リアルと3Dが折り重なる夜の街

マクニカは、地域社会が抱える多様な課題の解決に向けて、エクスポリス合同会社とともにデータ利活用型の街づくりに取り組んでいます。スマートシティの実現に向けたデータ流通を手掛けるエクスポリスが提供する都市OS「Anastasia(アナスタシア)」は、国内におけるさまざまなライフスタイルを支えることを目的にしたデータ連携基盤です。

地域の多彩な在り方を支援するため、スモールスタートが可能なシステム構成を軸とし、地域が求める機能のみ、または複合的な機能を拡張することで、さまざまなスケールの地域に適応します。

本記事では、地域社会が求める変革と持続性を技術で支えるエクスポリスとマクニカの挑戦を紹介します。

アナスタシアが生まれた背景

Anastasia(以下、アナスタシア)は都市OSやスマートシティプラットフォームといった、都市・地域でデータを流通させ、多様なライフスタイルを支えるプラットフォームのブランドとして誕生しました。地域課題の解決を支援し、スマートシティの実現をスモールスタートから促進していきます。

都市と地方の背景と人を囲むインフラ項目

出典:都市(左図)アーバンデザインセンターみその、地方(右図)小谷村

都市OSの必要性が論じられるようになってきましたが、その取り組みは都市だけではなく、さまざまな地域の情報インフラとして求められているのではないでしょうか。人口10万人超の自治体には多様なサービス施設が立地しているのに対し、人口10万人に満たない自治体では、地域経済の合理性の観点からサービスが縮小化していく傾向にあり、このような現象は今後も加速していくでしょう。

このような地域では、経済的サービスだけではなく地域や行政のサービスが果たす役割が重要になります。またサービスを充実化させるためには、IoT、AI、ロボットなどの先端技術の利用も求められます。

アナスタシアが目指す世界

アナスタシアは都市の大きさに関係なく、その地域に合ったさまざまな分野(例:モビリティ、エネルギー、ヘルスケア等)に対応した地方行政サービス、経済的サービスを展開するためのプラットフォームを提供します。

地域によっては、気象条件やライフスタイルが異なるため、同一のサービスの導入が難しいことがあります。しかし、人が必要とする基本的なサービスの種類は変わりません。もし、必要なサービスが充足していなければ、その地域を離れてしまうきっかけになってしまいます。アナスタシアは、その土地の特色に合わせた豊かな暮らしができる社会の実現を目指しています。

アナスタシアはクラウドサービスとして、主に以下のサービスを提供しています。

・データ流通「アナスタシア コネクト」
・まちづくり、政策立案「アナスタシア 地域分析」
・課題解決策の共有UI「アナスタシア ソリューションカタログ」

Anastasiaの3つのサービス概要

主幹サービスは「アナスタシアコネクト」であり、データの連携機能、連携したデータのオープンデータ化、アプリ開発を容易としたSDK・APIを備えています。

全市区町村に対応した地域分析を行うための「アナスタシア 地域分析」、コネクトに連携するアプリや先端サービス、知識の共有を行える「アナスタシア ソリューションカタログ」など、さまざまなサービスを提供しています。

例えば、都市OSを導入する際に多くの場合、多様な機能を含む都市OSを使いこせず悩むことになりますが、アナスタシアはサービスが分かれているので、必要なものだけを利用できます。スモールサービス化することで、まちづくりのプロセスに合わせたデジタル化を進められるように展開しています。

まちづくりでは、エネルギーやモビリティなどの複合的なサービスを一度に導入するのではなく、地域の人たちと「どのようなサービスを優先的に導入すべきか」を相談し、マスタープランとともに遂行されることが多いです。アナスタシアが最も重視しているのは、まちづくりのスピードに合わせることができる利用、つまりスケーラビリティの担保です。都市OSの利用シナリオに合わせたラインナップをそろえています。

Anastasiaの機能コンポーネントと拡張フェーズ

本来、都市OSが強調しているデータ連携だけでなく、アナスタシア地域分析、アナスタシアソリューションカタログという関連サービスを提供することにより「課題の抽出→解決策の共有→提供」というサイクルを生み出します。現在、いち早く希望があった自治体にアナスタシア地域分析を提供しています。

地域に適した都市OSと適応したアプリ、IoTやAIを用いた先端サービスとして開発中のアナスタシアソリューションカタログでも、パートナーを募集しています。また、リアルタイム性の高いデータの分析ツールも開発中です。

「都市OSは長く利用し、データを蓄積しなければ活用フェーズに移れない」といった不安を持つ方が多いのではないでしょうか。また、既にデータを蓄積していても、「蓄積したデータをどのように有効活用したらいいのか」という不安を抱える方もいるでしょう。アナスタシアでは、プラットフォーム上で経済的近接性や地理的近接性を持った地域同士でデータを融通したり、他のプラットフォームと連携してデータを融通したりする仕組みを作ることにより、高度な地域課題解決を導く技術開発を提供します。

それぞれの地域だけでなく、さまざまなデータをセキュアに共有することで、対策をひとつの自治体のみで講じるのではなく、課題や解決策を共有していくことで協調する関係性をデジタル上で構築することを目指しています。

都市OSは導入しなければならないという存在ではなく、利用することで地域課題解決を促進する存在です。アナスタシアを使いこなせば、多種多様なライフスタイルが存在する世界を作ることができます。

Anastatiaの他プラットフォームとの連携

エネルギーマネジメントとアナスタシア

エネルギーマネジメントにおいて、アナスタシアのバックグラウンドで動いているのが、マクニカのエネルギー管理システム「Kisense®(以下、Kisense)」です。Kisenseはエネルギー利用者、プロシューマー、発電事業者などに活用されているエネルギー管理プラットフォームで、温度・湿度・CO2排出量・波の高さなど、センサーを介して電力はもとよりそれ以外の様々なデータも取得できることが特徴です。

再生可能エネルギーは自然環境を利用した発電です。太陽光は雨の日だと発電しませんし、風力発電は風がなければ発電しません。これらの事から不安定な電力と言われています。これらを日照量や風力など各種データをもとに発電できる電気の量などを予測し需要と供給のバランスをとる事が可能です。

また、Kisenseは優秀なAPIを持っているため、さまざまなシステムとの連携が容易です。もし自治体で複数のシステムを使っていたとしても、容易に接続できます。他システムとのデータ連携により複数データの収集、それらを利用した分析が可能となります。

複数のデータが整備されると、センサーを使った緻密な制御や、ただデータを羅列するのではなく、アナスタシアが取り込むことで、自治体が欲しいデータだけ分かりやすく可視化し、出力できます。

マクニカのKisenseによるエネルギー管理とアナスタシアの図

自動運転(モビリティ)とアナスタシア

先ほどのエネルギー管理と同様に、マクニカでは多種多様なスマートモビリティから収集されるデータを、クラウドで一元管理し、可視化するデータプラットフォームとして、MMDP(マクニカモビリティデータプラットフォーム)を提供しています。

主に運行管理や乗客の状態管理として活用するケースや、モビリティから得られるデータと他のデータを活用した分析などができるツールとして想定しています。

ブレーキ・アクセルといった車両自体のデータだけでなく、カメラ、LiDARなどのさまざまなセンサーデータを活用することで、多種多様な外部環境データの収集も可能です。アナスタシアと新たに組み合わせることで、モビリティ以外のデータとの連携や協調を進め、強みであるAI・分析をサービスに組み合わせることで、お客様の課題解決を支援していきます。

自動運転とアナスタシアの組み合わせ

アナスタシア(都市OS)に求められること

東京電機大学システムデザイン工学部情報システム工学科准教授で、エクスポリス合同会社のCTO 松井加奈絵氏(以下、松井氏)は、都市OSを構成する上で重要な要素について「技術的に最も考慮している点は、アナスタシアが基盤となり、その上にサービスとしてさまざまなアプリケーションやデータが利用可能になること」と述べます。

PCやスマートフォンを利用するとき、OSは気にせず、アプリの充実化を図ることが目的になっています。アナスタシアは、開発者、まちづくりのステークホルダー、他のOSと協調を図る必要があります。都市・地域の利用者にとって、サービスを「使う」「作る」という利用方法であるように設計されています。

データを活用するためにはユーザーインタフェースも重要になります。その点でアナスタシアにはどんな特徴があるでしょう。松井氏は、まちづくりにおいて都市・地域がどのようなデータから構成されているのかという点を考慮しながら進めるとし、「アナスタシアも、まちづくりのステークホルダーが利用する場合に、静的・動的なデータを地域づくりに活用できる形で提供するためのユーザーインタフェースを設けている」と話します。

主なインタフェースに関しては、現在多くの人に使われている標準的なアプリケーションに合わせています。そのため、都市OSだからという特別感を出すのではなく、日常的にアクセスしやすいように設計されています。

では、他のプラットフォームとの差別化要素はどのような点でしょうか。松井氏は「他のプラットフォームとの協調は必須なので、技術的な標準化の準拠を行います。ただし、『都市OS』という特別なOSを管理者が一から学習するといった学習コストは必要ない技術構成となっている」と話します。

特に、マクニカをはじめとする「サービスプレイヤーが利用してみたいと思う技術が必要」と考えている。と松井氏は説明します。プログラミングやSTEM教育などの広がりにより、多くの住民が都市OSを利用したサービス開発や運営ができる可能性が出てきています。サービスの充実化が命題なので、多くの開発者が利用したくなる技術の在り方を強調していくとしています。

アナスタシアに求められること

理想のスマートシティ像

理想的なスマートシティプラットフォームの概念を階層リストの図で表示

この図は、マクニカが考える理想的なスマートシティプラットフォームの概念図です。黄色の枠で囲われた「共創領域」で、マクニカとアナスタシアが連携、共創しながら開発を進めます。

今後の展開はどうなっているでしょう。松井氏は「アナスタシアは今後、都市・地域解決対策としてサービスを開発しているプレイヤーとの技術連携、また、他の都市OSと技術連携することで、優れた地域課題解決策を全国に提供することを目標にしています。

マクニカが持つ自動運転技術やEMSのサービスは単なる技術ではなく、世の中の暮らしを快適にする、新しい暮らしの在り方を提案するものです」と話します。共創し、単に技術を届けるのでなく、望ましい地域の在り方を実現する技術を、スピード感を持って作り上げていきます。

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