
読者の皆様は、スマートグラスを聞いたことはありますか?スマートグラスと聞くと眼鏡タイプを思い浮かべたり、VRゴーグルを思い浮かべたり、イメージされるものは様々かと思います。スマートグラスは、産業用、業務用、ご家庭でのエンターテインメント用として、多くの分野で活躍しています。本コラムでは、数あるスマートグラスの中でも産業用スマートグラスについて取り上げ、どのような使い方ができるのかについて説明します。
1. 産業用スマートグラスの基本
1.1. 産業用スマートグラスとは
スマートグラスとは、頭部に装着するウェアラブルデバイスであり、ディスプレイやカメラ、マイク、ボタン等を搭載し、ディスプレイを通して装着者に情報を提供すると同時に、装着者から遠隔にいる人とのコミュニケーションを可能とします。そのスマートグラスが、製造業、建設業、物流産業など様々な産業の現場で使用できるように防水、防塵、耐衝撃等の仕様を備え厳しい現場環境で使用することができるスマートグラスを産業用のスマートグラスとしています。

産業用スマートグラスの例:RealWear社 Navigator 500
1.2. スマートグラスの仕組み
産業用スマートグラスがどのような仕組みになっているのか、RealWear社のNavigator 500を例にもう少し詳しく見てみたいと思います。
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中央に黒いカメラユニットが見えます。その後方、左側にいくつかの押しボタンがあり、この中に基板があります。 | 反対側にはバッテリーが搭載されており取り外し、充電済みのバッテリーを搭載するといったことができます。 |
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カメラユニットも取り外すことができます。こちらは異なるカメラモジュールが発売され必要に応じて交換できるようになります。 | 前に飛び出した部分がディスプレイユニットになっており、装着者の効き目に合わせて左右どちらにも設定ができます。 |
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本体には別売りのクリップ、バンドなどをつけてヘルメット、帽子に取り付け装着する、もしくは同梱のバンドを使って頭に直接装着することができます。 |
1.3. スマートグラスの市場動向
働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により業務効率化・生産性向上が求められる中、2020年度以降は感染症による影響でテレワークが普及したこともあり、スマートグラスを利用することで遠隔地からでも現地の状況を把握し、作業支援を行うことができることから、スマートグラスのニーズも非常に高まっています。
2. スマートグラスの用途・活用方法
産業分野における現場作業者は、危険の多い環境下での作業が多く、安全かつ効率的に業務を遂行できるツールを求めています。ここでは産業用のスマートグラスをどのような用途で活用できるか、いくつかの活用方法を考えてみたいと思います。
2.1. 遠隔作業支援/遠隔臨場

働き方や感染症の影響でテレワークが増え、ビデオ会議を使用する機会が増えた方は多いのではないでしょうか。もちろん産業用のスマートグラスでもビデオ会議を使用することができます。スマートグラスを装着した現場作業者の見ているものを共有し、ビデオ会議を通して遠隔地にいる専門家とリアルタイムでやり取りすることができます。現場作業者は、作業に集中した状態で、現地の状況を共有し、作業支援を受けることができます。それでは、スマートグラスを使用した遠隔作業支援/遠隔臨場で得られるメリットについてご紹介します。
2.1.1. コスト削減
まずは、コスト削減です。スマートグラスを使用した遠隔作業支援で得られるメリットとして挙げられるのがコストの削減です。以前は世界中の専門家が、問題(大小関係なく)を解決するために現場に出張し、数時間あるいは数日現場に拘束されていましたが、遠隔作業支援を活用すると数分あるいは数十分で解決できるため、移動費及び作業費が大幅に軽減できます。
2.1.2. ダウンタイムの削減
次に、ダウンタイムの削減です。コスト削減にも通ずるものですが、現場の機器が故障してから遠隔地にいる専門家が修理するまで、システムは稼働せず生産性が低下します。そのため、遠隔作業支援で早急に問題を解決することは巨額な損失を避けることにつながります。
2.2. 文書閲覧/映像支援

読者の皆様は、現場で機器の説明書や作業手順書等をどのように閲覧しているのでしょうか。DX推進でデジタルデータ化されたドキュメントをスマートフォンやタブレット等で閲覧している方も、既にいらっしゃるかもしれません。しかし、産業向けの現場となると危険な場所も多く、文書閲覧のために片手、もしくは両手がふさがることによって危険を感じることも多いかと思います。スマートグラスは、ボタン操作、もしくは音声操作がほとんどのため、作業時に両手がふさがることなく文書閲覧ができ、安全性と生産性を両立することができます。また、文書の他にも、画像や映像を確認することが可能です。それでは、スマートグラスを使用した文書閲覧/映像支援で得られるメリットについてご紹介します。
2.2.1. 安全性と生産性の両立
まずは、安全性と生産性の両立です。先程述べた通り、産業向けの現場は、落下の危険性のある高所の作業場や足場が不安定な場所が多く、また、工具を手に持つことも多いため、紙であってもタブレットであっても閲覧することが困難です。しかし、スマートグラスを活用することで、両手は他の作業に集中し、ボタン操作や音声操作で簡単に文書閲覧を行うことが可能です。従って、安全性を確保しつつ、必要な資料を簡単に確認することによって生産性の向上にもつながります。
2.2.2. 技術継承
次に、技術継承です。少子高齢化の影響もあり、人手不足が深刻化しており、熟練者から若者への技術継承に関する問題があります。人材育成に何年もかかるケースもあり、短時間での育成が課題となっています。熟練者のノウハウをデジタルデータ化し、教育コンテンツとして活用することで、技術継承さらには作業属人化が期待できます。
2.3. デジタルワークフロー

ワークフローは、ある業務を遂行する上で必要な一連の作業を表します。社内稟議や経費精算などで、承認フローとして利用されている方も多いのではないでしょうか。スマートグラスでは、製造工程や検査工程などで使われることが多く、既に決まっている作業手順をデジタルワークフロー化することで、不慣れな現場作業者でもミスなく、確実に作業を実施することができます。それでは、スマートグラスを使用したデジタルワークフローで得られるメリットについてご紹介します。
2.3.1. 作業標準化
まずは、作業標準化です。作業を一定の「型」に沿って進めることにより、新人でも熟練者でも一定の水準で作業を行うことができます。手順通りに作業が進められるためミスも軽減されますし、ノウハウを蓄積しワークフローに落とし込むことで属人化の防止にもつながります。
2.3.2. 進捗状況の可視化
次に、進捗状況の可視化です。ワークフローは、決められた手順を順に実施していくことになりますので、作業があとどの程度で終わるのかを視覚的に確認することができます。また、作業終了時にレポートとして作業結果を送信することで、管理者も進捗状況を把握することが可能です。その際、写真など記録を一緒に送信することで、作業の不正も防ぐことも可能です。
2.3.3. 教育コストの削減
次に、教育コストの削減です。文書だけでは伝わりにくいノウハウも、画像や動画など視覚的に分かりやすく作業者に伝えることができます。また、新人に教えるべき項目をワークフロー化しているため、新人教育にかける時間も削減します。
2.4. IIoT

IoTという言葉はよく聞かれるかと思いますが、IIoTという言葉はお聞きしたことはありますでしょうか。IIoTは、Industrial Internet of Thingsの略称であり、産業向けのIoTを表します。産業用の機械やシステムのデータをインターネットで共有することで、現場の見える化などを実現するものとなります。スマートグラスを活用して故障した機器や検査対象の機器の稼働状況をモニタリングし、検査や保守など様々な業務に役立ちます。それでは、スマートグラスを使用したIIoTで得られるメリットについてご紹介します。
2.4.1. 生産性の向上
まずは、生産性の向上です。スマートグラスからのデータもインターネットで共有することで、スマートグラスを装着した作業者は、機器の稼働状況はもちろん、配送車の遅延状況や他の作業者の進捗状況も確認できるため、より効率的に作業を行うことが可能です。どのスマートグラスを使用するかにもよりますが、デジタル情報を確認するためにわざわざ手袋や保護メガネといった保護具を外すといった工程を省くこともできます。
2.4.2. システムの見える化
次に、システムの見える化です。システムにトラブルが発生した際、いち早くスマートグラスで情報を受け取り、修理箇所や修理方法を表示することで、システムの早期復旧に役立ちます。
RealWear
RealWearのスマートグラスは、耐水性・防塵性・落下耐久性を備えた非常に堅牢なヘッドマウントデバイスで、デジタルマイクと高度なアルゴリズムによるノイズキャンセリング機能を備え、騒音が大きい環境下でも音声制御で操作可能です。また、保護眼鏡や視力矯正メガネと一緒に使用可能であり、自由に安全ヘルメットや安全帽に取り付けることができます。
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