
当別町とは

JR当別駅南口の駅前広場が実証運行の発着点となりました。
北海道石狩郡当別町(以下、当別町)は、北海道の中心「札幌圏」に位置し、札幌市中心部から車で北に約40分のところにある自然あふれるまち。面積は422.86平方キロメートル、人口は15,147人(2024年10月1日現在)で、米や麦、大豆、花などの栽培が盛んな地域です。
まちの雰囲気がスウェーデンに似ていることから、北欧の風が吹く街ともいわれています。スウェーデンのレクサンド市とは、姉妹都市の盟約を締結しており、スウェーデンをモチーフにした住宅街「スウェーデンヒルズ」は当別町のシンボルとなっています。また、当別町は仙台藩・伊達家が開拓したまちであることから、市街地にはその名残が感じられる場所もあります。さらに、伊達家のイメージを反映した当別町のキャラクター「とべのすけ」も人気です。
マクニカでは、2024年10月19日から11月3日の16日間、JR当別駅とその周辺エリアにおいて自動運転EVバスの実証運行を実施しました。
期間中、自動運転EVバスにご試乗いただいたお客様や関係各所の皆様、車両の公道走行にご配慮、ご協力いただきました地域の皆様におきましては、貴重なご意見、ご支援をいただき、まことにありがとうございました。
本コラムでは、実証運行の内容についてレポートします。
実証運行実施の背景
実証運行に使用された車両は「ARMA」。
当別町は、まちづくりと一体となった持続可能な公共交通の実現を目指しています。2023年3月には「当別町地域公共交通計画(マスタープラン)」を策定し、そのアクションプランとして「当別町地域公共交通利便増進実施計画」を打ち立て、地域公共交通ネットワークの利便性の向上と持続性の確保に注力しています。
2024年8月9日から9月8日には「ロイズタウン駅エリア賑わい創出事業」の一環として、自動運転EVバスの実証運行も行われました。
JRロイズタウン駅(令和4年開業)でも8~9月に自動運転EVバスの実証運行が行われました。
このように当別町では、公共交通の利便性向上に力を入れてきました。その取り組みの一環として、16日間に渡って自動運転EVバスが公共交通として導入できる可能性があるかを検証するため、車や人の往来が多い市街地エリアで自動運転EVバスの実証運行を実施することになりました。
実証運行の概要
JR 当別駅を出発する ARMA。
今回の実証運行は、JR当別駅とその周辺エリアで行われました。
〈概要〉
日程:2024年10月19日(土)~11月3日(日)の16日間
使用車両:自動運転EVバス「ARMA」[Navya Mobility社製]
定員:15名(実証運行時は乗員2名、乗客8名の10名で実施)
自動運転レベル:レベル3相当で運転手(オペレーター)と保安員が乗車
速度:最高25km/h(実証運行時は19.8km/hで実施)
サイズ:全長4.75m、全幅2.11m、全高2.65m
運賃:無料
ARMAは最高速度25km/h(日本国内では20km/h未満推奨)、1回の充電で約9時間(およそ100km)の自動走行が可能です。ハンドルやアクセル、ブレーキなどはなく、運行設計領域(ODD)に基づく走行環境条件を満たす場合に限り、レベル3での自動運転が可能となっています。
「大成寺前」は駅を出発して最初に停まる停留所です。
今回の実証運行でもレベル3に相当する自動運転レベルでの公道走行を実施しました。JR当別駅を発着点として1周約3.4キロ(信号機7ヶ所)、5つの停留所を約40分かけて、1日6便運行しました。
〈運行ルート〉
JR当別駅南口 → 大成寺前 → 商工会館前 → とうべつ学園前 → 末広団地入口 → 駅前通り → JR当別駅南口
〈運行時刻表〉JR当別駅南口 発着
第1便 09:00 → 09:40
第2便 10:20 → 11:00
第3便 11:15 → 11:55
第4便 13:30 → 14:10
第5便 14:35 → 15:15
第6便 15:30 → 16:10

実証運行では比較的交通量の多い市街地を中心に走行しました。
期間中は、当別ふれあいバスや月形当別線(JR札沼線の一部廃止により代替交通として運行されている路線バス)の運行状況やバスの位置情報を確認できるスマホ用アプリ「とべナビ」に、ARMAの位置情報を表示。とべナビを起動すると、ARMAがどこにいるかアイコンで表示されていて、ARMAの位置を当別ふれあいバスなどと同様にリアルタイムで把握することができました。
実証運行の様子

停留所から発進する際も後方から車が来ていないことを認識して動き出していました。

当別駅から最も離れた場所にある「とうべつ学園前」停留所。
今回の実証運行では、JR当別駅南口から当別町立とうべつ学園を経由するルートを走行します。市街地を走行するルートは、当別町では今回がはじめてとなりました。事前に自治体と連携し街路樹の枝の剪定などを行ったことで、自動運転率も高くスムーズな運行が可能になりました。
また、当別町が毎年実施している町内の小学5年生を対象としたモビリティ・マネジメントの一環で、自動運転バス乗車体験を実施し、子どもたちが自動運転に興味を持つきっかけ作りになりました。

左折時に自転車や歩行者がいる場合、横断歩道の手前で確実に停止していました。
信号で灯色などの情報をバスが取得する「信号協調」が実施されていました。
さらに、一部の区間において自動運転EVバスと信号情報を連携した走行試験も実施。ルート上にある信号の情報(通過時点での灯色、予定秒数など)を車両側で取得し、インフラ連携による「信号協調」を行い、スムーズで安全な交差点横断などを実現しました。社会インフラとして自動運転EVバスを運行するには、信号協調による自動運転レベル4を実装することが不可欠であることも、あらためて認識することとなりました。

実証運行では時速20km/h弱を保って一定の速度で走行していました。
周辺住民の理解と連携がとれているため、ARMAを無理やり追い越すような危険なドライバーはいませんでした。
実証運行で得られた成果

約40分かけて当別駅南口の駅前広場に戻ってきました。
実証運行は無料で、かつ予約制ではないこともあり、大勢の方がご乗車くださいました。総乗車人数は221人に登り、中でも11月2日(土)には期間中最も多い34人の方に乗車いただきました。試乗いただいた客層は幅広く、子供連れの子育て世代から年配の方までさまざまな方にARMAを体験していただくことができました。
今回は2023年の最初の実証実験から数えて3回目の一般試乗だったことから、多くの町民の方々が自動運転EVバスを体験することを目的に、駅前や各停留所に集まってきていただき、気軽にご乗車いただきました。いわゆるちょい乗りを楽しんでいただけたということも、町民の間に自動運転EVバスが徐々に浸透しつつあることを表していると思います。
車両の運行情報やインフラ情報は、マクニカ製の遠隔監視システム「everfleet」によって可視化。遠隔で自動運転EVバスの運行情報をリアルタイムで監視し、正確かつ安全な運行を可能にしました。
人や車の往来が多い市街地であっても、技術的な面や社会受容性の観点から貴重なデータ収集・分析が実現できたことも大きな成果となりました。
今後の展望
ふたたびJR当別駅を出発していくARMA。
当別町での自動運転EVバスの実証運行は、市街地での自動運転EVバスの導入の可能性を検討するために行われたものです。
JR当別駅を拠点とした市街地エリアに加えて、ロイズタウン駅周辺エリアでも自動運転EVバスを運行することで、住民の移動はもちろんのこと、町外、道外からの観光客の回遊率向上につながります。ARMAの運行で、町内外にまちの魅力をアピールし、交流人口を増加させ、賑わいを継続的に創出していけると確信しています。
マクニカと当別町は、今後も継続的に連携し、自動運転EVバスの本格導入の可能性を検討していきます。当別町の魅力を広く内外に周知するとともに、賑わいを創出するためにともに協力していきます。
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