マクニカでは、2023年2月17日から2月23に茨城県常陸太田市で開催された「自動運転EVバスに乗ってみよう!in 常陸太田市」にて、自動運転の実証実験を実施しました。

本イベントのご来場者様やイベント関係者様におきましては、貴重なご意見やご支援を誠にありがとうございました。

本コラムでは、実証実験の内容や結果について詳しくレポートします。

実証実験の背景

常陸太田市では、市街化区域に隣接する「東部土地区画整理事業地」を2019年5月に市街化区域に編入し、魅力ある新たな市街地として国道349号バイパス沿道の立地特性を活かした買い物環境の改善や新たな雇用の創出等を目的に、商業施設用地の整備を地域と連携して推進し、将来にわたり持続可能なまちづくりを進めています。

一方で、整備を進めている東部地区商業施設内の総面積が約26haと広大であるため、特に高齢者等への対応として自動運転車両等による新たなモビリティの導入により、移動性の向上を図ることが求められています。

さらに公共交通衰退への対応として、中心市街地の商業施設から住宅団地、駅、道の駅、観光施設といった周辺の施設等への移動性の向上も課題となっています。

また、常陸太田市では、第6次総合計画の将来像である「幸せを感じ、暮らし続けたいと思うまち 常陸太田」を推進しており、新市街地への自動運転サービスの実装による賑わいの創出や、カーボンニュートラルの観点からSDGsにおける持続可能なまちとして、電気自動車(自動運転車)の導入によるCO2削減を目指しています。

このような背景から、将来的な市街地への自動運転サービスの実用化を見据え、同地区における自動運転の実用可能性を検証・評価するために実証実験を実施しました。

実証実験の内容

実証実験では、常陸太田市中心市街地の常陸太田市役所と常陸太田駅を結ぶ片道約1.3kmの区間にて、地域住民を対象に自動運転シャトルバスのよる移動体験を提供。

将来的な自動運転サービスの実用化に向けて、地域ニーズや社会的受容性等のアンケート調査や自動運転シャトルバスの運行に関わる技術面の評価・検証を行いました。

常陸太田市役所様が主体となり、日本工営様にて実証実験に関わる準備、運営、効果検証を実施。

マクニカでは、自動運転シャトルバスの実装・運行の支援、関連システムなどを提供しました。

<概要>
日程:2023年2月17日(金)~2023年2月23日(木)
時間:8時45分~16時30分頃(1日14便)
運行区間:①常陸太田市役所~常陸太田駅 ②常陸太田駅~常陸太田市役所(片道約1.3km)

車両:NAVYA社 ARMA(自動運転シャトルバス)
定員:7名(セーフティドライバー・保安員除く)
運賃:無料

自動運転車両にはNAVYA社製の自動運転シャトルバス「ARMA(アルマ)」を使用。

ARMAは最高速度18km/hのEV仕様(電気自動車)で、ハンドル・アクセル・ブレーキがなく、搭載するセンサーによって周辺の安全を確認しながら、事前に設定したルートを自律的に走行します。

また、車室内空間が広いのが特長で、車室内の窓ガラスに設置した透過型のディスプレイを利用して、乗車時のアナウンスや走行中に地域のプロモーション動画の配信を行いました。

NAVYA社製自動運転シャトルバス「ARMA」

透過型ディスプレイによる乗車アナウンス

また、今回はセーフティードライバー及び保安員が同乗するかたちでの運行となりましたが、将来的な無人での運行を想定して、遠隔地のオペレーターが自動運転車両を運行管理する「遠隔監視」を試行的に運用しました。

走行する自動運転シャトルバスの車両データ(車速、回転数、ステアリング舵角など)やセンサーデータ(位置情報、カメラ映像など)を統合し、クラウド経由で常陸太田市役所内に設置した遠隔監視ルームのディスプレイに可視化。

遠隔地からリアルタイムに自動運転シャトルバスの運行状況を確認することで、安心・安全にオペレーションすることができました。

常陸太田市役所内の遠隔監視ルーム

遠隔監視による運行状況の可視化

実証実験の様子

実証実験の結果

計7日間の実証実験では、延べ592人、1便あたり6.5人の利用があり、乗車率は94%と非常に多くの方々にご乗車頂きました。

また、アンケート調査や運行データの集計により、自動運転サービスの地域ニーズや社会受容性、技術面について、検証・評価することができました。

まず、地域ニーズや社会受容性については、自動運転移動サービスの利用意向について、ご来場者様を対象にアンケート調査を実施。

自動運転サービスの利用を「希望する・どちらかというと希望する」という回答が約9割と多く、日常の外出機会などにおいて利用する意向が強く感じられる結果となりました。

また、利用を希望する理由については、「安全を感じる」「料金が安い/無料」「乗り方が簡単(予約等)」の回答の割合が多く、自動運転サービスが安心感のある便利な移動手段として受容される可能性を確認しました。

自動運転サービスの利用意向(単一回答)

利用を希望する理由(複数回答)

次に技術面については、実証期間中における自動運転走行割合を定量的に計測。

全走行距離約124kmのうち、自動運転による走行距離は107kmになり、自動運転走行割合は86%で全日を通して目標値の80%以上を維持することができました。

なお、手動介入の発生機会については、信号交差点などの道路環境に起因する割合が9割、その他では路上駐車回避が5%、他車接近が4%でした。

実証実験では、交差点内を走行する際に安全性確保の観点から、信号の変わり目や変わりそうなタイミングでは周辺交通への影響も考慮し、手動介入を行うことでスムーズな運行を優先したことが要因になります。

そのため、今後は信号協調により信号情報を自動運転車両に伝達し、信号の変わり目を事前に把握できるようにすることが有効な対策として考えられます。

自動運転走行割合(日別)

手動介入の発生要因

このように、実証実験を通して、自動運転サービスの実用化に向けて、非常に有用な検証・評価をすることができました。

今後について

マクニカでは、今回の実証実験の結果を踏まえ、常陸太田市様及び関係各社様と連携し、常陸太田市における自動運転サービスの実用化に向けて、引き続き、ご支援をさせて頂きます。

お問い合わせ

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