Splunk

スプランク

横河電機株式会社様

AWSの最新サービスを駆使し、未活用だったコールセンターの非構造会話データ解析にSplunkを活用。感情分析などにより顧客対応の向上や製品改良、新たなサービス開発に活かし、全社のデジタルトランスフォーメーションを加速

顧客満足度

Before
  • コールセンターの会話データはデータベースに蓄積しているだけとなり、会話データからトラブルの発生内容、顧客の不満を知るのは困難。
矢印:横
矢印:縦
After
  • 膨大な会話データを解析することでこれまで気が付かなかったお客様の不満や感情の可視化を実現。

データ

Before
  • 開発、生産部門のデータと販売、基幹システム、バリューチェーン部門のデータなど、組織部門ごとに分断されているデータが活用できずダークデータ化。
矢印:横
矢印:縦
After
  • データ構造に左右されないというSplunkの特長を活かし、各部門のデータをSplunkへ集約、それぞれの組織が解析できる仮想的なナレッジベースとして活用することで、ダークデータから価値を創出。
田野口 宏氏

横河電機株式会社
IAシステム&サービス事業本部
ライフサイクルサービス事業部
事業部長 田野口 宏氏

崔 励光氏

横河電機株式会社
IAシステム&サービス事業本部
ライフサイクルサービス事業部
レスポンスセンター統括部
部長 崔 励光氏

加藤 伸也氏

横河電機株式会社
IAシステム&サービス事業本部
プロダクト営業センター
ビジネス推進課 戦略企画Gr.
加藤 伸也氏

加藤 享夫氏

横河電機株式会社
デジタル戦略本部
グローバルアプリケーション部
ビジネスデータ活用推進Gr.
マネージャー 加藤 享夫氏

山下 じゅん子氏

横河電機株式会社
デジタル戦略本部
グローバルアプリケーション部
ビジネスデータ活用推進Gr.
山下 じゅん子氏

宮本 恵太氏

横河電機株式会社
デジタル戦略本部
情報システム部
ビジネスデータ活用推進Gr.
宮本 恵太氏

会話に含まれるキーワードを分析し満足・要望・不満のレベルを可視化

横河電機株式会社(以下、横河電機)は、2018年度を開始年度とする中期計画「Transformation(トランスフォーメーション)2020」を策定。収益性向上、新事業創出、生産性向上という3つの変革に取り組むための基盤として、デジタルトランスフォーメーション(DX)に対する戦略的成長投資を強化しようとしている。

その取り組みのひとつが、横河電機の「レスポンスセンター」における音声コンピューティング活用のプロジェクトだ。中核となる、電話音声のテキストマイニングによる分析システムに、マクニカが提供、サポートする「Splunk Enterprise」(以下、Splunk)が活用され、2018年11月から本番運用が開始された。

レスポンスセンターは、お客様からの問い合わせを24時間365日ワンストップで受け付けるコールセンターサービスの総合窓口である。日本本社には「グローバルレスポンスセンター」が設置され、専属のコールオペレーターと、製品・サービスに深い知見を持つエンジニアがリアルタイムに情報を共有。専用のデータベースにコール履歴を一元管理することで、お客様情報や保守契約内容、過去の履歴などと紐付けながら案件を把握し、迅速かつ的確な対応を実現している。また、売上の7割を占める海外においても「リージョナルレスポンスセンター」を9箇所設置して、国内と同様のサービスとサポートを提供。80ヶ国・230箇所に広がるサービスネットワークを強力にバックアップする。
「レスポンスセンターはお客様のタッチポイントとして機能し、問い合わせやトラブルに対応する中で、音声データが膨大に蓄積されています。しかし、トラブル傾向は数字で把握できるものの、なぜ発生したのか、どこにご不満を感じているのかなどを知ることは困難でした。そこで、これまであまり活用されていなかった会話音声を分析し、可視化することで、今まで気づいていなかったお客様の状況や感情を組織で理解することが重要な鍵になると考えました」(田野口氏)

レスポンスセンターに寄せられる電話音声は保存されているものの、大きなクレームが発生した時など以外は聞き直すことはなかったという。「会話に含まれるキーワードを抽出し、Splunkで分析することで、従来気付かなかったお客様の満足度、ご要望の内容、ご不満のレベルなどを数値で可視化できれば、その後の重大事故やリコールにつながる要因を高精度かつ効率的に取り出すことができるほか、既存製品の品質改善や新たなサービス・製品の開発にもつながるのではないかと仮説を立てたのです」(山下氏)

音声の波形分析と音声テキストデータ内のキーワードをSplunkで分析 感情分析による顧客対応の向上も可能に

横河電機は数年前からSplunkの社内活用を促進し、国内でも屈指の事例数を誇る。2017年にはSplunk統合基盤を構築して、多種多様なデータをダッシュボード上で連携可能にする仕組みを整えるなど、知見は豊富に備わっていた。

2018年1月、仮説に基づく企画を提案。そこからは同社ならではのスピード感で、4月に予算化し、5月までの1ヶ月間をかけてPoC(概念実証)を行った。PoCではAmazon Web Services(AWS)の最新機能も取り入れられた。具体的には、レスポンスセンターの窓口をクラウド型コンタクトセンター「Amazon Connect」で構築し、会話記録やオペレーターログ、CTIデータを収集。それらを「Amazon S3」バケットに投入すると、Splunkが自動的に音声認識サービス「Amazon Transcribe」を使って音声をテキストへと変換し、「Amazon Comprehend」でキーワード検出や感情要素の波形分析処理を行う。それを、顧客の契約データや過去のCTIデータ、サービスレポートなどと一緒にSplunkに取り込むことで、インサイトや関係性を検出する自然言語処理(NLP)分析が行われ、各種ダッシュボードで可視化するという流れだ。これら全て「AWS Lambda」によるイベントドリブン、サーバーレスで実行される。

PoCの結果、レスポンスセンターの対応改善や顧客満足度の向上への可能性が確認できたほか、古い製品を活用するエンドユーザーも可視化できたことで、代理店を経由しないダイレクトな情報収集の機会が得られ、営業へのエスカレーションも可能になることが期待されたという。

特に注目されたのは、音声感情解析AIの開発・販売をするEmpath社が提供する音声の波形から感情分析するエンジン(Empath)のデータを含めたことによる精度向上だ。実証実験当初は、ネガティブなキーワードがなければ分析結果としては「平常」と認識していたが、途中から音声の波形分析をSplunkに取り入れたことで、平常と出ていたものが実は怒っているというデータが見えてきたという。
「それをダッシュボードで確認した時は大きな驚きでした。実運用で、もしお客様がお怒りかもしれないと検出した場合は、コールオペレーターの段階で対処しようとせず、速やかに営業担当者にエスカレーションしてくれた方が組織間で対処できるので、より効果的な対策を迅速に講じることができます。お客様の感情に合わせてアクションを変えるような運用は非常に有効だと考えます」(加藤 伸也氏)

また、Splunkを活用することで製造業が課題とする情報のサイロ化を解消できる可能性も見えてきたという。社内情報の流れには、開発・生産における商品・サービス開発軸の情報の流れと、販売における顧客管理軸の情報の流れが分断しているほか、基幹システムにおけるマネジメント軸の情報の流れ、調達~保守のバリューチェーン軸の情報の流れもあるなど、データベースが分断し、連携した形での可視化ができなかった。
「各事業ユニットや部門でそれぞれの目的を持って構築・蓄積してきたナレッジを集約してデータベース化することは容易ではありません。Splunkであれば、非構造化データを含む、さまざまなシステムで取得されたデータを容易に取り込むことができます。
各部門のデータが可視化され、それぞれの目的で利用できるようになることで、仮想的なナレッジベースとしての活用を期待しています。将来的には、アフターサービスの情報を製品企画に利用したり、問い合わせ対応の情報を生産準備にフィードバックしたりすることができるようになるのではないかと考えています」(崔氏)

  • Amazon Connect、Amazon ComprehendなどとSplunkを組み合わせたレスポンスセンター音声分析システムの概要

NLPに有利な英語圏から音声データ分析をスタート

Splunkによるレスポンスセンターの音声分析は、2018年11月に実運用段階へと移行。当面は北米のリージョナルレスポンスセンターで本番音声データを活用した分析を開始している。今後、データを蓄積しながら運用を軌道に乗せ、北米以外の欧州地域などにも順次展開していく計画だ。「現在は比較的NLPに容易な英語をベースに運用をしていますが、音声の波形分析データを取り入れるといった複合的な分析を進めていくことで、精度を向上させ、今後はさまざまな言語に対応できるようしていくつもりです。まだまだやることがたくさんありますが、いつかはNLPに不利といわれる日本語にも取り組みたいと思っています」(田野口氏)

将来的にはCRMデータやメールデータなど、取り込むデータの範囲を広げるとともに、AIやディープラーニングの技術をSplunkに連携させることで、大量のデータ分析の中からお客様に適した柔軟な対応を提供できるようにしていくという。
「Splunkはデータ課金方式なので多くの人が自由に活用でき、処理スピードも速く、取り込むログを制限できるセキュアな運用がポイントとして評価されました。このプロジェクトもSplunkでなければ実現していなかったでしょう」(宮本氏)

今回の横河電機による、Amazon ConnectやAmazon Comprehendなどを組み合わせ、コールセンターの音声をテキスト化してSplunkで分析した事例は、製造業のみならず非常に先駆的で、世界が注目している。
「音声分析は時期尚早という懸念もありましたが、Splunkを核に優れたアウトプットが出たことは今後の可能性を広げる成果だと考えています。今後当社がめざすDXのメインプラットフォームとして、Splunkには大きな可能性を感じます」(加藤 享夫氏)

User Profile

横河電機株式会社
URL

http://www.yokogawa.co.jp/

1915年創立。石油化学、鉄鋼、製紙、食品、薬品などの工場やプラント設備向けの制御・運転監視システム分野で世界的なシェアを持つ。現在は、主力の制御事業を始めとして、計測、航機その他事業を軸にグローバルで事業を展開。高付加価値の製品やソリューションを提供するソリューション・サービス・カンパニーへの変革を進めている。

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株式会社マクニカ  Splunk 担当

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