はじめに
私は機械メーカ―で3年半、筐体や機構設計など、開発業務に携わった後、マクニカにFAEとして中途入社しました。
マクニカは中途入社の方の比率も多く、全く疎外感がなくとても過ごしやすいです。
もともと、大学も機械系で入社時には全く電気の知識がなく、オームの法則からやり直し現在、必死に勉強中です。
そんな中で実際にDC/DCコンバーターを設計する機会がありましたので、私のような電気屋初心者の方の手助けになればと
その過程をご紹介させていただきます。
使用デバイス
はじめに設計をおこなったデバイスは、アナログ・デバイセズ社のLT8609Aです。
DC/DCコンバーターは様々な種類があり、それぞれ設計難易度が異なります。
・Monolithic Regulator
・Multi-output Regulator
・μModule
・Controller Regulator
LT8609Aは、Monolithic Regulatorにあたり1出力のみで降圧型になります。
このデバイスを用いて、以下のスペックを満たせる基板を制作するのがゴールです。
・入力電圧 :6~36V
・出力電圧 :5V
・出力電流 :2A
・周波数 :2MHz
今回はプリント基板ではなく、ユニバーサル基板でチャレンジします。
設計・部品調達
まずデータシートを見ながら各部品の定数を決定し、シミュレーション ツールであるLTspiceを用いて回路図を作りました。

LTspice上で回路図を作成すれば、そのままシミュレーションで動作確認ができます

シミュレーションの結果、期待値通り5V出力が確認できたので、定数はひとまず問題なさそうです。SWノードを確認すると、スイッチングもきちんと2MHzの周波数に設定できていることが確認できました。
シミュレーション上で動くことが確認できたら、部材を購入します。今回は、Mouserおよび秋月電子通商を利用しました。
LT8609Aは様々なパッケージが容易されていますが、ユニバーサル基板にそのまま実装できないパッケージだったので、秋月電子通商で変換基板を購入します。
今回は、こちらのリンクのサイトから購入しました。
部品実装
部品が到着したら、いざ実装していきます。
秋月電子通商で購入した変換基板にLT8609Aを実装すると、このような形になります。
はんだ付けも初心者でしたので、なかなか大変でした、、

デバイスの裏側にGNDパットもあるので裏返して、はんだを流し込みます。
テスターでデバイスの足と変換基板が、きちんと導通するか確認しました。

変換基板とメイン基板の接続は、一工夫必要でした。
問題になったのが、変換基板裏側のGNDパットの処理です。これをメイン基板に接続させるために、図5の断面図の様に変換基板の裏側から表面に銅箔テープで持ってきて、両端に接着したピンヘッダーにショートさせています。
単純にGNDをリード線で引き出して接続する案も考えたのですが、デバイスにとってGNDの安定性はとても重要とのことで、この方法が一番確実と判断しました

ユニバーサル基板に購入した部品を実装していきます。だいぶ、はんだの扱いにも慣れてきました。
先ほど作成したピンヘッダー付きデバイス基板を実装するために、ユニバーサル基板側にもピンヘッダー-メスを実装します。こうしておくことで、デバイスが壊れたときすぐに交換できるようになります。
裏側は針金と既存部品の足を使用しつつ、配線していきました。電流が流れる部分の配線は太く短くの掟を守りながら(これが結構難しい)組み立てていきます。GNDは、「これでもかと言うくらい強化しておくべき」と言うアドバイスを受けて、銅箔テープでGND面積を多く取っています。

今回は、以上となります。
何の電気の知識もなかった私が、初めて自分で部品手配から設計・実装までをおこなったわけですが、実践しないと感じ取れない電気設計者さんの苦労を、少し経験できたと思います。
機械設計出身の私からすると、電気配線はどうにでもなるといういイメージを持ってしまっていましたが、実際は様々な制約に縛られ、世の基板は考えつくされた物なのだと身をもって体感できました。これから、電気設計のお客様をサポートするにあたり、少しでも多くの経験を積み力になれるようにならなくてはと、改めて実感できました。
次回は「火入れ編」です。
今回作成した基板を、実際に動かして行きます。果たして動くのか、、ご期待ください。
ユニバーサル基板編記事一覧
■ユニバーサル基板編
・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (1)
・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (2)
・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (3)
・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (4)
■プリント基板編