
自動運転技術の進化にともない、自動運転レベル4の自動車の公道走行が現実のものとなりつつあります。今後、レベル3、4の自動運転自動車が普及することで、交通事故の大幅な減少や渋滞の緩和が見込めるため、交通課題の解消や安全性向上につながるといわれています。
また、まちに自動運転バスを導入した場合、高齢者や障害を持つ人々の移動手段が増える、バス路線廃止による生活交通の課題を解決するなど、人々の暮らしの質が向上し、地域活性化にもつながるため、本格的な導入を検討する自治体が増えています。
一方で、課題も存在します。「交通事故の減少」というメリットがある反面、「レベル4の自動運転で事故が発生した場合、誰が責任を負うのか」という問題に対し、現時点では行政などから対応策が明文化されていない状況です。
そこで今回は、自動運転中の事故責任の所在と、事前にできる対策について説明します。
自動運転中の事故の責任者は誰か
「自動運転中に事故が発生した場合、誰が責任を取るのか」という話はよく耳にする方も多いのではないでしょうか。人が介入する場合、しない場合など、事故発生時の状況によって責任の所在は複雑に変化します。ここでは、自動運転中に起こりうる事故の原因と、その事故の責任者は誰になるのかについて解説します。

1.車両に原因があったとき
自動運転車両が事故の直接的な原因だった場合、車両メーカーや車載ソフトウェアの開発者が責任を負うことになるでしょう。例として、センサーの故障のほか、ソフトウェアの不良やハッキングなどにより、車両が適切に反応しなかったときなどが挙げられます。
2.ドライバーに原因があったとき
現時点で自動運転レベル3の場合、緊急時にドライバーが適切に対応することになっています。遵守すべきガイドラインや安全上の注意事項に従わずに事故が発生した場合、車両の所有者やドライバーに一定の責任が生じることがあるでしょう。
3.道路環境に原因があったとき
道路の維持管理が適切に行われていないことが事故の原因になる可能性もあります。その場合、道路を管理する国道事務所、県庁、市役所などの責任となるでしょう。例えば、停電などで信号機が正しく機能していなかったり、路面の損傷が修復されていなかったりするなどの状況が考えられます。
4.他の車や歩行者に原因があったとき
自動運転車両以外の車や歩行者、自転車など、他の交通参加者の過失が事故の原因である場合もあります。信号を無視して突っ込んできた車だったり、自転車が急に飛び出してきたりした事故は、交通参加者が責任を負うことになるでしょう。
ここで挙げたのは事故発生の一例ですが、自動運転中の事故は、そのときの状況によって変わる可能性があることを認識しておくことが重要です。事故発生時の責任範囲を明確にしておくためのガイドラインを策定するなど、対策を施しておけば、自動運転における事故の責任問題の解決につながるでしょう。
事前にできる対策方法
先述の通り、事故の原因は多岐に渡ります。では、事故の責任問題を回避するにはどのような方法があるのでしょうか。万が一の発生時に備えた対策方法を2つご紹介します。

1.事故時の状況を把握できる「記録装置」の搭載
事故発生時にデータが記録されるよう、データ記録装置を車両に搭載することを徹底しましょう。そうすることで、事故の原因を正確に解析できるようになります。
すでに世の多くの車にドライブレコーダーなどの記録装置が搭載されていますが、それに加えて、自動運転レベル3以上の車両には、「自動運行装置」の設置義務が保安基準で定められています。ドライブレコーダーでは残らない情報も記録しておくことが重要です。「事故直前にブレーキ操作を行っていた」などの状況がわかれば、事故責任の切り分けや原因究明に役立ちます。保安基準でもすでに自動運行装置に関する要件が定められています。
2.自動運転レベルごとにドライバーがいつ介入するかを定義し「統一」しておく
自動運転のレベルごとに、車両の運行状況を車内や車外周辺を映し出すカメラシステムなどによって常時監視することです。さらに不測の事態が発生した際の責任範囲を明確に定義し、関係者間で事前に合意をとっておきましょう。
例えば「レベル4、5の車両で事故が起きた場合には責任範囲に関する考え方を明文化しておくことが望ましい」など、関係者全員の責任範囲を明文化しておきましょう。
事故の責任範囲を明確にすることは、技術面だけではなく、法的、社会的な側面からもアプローチする必要があります。自家用の自動運転自動車であれば車両メーカーとドライバーが、自動運転バスであればそれに加えてバスの所有者、行政などが協力して対策を講じることが不可欠です。
まとめ|自動運転での事故責任は、データ記録と関係者間の共通認識がカギ

自動運転の導入は多くのメリットをもたらしますが、さまざまな原因で事故が発生する可能性があります。また、事故が発生した場合、誰が責任を負うのかという点において明確にしないまま運用されていることも多く、関係者間でトラブルが発生してしまうケースがあります。
自動運転中の事故原因ごとの責任者は、主に以下が該当するでしょう。
・車両に原因があったとき:車両メーカー、車載ソフトウェアの開発者
・ドライバーに原因があったとき:車両の所有者やドライバー
・道路環境に原因があったとき:道路を管理する国道事務所、県庁、市役所など
・他の車や歩行者に原因があったとき:交通参加者
責任問題のトラブルを回避するには、以下の方法が有効です。
・自動運転自動車にデータ記録装置を設置する
・事故の責任が誰にあるのか、事態を想定して事前に決めておく
ここで挙げた原因と対策方法はほんの一例ですが、今後も行政の動向を追い、自動運転に関する情報を収集し、事故発生時における責任問題について適宜アップデートをしていく必要があるでしょう。
事故責任のトラブルにあわないために、対策を実施して体制を強化しましょう。
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