや信号灯といった設備データの収集は、マスターPLCやロガー、IoTゲートウェイといったツールを活用すれば、数十万円で複数の生産ラインに対して実現できます。
では、古い設備や作業者主体の製造ラインはどのようにデータを収集したらよいでしょうか。

古い設備や作業者主体の製造ラインに対するデータ収集のアプローチをまとめてみましょう。

  • 設備を改造し、古い機械のアナログ信号データの収集を行う
  • 新たなセンサーを設置し計測データの収集を行う
  • 生産現場にスイッチやカードを配置して作業者の操作によりデータ収集を行う
  • タブレット(電子帳票ソフトなど)に入力されたデータからデータ収集を行う
  • 作業動作をカメラで撮影し、その動画のAI解析により作業状況判定のデータ収集を行う
  • 作業者にビーコン(通信端末)を保持させ位置情報から作業状況判定のデータ収集を行う

4.データ収集で意識すべき信憑性とコスト

上記のように、様々なアプローチがある中で、工場データの収集において意識すべきことは、「信憑性の高いデータ」と「データ収集にかかるコスト」です。
精度の高い分析には精度の高いインプットデータが必要です。比較的新しい設備データは生産機械そのもののデータであるため虚偽のデータが含まれる可能性が低く信憑性が高いデータといえます。一方、古い設備や作業者主体の製造ラインは収集に工夫を要します。そのため、無理やり決めた判定基準に則った不確実なデータとなることが多く、それでは収集する意味がありません。信憑性の高いデータを収集することはデータ収集を始める際に必ず意識していただきたいポイントです。
次に、データ収集にかかるコストの問題です。データ収集に高額な予算が認められるケースは、最新技術の調査を兼ねた試験フェーズであることが多いです。試験が通り、いざ工場全体に導入して工場データを収集しようとなると、投資対効果が求められてしまいます。1ラインに数十万円を超えた投資は受け入れられないこともあり、そこで立ち止まってしまうことが多いため、現実的なコスト感で進めていくことも意識していただきたいポイントです。
工場データの収集を考える際には、データの信憑性とコストを意識しながら、現実的に検討を進めていくことが重要です。

弊社では、様々な業種のお客様にスマート工場プロジェクトのご支援を行ってまいりました。
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およそ10分でわかる参考動画もございますので、ぜひご視聴ください。

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