オフィス街を横切る赤い閃光

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の1つに「住み続けられるまちづくりを」があります。持続可能なまちづくりを実現する上で、道路や地上構造物などの社会インフラの維持・管理は重要です。しかし、社会インフラの維持・管理においては、高い専門性が求められることによる人材不足や老朽化の加速による対象範囲の拡大など、さまざまな課題があります。

そこでマクニカでは、モビリティのセンサーから収集した情報をAI分析することで、社会インフラの維持・管理を自動化する「スマートメンテナンス」を開発、社会課題の解決に取り組んでいます。本記事では、スマートメンテナンスにおける、人工知能(AI)や自動運転など先端技術の活用手法やマクニカの取り組みについて説明します。

働き手不足のなか「住み続けられるまちづくり」をどう実現するのか?

「レジリエンス」というワードに聞き覚えはあるでしょうか。最近、メディアなどでよく使われるようになった言葉で、回復力、復元力、復活力という意味があります。この言葉の形容詞は「レジリエント」で強靱(きょうじん)な、弾力的な、回復力のあるという意味があります。

SDGsの開発目標の11番目には「住み続けられるまちづくりを」というものが掲げられており、都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靱かつ持続可能にするとして、「レジリエント(resilient)」という単語が目標内容の英語表記に示されています。「住み続けられるまちづくりを」という目標を達成するには、何が必要でしょうか。

日本政府は「国土強靭化基本計画」を定め、さまざまな取り組みを進めています。自然災害などの被害に遭いやすい日本では、特に回復力、復元力、復活力が欠かせません。日本には古くなった社会インフラが多数存在しており、それらの建て替え、補強なども早急に取り組んでいかなくてはなりません。さらに言えば「住み続けられるまちづくりを」という観点から、「レジリエンス」を発揮するには、古いものを新しく作り変えるだけでなく、それらの社会インフラの維持・管理を継続的に効率よく進めることが何より重要になります。

高齢者人口と地方自治体職員の推移を表した2つのグラフ

全国の高齢者人口と市区町村の土木部門職員数の推移(出典:総務省統計局国土交通省

社会インフラの継続的な維持・管理、つまり日々のメンテナンスには、これまで多くの人手に頼ってきました。しかし今後はその方法は通用しなくなります。ご存じの通り総人口が減少し続けており、労働力の高齢化が進んでいます。市町村の土木部門人員も減少し、今後高齢化に拍車がかかっていくでしょう。

ではどうするべきでしょうか。対策として考えられるのは、人に頼らず、自動化され、デジタル技術・AI技術を活用したスマートなメンテナンス手法を開発していくことでしょう。

マクニカが歩む「スマートメンテナンス」実現への道筋

マクニカでは、この「スマートメンテナンス」の社会実装に向けての取り組みをすでに開始しています。その1つが、自動運転車両(モビリティ)に搭載したセンサーによって道路情報を取得し、収集した情報をエッジもしくはクラウドに蓄積し、AIによって道路状況を分析する仕組みです。異常を検出した場合は位置情報と合わせてアラートを通知し道路の路面修復などを迅速かつ正確に行います。

スマートメンテナンスの一連のプロセスを3ステップで表示

この仕組みによって、点検作業の自動化による職員の工数やコストの削減が期待できるとともに、AIの機械的な判断による点検精度の向上なども実現できるでしょう。また道路の路面状況だけでなく、交通標識やガードレールのメンテナンスや障害物の早期発見などにも役立てることが可能です。

自動運転車両の実装、MaaS(マース:Mobility as a Service)については、マクニカでは日本全国で実証実験/定常運行をサポートしています。茨城県境町での日本初の公道での自動運転バス運行や、浜松市水窪町での超小型モビリティによる公道実証実験などもサポートし、大きな成果を生んでいます。 

センシング技術を自社製品SENSPIDERの構成を表示して説明

またセンサーデータの収集端末も自社開発しています。マクニカでは技術商社として世界中から最先端のセンシング技術を収集しており、端末開発においても、センシングからデータの収集、クラウドに送信する以前のデータの処理など必要な機能をシンプルに組み込んだ端末を開発し、低コストで社会実装のしやすい仕組みづくりを進めています。

さらに日進月歩で進化するAI技術については、AI Research & Innovation Hubという専門組織を構築し、世界の先進的なAI技術や論文をリサーチしており、優れたオープンイノベーションパートナー様と共同で数百件のコンサルティング業務を実施し課題解決のお手伝いをしてきました。なお独自開発した収集端末から得たデータの分析に利用するアルゴリズムもこの組織で開発しています。

「自動運転・ロボット」「AI」「センシング」という機能とプラットフォームの役割

あらためてマクニカの「スマートメンテナンス」のコンセプトを簡単に説明しますと、「自動運転・ロボット」「AI」「センシング」という3つのテクノロジーによってデータの利活用を効率化させることで、インフラの維持・管理を進めていきます。現在人の手で行っていることの多い道路などの点検業務を、ロボットなどで代替することで効率化させ、道路状態などの診断について、熟練した技術者が担当しているところをAIが実施することで属人化を低減させていきます。

スマートメンテナンスが自動運転・ロボットとAIとセンシングで成り立っている図

そして「自動運転・ロボット」「AI」「センシング」の機能から得られたデータの利活用効率を最大化するのが、マクニカ モビリティ データ プラットフォーム(MMDP)です。

このプラットフォームは乗用車、バス、建機、農機などさまざまなモビリティから得られたデータを高品質でクラウドに転送する、さらに転送されたデータを分析するという一連の流れを、継続的かつ安定して管理していく仕組みです。マクニカでは、最初にご紹介した自動運転車両による道路診断などのシステム運用管理などに適用を開始しており、さまざまなお客さまニーズに対応しています。

MMDPプラットフォームがどのように機能しているかを上位から下位へ階層に分けて解説

このプラットフォームを活用することで、「データを取る、作る」と「データを加工する」そして「データを使う」といったお客さまが必要とする3つのプロセスすべてを一元的に管理することが可能となります。

省力化と作業のスピードアップが期待できるインフラメンテナンスの実現へ

このプラットフォームを自動運転車両による道路診断に適用させることで、さまざまな状況をリアルタイムで監視、把握することが可能になります。

カメラと振動センサーと加速度センサーと地図から収集したデータが1つのディスプレイに表示されている

上の画像は走行している道路の映像を車両前方のカメラから入力し、画面に可視化しています。そして、その画面から道路上のひび、穴などを「水平方向のひび」「縦方向に割れた穴」というようにそれぞれ種類ごとにAIが瞬時に判断して通知しています。

右側の波形は車両のサスペンションに設置された振動センサーが路面の状況に応じて発生する振動を記録していきます。後輪にはX、Y、Z軸の加速度センサーがあり、前輪にも加速度センサーを付けてデータ収集、記録していきます。もちろんこの振動の位置は高性能なGPSによって正確に場所を把握できるようになっています。

これらのデータは地図表示され、路面に異常がある箇所は赤く示されることで、メンテナンスの必要な場所が目視で分かるようになっています。地図はズームアップさせ、さらに詳細な状況を見ることも可能です。このような作業を遠隔で実施することができるため、従来のように人が車両に乗り込んで作業をしていた状態と比べて、少人数で迅速に進めていくことが可能となります。

現在は人が運転しながらこれらの情報を把握する仕組みとなっていますが、今後は国土交通省などの自動運転や道路点検に関するガイドラインに沿う形で、新たな機能開発、ニーズへの対応を進めています。

近い将来無人の自動運転車両が道路などの検査を行い、日々最適な道路環境を維持し続けるというイメージを明確に抱いていただけたのではないかと思います。このようにマクニカでは先進技術を活用し、日常生活で身近にある課題の解決に取り組んでいます。

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