はじめに

スマート工場推進プロジェクトは様々な立場の方が携わる複雑性の高いプロジェクトです。
本コラムでは、スマート工場推進プロジェクトを進める中で、生産部門は生産現場のデジタル化をどう見ているのか?何を生産部門の役割として定義すべきか?について一緒に考察したいと思います。

この記事では、複雑性の高いスマート工場推進プロジェクトの成功に向けて

・生産部門:プロジェクトにどう携わればいいか?
・スマート工場推進リーダー:プロジェクトに生産部門をどう巻き込めばいいか?

上記2点について解説していきます。

生産部門から生産現場のデジタル化がどのように見えるか?

1.具体的な取り組みが理解しづらい

生産部門の方は、設備の改造や単一の設備データの取得などを日々の業務として取り組まれていることと思います。具体的には、PLCのラダーの変更作業やエクセルを駆使した簡単な集計作業を行っている方も多いのではないでしょうか?

一方で、異なる生産設備で構成される広い製造現場から、情報ネットワークを駆使して、データ活用する仕組みを構築するとなると、何から始めていいか悩まれる方も多いのではないでしょうか。
生産部門の方が単体ラインなどの限定的な範囲で元々取り組んでこられたことを、生産プロセス全体として標準的かつ統一的な仕組みで誰でもいつでも簡単に実現することがスマート工場の一つの目的です。
しかしながら、仕組み化を検討する際に必要となる情報システムの技術要素が生産部門の方にとっては日々の業務で携わることが少ないため、いざスマート工場の具体的な取り組みになると、立ち止まってしまうことが多いのが実態です。

2.本社や管理部門のスローガンに距離を感じる

IoTAIDX・デジタルトランスフォーメーションという言葉が広く普及した昨今、製造業の会社経営(工場経営)において、データ活用による企業価値向上が広く謳われるようになりました。また、生産管理部門においては、こういったデジタル時代が意識される以前から生産性向上というスローガンで生産活動の向上を目指してきました。

しかしながら、生産部門の方からすると、企業価値向上、生産性向上といわれてもあまり身近に感じられないことが多いのではないでしょうか?

もちろん、生産部門の方は日々ご担当される生産ラインで目標生産量を歩留まり高く期日までに生産されることを一生懸命取り組まれています。しかしながら、生産部門の方個人は生産プロセスの一部の単体ラインで製造活動をされているため、「生産性×%向上」と言われても、具体的に自分たち自身が何をすればいいのかの変換が難しく、生産性向上を目標としたスマート工場に対しては腹落ちが難しいといった現状もよくお聞きします。

3.「見える化」は「今さら?」と思ってしまう

スマート工場と言われるようになって5年以上が経った現在、ほとんどの生産部門で設備データをもとにしたデータ活用は取り組んでいらっしゃるのではないかでしょうか?具体的な活動としては、生産設備からの取得が容易な設備稼働データや生産カウンタ値をもとに、生産量の推移や設備の稼働状態を見える化が挙げられます。

そのような中、スマート工場推進により製造現場のデジタル活用を進めようとすると、生産部門にとってメリットがあって、取り組みそのものに納得性の高く賛同しやすいことが大切です。

スマート工場推進に求められるスキルとは?

生産部門から見たスマート工場について、マクニカが様々なスマート工場推進プロジェクトに携わる中で、実際によくお伺いしたことをお伝えしました。

ここからは、そもそもスマート工場推進に求められる要素技術について考察したいと思います。

生産現場のデジタル化に伴う技術要素は、生産設備、生産設備からのデータ取得、取得したデータの蓄積、蓄積されたデータの活用、これらを仕組みとして成り立たせるシステムに整理できます。そして、必要となる技術そのものは、AIといった最近のテクノロジーというよりは、従来からデータ活用において使われてきた技術にすぎません。しかしながら、その技術領域は広く、企業の特定の部門ではカバーしきれないのが特徴です。

生産部門という立場からすると、生産現場のデジタル化に伴う技術要素の中でも、生産設備そのものや、マスターPLCIoTゲートウェイといった生産設備からのデータ取得といった領域が対応しやすい範囲ではないでしょうか?

スマート工場推進プロジェクトにおける生産部門の役割

では、スマート工場推進プロジェクトに携わる生産部門の方はどういうことを役割として参画すればいいのでしょうか?また、スマート工場推進リーダーはプロジェクトメンバーである生産部門の方に何をお願いすればうまく役割分担できるのでしょうか?

マクニカでは、様々なスマート工場推進プロジェクトに携わる中で、生産部門のスマート工場推進プロジェクトにおける役割は以下に集約されると考えています。

● 担当ラインでのシステム適用および展開する
● 生産現場の日々の生産業務でデータ入力および活用する
● 生産現場で使いやすいようにシステム適用(変更を含む)する

中長期的なスマート工場推進プロジェクトの成功のためには、生産部門でのデジタル人材の育成は必須です。生産部門での戦略的なデジタル人材の育成のためにも、生産現場のデジタル活用推進における生産部門の役割を定義することが大切です。

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