
高齢化や人口減少が進む地方都市では、ドライバー不足や利用者の減少による公共交通の維持が大きな課題となっています。結果、高齢者による交通事故の増加や、利便性の高い都市への住民流出が進んでいるのが現状です。こうした課題の解決策として注目されているのが、持続可能な公共交通を実現する自動運転バスです。本記事では、自動運転バスを活用した地域交通の新しいアプローチと、社会的な可能性について紹介します。
自動運転バスとは
自動運転バスとは、運転を人ではなくシステムが行うバスのことです。車両サイズもさまざまで、大型バスから小型のカート式のものまであります。カメラやセンサー、GNSS(測位衛星システム)などを搭載し、周囲の状況を検知して道路状況や障害物を認識しながら、安全な走行ルートを判断します。また、AIやシステムがアクセルやブレーキを自動制御することで、ドライバーが不在でも安全な走行を行います。
自動運転バスが挑む3つの課題

住民の移動手段を維持し、暮らしを支えるためには、新たな取り組みが不可欠です。自動運転バスは、移動手段の確保が困難になる可能性のあるまちにおいて、課題解決の有力な手段となります。特に、進行する高齢化、公共交通の維持、人口減少という3つの課題に対し、効果的な解決策を提供すると言われています。

引用:令和5年度 第1回 都市交通における自動運転技術の活用方策に関する検討会(国土交通省 都市局 令和5年11月14日)
1.高齢者の移動を包括的に支援
地方都市では、高齢者の移動手段の確保が課題となっています。多くの高齢者が日常的に運転をしていることが多く、交通事故の発生などが深刻な問題となっています。さらに、利用者の減少やドライバー不足による路線バスの減便や廃止が進み、高齢者の社会的孤立や生活の質の低下が懸念されています。
2025年1月、国立大学法人 千葉大学が「日本で初めて、複数の自治体を対象に公共交通機関へのアクセスとうつの関連を長期的に追跡調査した研究」を発表しました※。この研究によると「車を利用していない高齢者において、「徒歩圏内に 駅やバス停がある」と答えた人と比較して「ない」と答えた人は、3 年後に 1.6 倍うつになりやすい」 と報告されています。つまり、公共交通機関へのアクセスを維持・改善することは、高齢者のうつ予防に有効であると考えられます。
自動運転バスを導入することで、人手不足の影響を受けずに安定した運行が可能となります。自治体と企業が連携し、高齢者が多く暮らす地域と商業施設・医療機関を結ぶルートや適切なサイズの車両を選定することで、バスの利用頻度の向上が期待できます。また、廃止された路線をカバーすることで移動の選択肢が増え、自治体の採算性を維持しながら、高齢者の事故防止や社会参加の促進につながります。
※引用:車を利用しない高齢者は、駅やバス停が徒歩圏内にないと 3 年後に 1.6 倍うつになりやすい (国立大学法人 千葉大学)
2.公共交通の人手不足を解消
近年、公共交通のドライバー不足が深刻化しており、ドライバーの高齢化や若手人材の確保が課題になっています。こうした状況の中、地方都市における「持続可能な公共交通の解決策」として、自動運転バスが注目されています。運転を自動化することで、ドライバー不足の影響を受けることなく、安定した運行を維持できるためです。また、自動運転バスは導入台数が増えてもシステムで一元管理できるため、運行の効率化が図れ、公共交通の維持にも貢献することができます。
さらに、自動運転バスの導入は、ドライバーの負担軽減や交通事故の抑制にもつながります。特に、早朝や深夜の運転はドライバーへの負担が大きく、疲労による事故リスクも懸念されています。こうした時間帯の運行を自動運転バスに切り替えることで、ドライバーの労働環境を改善し、安全で持続可能な公共交通の実現が期待できます。

3.自動運転バスを「まちのシンボル」にして人口減少を抑制
自動運転バスは、高齢者だけでなくほかの世代にもメリットがあります。
「近未来の乗り物を導入し、まちづくりに取り組んでいる」、「親しみやすい乗り物でまちを活性化しようとしている」といった意識が住民に広がることで、自動運転バスは次第に「まちのシンボル」となります。さらに、地域のイベントなどで活用することで、まちの認知度が向上し、移住者の増加も期待できます。
その結果、人口減少の抑制につながる可能性があります。自動運転バスを活用することで、公共交通の維持と地域の活性化が同時に実現できるでしょう。
まとめ:自動運転バスを活用して持続可能なまちを築こう
自動運転バスの導入は、公共交通の維持や高齢者の移動支援にとどまらず、地域の活性化にもつながります。ドライバー不足の解消や交通事故の抑制、さらに移住促進による人口減少対策としても期待されており、持続可能な地域社会の実現に貢献すると期待されています。
自治体や企業が協力しながら地域住民の声を聞き、この新たな交通手段を取り入れていくことが重要です。自動運転バスを活かしたまちづくりで、地方都市の未来を切り拓いていきましょう。
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