私は機械メーカ―で3年半、筐体や機構設計など、開発業務に携わった後、マクニカにFAEとして中途入社しました。

マクニカは中途入社の方の比率も多く、全く疎外感がなくとても過ごしやすいです。

もともと、大学も機械系で入社時には全く電気の知識がなく、オームの法則からやり直し、現在必死に勉強中です。

そんな中で実際にDC/DCコンバーターを設計する機会がありましたので、私のような電気屋初心者の方の手助けになればと

その過程をご紹介させていただきます。


今回は第4稿目です、第3稿目はこちらからご覧ください。

 

いよいよ最終回です!

ディスクリート基板で作成したDC/DCコンバーターはどれほどの性能を発揮できるのでしょうか。

効率、位相余裕、動作波形の観察結果をご紹介していきます

動作波形測定

使用基板

使用基板

測定環境

測定環境

まずは動作波形を観察してきます

基盤に目立つ赤い太線があると思いますが、これはインダクター電流測定用の配線です。

最初評価の時はインダクター電流も観察してねと言われ、いったいどうやって。。と思っていたのですが、

インダクターの足を片方はがして太線でもう片方を接続することによって、電流プローブが

入る隙間を作り出す技を教えていただき、無事測定可能になりました。

ここら辺も測定ノウハウだなあと感じました。お客様からご依頼を受けて測定・解析などをするときも

このような改造をすることがあると聞き、腕をあげておかなければと思いました。 (失敗できない。。)

測定波形(入力電圧12V,出力電圧5V,出力電流2A)

前回調整した甲斐もあり、SW波形・インダクター電流波形・出力電圧どれも正常な動作が確認されます。

前回、SW波形をMMCXコネクターを用いて測定するとオーバーシュートが小さく観測されました。

この波形はSW波形と出力電圧波形をMMCXコネクターで測定していますが、

入力電圧波形は通常のプローブでとっていますので、実際もう少し入力電圧波形のリップルは少ないかもしれません。

オシロスコープ上の波形が、必ずしも真の波形ではないことを意識できるようになったと感じています。

測定ポイントの重要性を学べたので、次に基板を作成するときは最初からMMCXコネクターを入れる設計にすることにしました。

効率測定

次は効率測定です。

効率は以下の式で算出できます

効率n= (入力電圧×入力電流) / (出力電圧×出力電流)

したがって、デバイスの入出力電圧・電流を測定すれば効率を出すことができます

効率が良いということは、デバイス&回路での損失が少なく性能が良いということになります。

 

作成した効率グラフ

作成した効率グラフ

データシートの効率グラフ

データシートの効率グラフ

作成した効率グラフとデータシートの効率グラフを比較してみます。

作成したグラフのプロット間隔が荒いため、ざっくりになってしまいますが、効率のピーク(12VIN,0.8Aout)で比べてみると作成した基板もなかなかいい線いっていますね。

ただ、その他の条件では作成した基板の負けですね。。

効率をどこまで引き出せるかは基板設計によって大きく変わってくるようです。

今回は、ユニバーサル基板で作っているので、配線のロス成分が多く効率に影響しているのかもしれません。

位相余裕測定

次に位相余裕の測定に移ります。

位相余裕というのは簡単に言うと制御系の安定度合いを示す指標となります。

これが少ないと、FBの制御がうまく行かずに出力電圧が発振したりしてしまいます。

今回の測定では、一般的に位相余裕目安は50°~60°と言われているので、それを満たせているかどうか

確認していきたいと思います。

位相余裕測定機器

位相余裕測定機器

ボード線図

ボード線図

測定が終了すると、測定結果とボード線図を出力してくれます。

全条件載せたいところですが、スペースが足りないので12V-1A出力の結果を抜粋しました。

ボード線図右上にある※Θ:+61.00deg が12V-1A出力時の位相余裕度を示しています。

理想とされる60°を超えているので、安定していると言えるでしょう!

ただ、もう一つクロスオーバー周波数という指標があり、この周波数を駆動周波数の

1/10程度に調整するのが好ましいとされています。

これは、負荷応答性に関係するのですが今回は割愛させていただきます。

位相余裕・負荷応答性について詳しくは下記よりご覧ください。

位相余裕度測定サービス

DC/DCコンバーターの位相余裕と負荷応答のトレードオフ検証

最後に

電気回路について、学校で習った程度しかわからなかった元機械エンジニアが

ユニバ―サル基板でDC/DCコンバーターを作ってみましたがいかがでしたでしょうか?

私としては、右も左もわからない中で最終的にデバイスを動かすことができたことにとても感動しました。

また、機械と違って、不具合がなかなか目に見えない難しさを実感したので測定の大切さを身に染みて感じることができました。

ユニバーサル基板編はこれで終わりますが、次回はプリント基板編となりますので

お楽しみに!

ユニバーサル基板編記事一覧

■ユニバーサル基板編

 ・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (1)

 ・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (2)

 ・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (3)

 ・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (4)


■プリント基板編

 ・自作プリント基板で電源作成!(1)

 ・自作プリント基板で電源作成!(2)