新型コロナウイルスの感染拡大によって、ビジネス環境の不確実性が高まりました。
また、以前から必要性が叫ばれていたデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みもますます加速しています。
それに伴い、DXに関わるすべての人の負荷が高まり、プロジェクトの難易度も上がっています。そこで、マクニカ イノベーション戦略事業本部の丸山 千明が、DXが困難な根本原因と、その回避策を説明します。

講演者情報

株式会社マクニカ
イノベーション戦略事業本部 デジタルインダストリー事業部
プロフェッショナルサービス第2部 第1課 課長
丸山 千明

DXプロジェクトの難易度や担当者の負担が増加

これまで300件におよぶDXプロジェクトを支援してきたマクニカでは、プロジェクトを取り巻く最近の傾向について、次のように述べます。

「経営陣がDXの必要性を認識し、中期経営計画に取り入れているケースが非常に増えています。その流れで、複数の部門から選抜されたDXの専門知識プロジェクトチームができており、さらに企業によっては技術検証のステップを終え、経営課題との連動や実運用へとフェーズが進んでいます。加えて、新型コロナウイルスの影響を受けてのデジタルシフトも加速してきました。一方で、不安定な経済環境によって計画の稟議は非常にシビアになっており、特に期限やスピードに対する要求が非常に高まっていることを日々感じています」(丸山)

こうした傾向の影響を受けて、プロジェクトリーダーやメンバーの期待値や負担が激増しています。
またマネジメント層も、妥当性や進捗について善し悪しを判断することが難しくなっています。そしてすべてに共通して言えるのは、検討すべき内容が多くなりすぎているということです。

DXを妨げる壁とは何か?

では、何がDXを妨げる壁となっているのでしょうか。それは「難易度が高すぎる」ことにあります。

「例えば、中期経営計画をブレイクダウンした資料を作るにあたっては、『業務プロセスの変更や部門間の連携が伴ってくる』ということが課題となり、誰がやるのか、実際にできる人がいるのかといった議論が組織で起こります。実際に部門をまたいでコンセンサスを取る必要があるということに、難しさを感じていることが多いようです」(丸山)

システムの側面から見ると、すでに各部門が独自に最適化を図っているため、さらに難しいテーマに感じられます。

「難易度が高い」ことについて深掘りすると、「コミュニケーションの難易度が高い」と丸山は分析します。特にDX推進部門は、経営層と関連部署の間に入る立場にあり、複雑なコミュニケーションを必要とします。

組織の側面から見ると、DX推進部門の業務ボリュームが非常に多く、困難な状況であることがうかがえます

300件の支援からたどり着いたDXの障壁の回避策

上述したDX推進の障壁を突破するには、「コミュニケーションを円滑に進める形を作る」ことが不可欠になります。

「経営層、関連部署、DXチーム、それぞれが三位一体になるとコミュニケーションが円滑に進んでいき、難易度が下がっていくことにつながります。それを実現するための4つのポイントが『健康診断』『シミュレーション』『Fit to Standard』『セキュリティ』です」(丸山)

健康診断(現状分析)について丸山は「レイヤー間や部門間のコミュニケーションにおいて、『出発点の合意が必須』です。そうしないと、どこに向かって進むべきかを表すことができません。改革の最初にはいつも診断と分析が必要なのです」と話します。
その上で、現状分析と調査における課題を事前に理解しておく必要があります。

「現状分析の必要性を理解していても、実施には困難がついて回ります。例えば、『現状分析に時間がかかりすぎる』『費用対効果を上手く上層部に示せず、承認が下りなかった』『外部委託するとコストが高い』といった懸念点がつきまといます。また現状分析は調査する側だけでなく、調査される側にも負担を強いることも忘れてはなりません」(丸山)

では、何が現状分析のブレイクスルーポイントとなるのでしょうか。それは、部門間やレイヤー間で通用する「客観的・定量的」な現状と業務プロセスの可視化を「クイックかつローコスト」で実現することです。

「具体的には、自社の立ち位置を確認する成熟度診断や、業務におけるAs-Isを分析するプロセス診断があり、マクニカでも診断サービスを提供しています」(丸山)

「シミュレーション」については、体験を共有することでコミュニケーションが円滑になります。ブレイクスルーのポイントは、「安く・早く・細部を作り込みすぎず」傾向をつかむことだと丸山は言います。

最初は高い精度を求めるよりも、全体を把握することを意識し作成するのが重要です

Fit to Standardについては、部門間の連携や業務プロセスの変更が入るプロジェクトでは、机上の理論による説明で経営層と現場の双方から理解を得る難易度が高くなります。
要件定義にかかる時間と工数も非常に大きくなってしまうケースが多く、これをドライブできる人材も枯渇しています。

全体最適のデジタル基盤は難易度が高くなります

「Fit to Standardによるアプローチはブレイクスルーとして効果的です。日本ではシステムを業務に合わせるFit & Gapが多いかと思います。アドオン開発をしていくとコストがかさんできますし、そのためにバージョンアップが困難になります。それに対してFit to Standardは、業務をシステムに合わせる、いわゆるパッケージを最大限に活用する手法です。足りない自社要件については、アドオンを開発するのではなく、APIで連携する外部のアプリ活用や開発で実現することがポイントです」(丸山)

Fit to Standardのアプローチでは、パッケージ標準をよく理解するのが重要です

最後の「セキュリティ」について丸山は、「セキュリティは、検討課題から抜け落ちやすい内容です。IT部門に相談しても『OT領域のセキュリティはIT部門の管轄ではない』と言われてしまうことがよくあるようです。
IT部門からの協力を得るためには、具体的に『何のために』『いつから』『どことどこがつながるか』をしっかりと考え、最適なタイミングで相談を持ち掛けなければなりません」と指摘します。

また、セキュリティ検討のデッドラインを明確にし、それまでに連携を検討しなければ、中断や手戻りが発生してしまう可能性があります。最終フェーズでのインフラ構成作成時には、必ずセキュリティを交えて検討するのが重要です。

セキュリティ要件の検討漏れは、プロジェクトの進捗に大きな影響を及ぼす可能性があります

「自社の方針に沿ってベストな検討を進めていただくことが大事です。IT部門も忙しいでしょうが、コミュニケーションをとるように心掛けていただきたいです。まずできる対策としては、管理・監視を含めてパートナーと連携することです。もし自社で完結させる場合は、担当をつける必要があります。事故を想定した備え、エスカレーションパス、復旧手順も準備してください。ISOなどの規格に組み込んでしまうのも手です」(丸山)

参考資料

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