
嬉野市とは

嬉野市はお茶や温泉、焼き物が有名な観光都市。
嬉野市は、佐賀県南西部に位置し長崎県との県境にある人口24,449人(令和6年11月30日現在)の市です。2006年1月1日に田園風景が広がる「塩田町」と、お茶や温泉、焼き物などが有名な「嬉野町」が合併して誕生しました。
市内には多彩な観光資源が豊富で、日本三大美肌の湯として知られている「嬉野温泉」のほか、長崎街道宿場町の面影を残す「塩田津」の町並みを今に残しています。温泉や農産物、陶芸、自然や伝統などの資源を有効活用しながら、愛着と誇りを持てるまちづくりを推進しています。
2022年9月には、JR西九州新幹線「嬉野温泉駅」が開業し、県内外から多くの観光客が訪れるようになり、より活気と魅力に溢れたまちへと発展し続けています。
マクニカは2024年10月5日~28日のうち20日間(16、17、23、24日は運休)、嬉野温泉駅とその周辺エリアにおいて自動運転EVバスの実証実験を行いました。
実証実験の期間中、自動運転EVバスにご試乗いただいたお客様や関係各所の皆様、公道走行にご配慮、ご協力いただきました地域の皆様におきましては、貴重なご意見、ご支援をいただき、誠にありがとうございました。
本コラムでは、嬉野市の実証実験の内容についてレポートします。
実証実験実施の背景

実証実験の発着点となった「嬉野温泉駅」は2022年9月に開業しました。
嬉野市は、民間事業者などと連携し「嬉野市未来技術地域実装協議会」を設立し、自動運転車両の実用化に取り組んでいます。公道での実証実験は2023年に続いて2回目となり、1回目の参加者の8割以上が「今後も乗車したい」と回答したこともあり、具体的な検討が進められてきました。
1回目同様、自動運転EVバスの社会実装を想定し、公道での実証実験を実施することで、運行上の課題や社会受容性を検証します。実証実験によって、市内での回遊性を高め地元の産業である旅館や商店街の活性化にも期待しています。
さらに、期間中は嬉野市で初となる自動運転車両の夜間運行も行いました。夜間の需要を把握し、飲食店などへ立ち寄ることで得られる経済効果なども検証しました。
実証実験の概要

今回の実証実験は、嬉野温泉駅とその周辺エリアで行われました。
〈概要〉
日程:2024年10月5日(土)~10月28日(月)のうち20日間(16、17、23、24日は運休)
使用車両:自動運転EVバス「ARMA」[Navya Mobility社製]
定員:8名
自動運転レベル:レベル2
速度:最高25km/h(実証運行時は19.8km/hで実施)
サイズ:全長4.75m、全幅2.11m、全高2.65m
運賃:無料
乗車方法:車両到着時に乗車手続き、または嬉野温泉観光案内所公式LINEより乗車手続き(事前予約不要)
ARMAは最高速度25km/h(日本国内では20km/h未満推奨)、1回の充電で約9時間(100km)の自動走行が可能です。ハンドルやアクセル、ブレーキなどはなく、運行設計領域(ODD)に基づく走行環境条件を満たす場合に限り、レベル3での自動運転が可能な設計となっています。
今回の実証運行ではレベル2の自動運転レベルでの公道走行を実施しました。嬉野温泉駅を発着点として、8つの停留所を約1時間かけて走行するルートで、1日6便(金、土のみ夜間運行を含めて8便)を運行しました。
〈走行ルート〉

〈運行時刻表〉 嬉野温泉駅 発着

今回の実証実験では、自動運転EVバスに乗車された方限定で、「嬉野温泉美肌セット」や「ゆっつらくん 身だしなみセット」、「うれしのスイーツ 詰め合わせ」の中から好きな商品を選べる「嬉野の逸品」引換券をプレゼントする企画も実施しました。
実証実験の様子(日中)

実証実験の期間中は多くのお客様に乗車いただきました。(写真中央は、村上大祐嬉野市長)
今回の実証実験では、昨年の3.4キロから大幅に総走行距離を伸ばし、嬉野温泉駅から嬉野温泉バスセンターを経由した、温泉街を循環する5.4キロのルートを走行しました。停留所も福田病院前や和多屋別荘前、萬象閣敷島前など、昨年の2ヶ所から8ヶ所に増やし利便性も向上させました。
また、停留所には黄色の停留所ポストを設置して周囲からも目立つように配慮しました。

道路上に黄色い停留所ポストを設置。

自動運転EVバスに乗車するため、たくさんのお客様が停留所でお待ちくださいました。

実証実験では周囲の道路状況を認識しながら時速20キロ以下で安定した自動走行ができました。
実証実験の様子(夜間)

週末には12便の夜間走行を実施しました。
昨年度の実証実験において、市街地内だけでなく市街地から郊外に向けた運行に加え、夜間にも運行してほしいという声もいただきました。そうしたことから、期間中の金曜日と土曜日は19:25からと21:00からの2便の夜間運行も実施しました。夜間の需要の有無を把握するとともに、停留所周辺の飲食店などへの経済効果も検証することにしました。

夜間でも嬉野温泉駅からは多くのお客様に試乗いただきました。

夜間でも比較的若い世代のお客様の試乗も目立ちました。

夜間でも週末になると人通りの多い和多屋別荘前停留所。
日中に観光を楽しみ、夕方から夜にかけて旅館に戻る観光客もたくさんいたため、嬉野温泉バスセンターや和多屋別荘前などの旅館に近い停留所では多くのお客様に乗降いただきました。お客様を乗せた運行において、日中は約85%の運行率だったのに対し、夜間は約92%という高い運行率を達成。夜間の自動運転EVバスの需要の高さを実感する結果となりました。

今後も夜間の実証実験は継続して実施予定です。
実証実験で得られた成果

地域住民の理解もあり、運行中は大きなトラブルもなく安全に運行することができました。
実証実験の期間中は総勢732名の方に乗車いただきました。そのうち嬉野市内からのお客様は全体のでしたが、佐賀県内や県外、海外からは2%となり全体の半数に及びました。また、市外居住者の来訪目的としては観光やレジャー目的の方が38%、自動運転の乗車体験目的の方が23%となり、自動運転EVバスを観光で利用する誘客効果は今後も期待できる結果となりました。
また、前述の引換券プレゼントキャンペーンでは、自動運転EVバス利用者の約44%の方々に引換券をご利用いただき、そのうち約52%の方は、引換券が来店のきっかけとなっており、店舗への誘客につながることが確認できました。
自動運転EVバスをまた利用したいと回答していただいたのは利用者の約80%に登り、安全性や乗り心地についても「満足」と回答していただきました。
車両の運行情報やインフラ情報は、マクニカ製の遠隔監視システム「everfleet」によって可視化。遠隔で自動運転EVバスの運行情報をリアルタイムで監視し、正確かつ安全な運行を可能にしました。
自動運転率としては、嬉野温泉駅のロータリー付近や、福田病院前周辺などでは自動運転率が低くなる傾向にありました。路上駐車車両が多い道路や、路肩からはみ出してくる歩行者がいるとき、あるいは対向車が接近してくるときは、自動運転を手動に切り替えることで安全な運行に徹することができました。
今後の展望

自動運転EVバスを定常運行するため継続的に実証実験を実施していきます。
嬉野温泉駅を発着点とした今回の実証実験では、市内だけでなく市外からの利用者も多く、観光利用を目的とした誘客にも効果を発揮することができました。また、プレゼント引換券を目的にご乗車いただいたお客様も多く、周辺店舗への経済効果も期待できるものとなりました。
今後は自動運転EVバスの遅延や運休情報などをLINE等で利用者にプッシュ通知できるように、嬉野市観光協会や、嬉野温泉駅前にある「道の駅 うれしのまるく」の観光案内所「まるくアイズ」で運行情報を提供できるようにしたりすることで、利便性向上を図ります。
加えて、まるくアイズで空席情報などを提供、自動運転EVバスの乗車・運行を一元管理できるようにすることも検討しています。今回利用したLINE等のソーシャルネットワークシステムの連携も積極的に取り入れていきます。
嬉野市で自動運転EVバスを本格的に運行していければ、市内に住む地域住民の移動を支えることはもちろん、市外からの来訪者に移動時の利便性・快適性を提供できます。
マクニカと嬉野市は、今後も継続的に連携し、来訪者の移動を支えるモビリティサービスを展開していきます。自動運転EVバスによって、嬉野市の魅力をさらにアピールし、交流人口を増加させることに尽力していきます。
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マクニカでは、自動運転をはじめとする次世代モビリティと都市の産業を用いたスマートシティの実現を支援しています。自動運転に関するご質問やご不明点などがございましたら、以下よりお気軽にお問い合わせください