
四日市市とは
四日市市は、名古屋大都市圏の西南、三重県の北部に位置する面積約206平方キロメートル、人口約31万人の都市で、東は伊勢湾、西は鈴鹿山脈に面しており、東西交通の要衝として、古くから東海道の宿場町であるとともに港町として栄えてきました。
四日市港は、開港125年と古くから産業を支える港として重要な役割を果たし、2011年には国際拠点港湾となり、中部圏の代表的な国際貿易港として重要な役割を担っています。
市内にある「近鉄四日市駅」は三重県内で最も利用者数が多い主要ターミナルのひとつです。住みやすいまちづくりのため、近鉄四日市駅とJR四日市駅を結ぶ中央通りを中心に再開発が進められています。
マクニカは、2024年11月6日(水)~27日(水)の月曜日を除く19日間、近鉄四日市駅西側において自動運転EVバスの実証実験を行いました。
実証実験の期間中、自動運転EVバスにご試乗いただいた皆様や関係各所の皆様、公道走行にご配慮、ご協力いただきました地域の皆様におきましては、貴重なご意見、ご支援をいただき、誠にありがとうございました。
本コラムでは、四日市市の実証実験の内容についてレポートします。
実証実験実施の背景
市内のメインストリートである中央通りを中心に実証実験を実施しました。
四日市市は、まちづくりの基本計画となる「ニワミチよっかいち」を策定し、「まちなかの回遊性向上による賑わいの展開」や「広域連携強化による交流人口の増加」などの目標を立てています。ニワミチの「ニワ」には緑や滞在、交流といったグリーンインフラを指し、「ミチ」には交通や移動+滞留+活動の場といったウォーカブルを指し、合わせてニワミチと名付けられています。
全長1.6km、幅員70mの中央通りの広大な空間全体をデザインし、関係者が一丸となってまちづくりに取り組んでいます。さらに、交通事業者や経済団体などで構成される「自動運転導入検討会議」と「四日市スマートリージョン・コア推進協議会」を発足。これまで4回に渡って四日市市で自動運転の実証実験が実施され、市内のスマートシティ創出に向けた取り組みが行われてきました。
5回目となる今回の実証実験では、新たに近鉄四日市駅の西側の中央通り、都ホテル、四日市市民公園などを周回し、自動運転EVバスの活用や四日市版MaaSの実証実験を通じて、駅と中央通りの来訪者の回遊性の向上、賑わい創出を検証することになりました。
実証実験の概要
今回の実証実験では2台の自動運転EVバス「EVO」と「ARMA」を導入しました。
今回の実証実験は、近鉄四日市駅西側を中心とした中央通りで行われました。
〈概要〉
日程:2024年11月6日(水)~11月27日(水)の月曜除く19日間
使用車両:自動運転EVバス「EVO」と「ARMA」の2台運行
EVO定員(実証実験):6名
ARMA定員(実証実験):6名
自動運転レベル:レベル2
速度:最高18km/h
EVOサイズ:全長4.78m、全幅2.10m、全高2.67m
ARMAサイズ:全長4.75m、全幅2.11m、全高2.65m
乗車方法:休日は全席事前乗車予約、平日は一部事前乗車予約、当日自由乗車枠あり
※専用サイトもしくはCTYコネクトアプリから事前乗車予約可
EVOおよびARMAは最高速度18km/h、1回の充電で約9時間(100km)の自動走行が可能です。EVOは場所や天候、速度など特定の条件下で自動運転システムが車両のすべての操作を担う自動運転レベル4に対応する機能を車両としては有していますが、今回は2台ともレベル2で運行しました。
近鉄四日市駅にほど近い「ユマニテクプラザ」を出発点にしました。
〈運行ルート〉片道約2km
ユマニテクプラザ → 文化会館南① → 文化会館南② → 市民公園 → 都ホテル

ユマニテクプラザの前には電動キックボードを配置し試乗会・講習会を実施しました。
実証実験の様子
今回の実証実験では、近鉄四日市駅からほど近い場所にあるユマニテクプラザをスタートし、5つの停留所を周るルートを走行しました。昨年の実証実験では、自動運転EVバス「ARMA」を2台使用しましたが、今回はARMAにEVOを加えた2台体制、1日12便を運行しました。期間中は大きなトラブルもなく、安定性の高い運行が実現できました。
1日12便を運行しました。

人通りの多い場所でも、歩行者などを認識し自動で安全に走行しました。
時速15-18km/h程度で安定した走行が実現しました。
歩行者や自転車を正確に認識できるのがマクニカの自動運転EVバスの強みです。
実際に試乗していただいたお客様からは「EVOとARMAを乗り比べることで、2台の加速性能や乗り心地を比較し、違いを実感できてよかった」といった意見や「沿線に住んでいて気になっていたので、試乗できてよかった」、「昨年も試乗していて、今年も乗るのを楽しみにしていた」というリピーターの方もたくさんいらっしゃいました。
EVOとARMAの車内には生成AIコンシェルジュを実装しました。将来的に、自動運転がレベル4に移行すると、車内に操作オペレーターは不在となり乗務員も最終的に乗車しなくなるため、乗客とのコミュニケーションを担い、かつ人手不足を解消する有力なツールとしての役割が期待できます。
今回の実証実験では、三重交通㈱と三岐鉄道㈱が遠隔運行監視における自動運転EVバスの遠隔監視者を提供していただきました。ユマニテクプラザ内に遠隔監視センターを設け、マクニカの遠隔監視システム「everfleet」を導入。これによって車両の運行情報やインフラ情報などを可視化し、遠隔で自動運転EVバスの運行情報をリアルタイムで監視し、正確かつ安全な運行を可能にしました。
車両を監視するためユマニテクプラザ内に「遠隔監視室」を設置しました。
将来的には、1人の遠隔監視者が複数の車両を同時に管理できるようになり、人材不足などの社会課題の解決に貢献できます。また、四日市市に本社を置くケーブルテレビなどの特定地上基幹放送事業者「シー・ティー・ワイ(CTY)」は、通信インフラにおいてマクニカのローカル5Gを活用した遠隔監視を実施。昨年度に続き4Gとの通信品質検証を行いました。
電動キックボード試乗会・講習会
BRJ社が国内で展開する電動キックボードのパイオニアブランド「BIRD」の車両を使って、電動キックボードの試乗会を金土日曜日(11/8~10、15~17、22~24)に開催。11月16日(土)には三重県警察による講習会も実施しました。
来場された方のほとんどがキックボード初体験でしたが、世代を問わず多くのお客様に楽しんでいただきました。中には、乗り方や交通ルールに不安だと話す方もいましたが、しっかりとレクチャーを受ければ、数分でスムーズに試走を楽しんでいらっしゃいました。しかしながら、一部の高齢者の方は試走を諦めた方もいました。今後は、座椅子付き3輪タイプ、あるいは4輪タイプも検討し、誰もが手軽かつ自由に行きたいところへ行ける社会の実現を自動運転EVバスとともに推進していければと考えています。
期間中の週末には電動キックボードの講習・試乗会を開催しました。
「はじめて電動キックボードに乗りました」というお客様もたくさんいらっしゃいました.
MaaS構築に向けた実証実験
四日市市では、交通結節点を中心とした公共交通と新たなモビリティとの連携や、商店街などと連携したまち歩きを促進するサービスを展開するために、四日市版MaaSの構築を目指しており、デジタルポイントラリーを活用した実証実験も同時に行われました。
MaaSシステムでは、自動運転バスや路線バスの走行位置や駐車場の空き情報などを提供しました。

実証実験周知ポスター

スマートフォンやタブレット端末などを使い、自動運転バスの運行状況や路線バスの走行位置などを表示できるデジタルマップを提供しました。ポイントラリースポットの施策も行われ、自動運転バスに乗車すると5ポイント、市内のポイント獲得地へ訪れると1ポイントもらえるといった取り組みも実施しました。
実証実験での取り組み・成果
実証実験の期間中、自動運転EVバスに非常に多くの方々にご乗車いただきました。自動運転EVバスを観光やビジネス、日常の買い物などで利用する誘客効果が今後も期待できる結果となりました。
都市計画全国大会での視察
実証実験の期間中となった11月14、15日には、「第76回 都市計画全国大会」が開催され、四日市市に現地視察に来られました。
※都市計画全国大会
全国の都市計画行政に携わる関係者が一堂に会し、都市計画の基本政策を研究・研鑽し、都市計画に関する知識の普及や、都市計画及び都市計画事業の諸問題に関する研究発表・意見交換を目的に毎年1回開催。
大会参加者が自動運転EVバスを視察に来られました。
初めて見たという大会参加者の方も多く、熱心に担当者の説明を聞いていらっしゃいました。
現在整備中である円形デッキや歩行者利便性増進道路制度の活用などと併せて、自動運転EVバスの実証実験を見ていただきました。参加者の多くは公道を自動で走行するバスに大変興味関心を寄せていただき、たくさんの自治体関係者の方にご案内させていただくことができました。
車両内のディスプレイに表示された生成AIに関しての説明に熱心に耳を傾けられていました。加えて、ユマニテクプラザ内に設置した遠隔監視室も視察いただき、使用している通信技術についての質疑応答がなされていました。
参加者の中には電動キックボードに試乗していただいた方もいらっしゃいました。
「さっそく自分の自治体に戻って、自動運転EVバスの導入検討を加速させるために準備していきたい」「自動運転導入の参考にしたい」といった話をしてくださいました。
今後の展望

交通量の増える夕暮れ時も遅延などはなく予定通りに運行できました。
中央通り再編事業では、JR四日市駅から近鉄四日市駅にかけてつながる中央通りと、近鉄四日市駅の西側区間、さらに諏訪公園、鵜の森公園も含め、大規模なリニューアル工事が進行中です。今回の実証実験のルートにもなった近鉄四日市駅の西側は2024年3月に完成しており、その他の区間についても2027年度の完成を目指し、工事が進められています。
リニューアル工事が進む中央通り。2027年度の完成予定。
マクニカは自動運転EVバスを中心に、四日市市の地域住民の移動を支えるとともに、移動時の利便性、快適性の向上に尽力していきます。
マクニカは、今後も継続的に四日市市に協力し、交通事業者や観光協会などとも連携し来訪者の移動を支えるモビリティサービスを幅広く展開していきます。
お問い合わせ
マクニカでは、自動運転をはじめとする次世代モビリティと都市の産業を用いたスマートシティの実現を支援しています。自動運転に関するご質問やご不明点などがございましたら、以下よりお気軽にお問い合わせください