前回の記事で、急激に効率が落ちる原因は「サーマルシャットダウン」であるという結論に達しました。
今回は、2つの基板間で効率が異なる理由について掘り下げていきたいと思います。

白基板と黒基板の効率差の原因を探る

効率グラフ

前回、白基板では 1.5A 付近で効率が急激に低下し、その原因がサーマルシャットダウンであることが判明しました。では、なぜ白基板でのみサーマルシャットダウンが発生したのでしょうか?なぜ黒基板は白基板に比べて効率が良いのでしょうか?

効率グラフを見ると、全体的に 1~2% 黒基板が高効率です。

白基板と黒基板の違いは基板パターンのみなので、これが影響していることは想像に容易いのですが、基板パターンの影響で効率が悪く、IC 温度が上がったのでしょうか。それとも IC 温度が高いため、効率が悪化したのでしょうか?

鶏が先か卵が先かみたいになっていますが、これは重要な問題です!どのような実験をすれば切り分けられるでしょうか?

実験手順

先輩方などに教えを乞いながら、以下のような実験をすることにしました。

 1. 黒基板と白基板を同じ条件で動作させ、サーモカメラで温度を測定する。
 2. 温度差が確認された場合、その温度差分、恒温槽で黒基板の環境温度を上昇させる。
 3. 環境温度を上昇させた黒基板の効率を比較する。

もしこの手順で効率に差が出た場合、IC の温度が効率低下の主な要因であると結論付けられると考えました。

実験

まず、サーモカメラで両基板の温度を測りました。

白基板 サーモカメラ
黒基板 サーモカメラ

サーモカメラで測定した結果、黒基板と白基板の温度差は 23℃ でした。そこで、黒基板の温度を 23℃ 上げて効率を再測定しました。

環境温度 VIN[V] VOUT[V] IOUT[A] 効率
24.4℃ 36.0 5.1 1.0 81.1%
47.4℃ 36.0 5.1 1.0 80.5%
5℃ 36.0 5.1 1.0 81.6%
-10℃ 36.0 5.1 1.0 82.0%

黒基板 温度変化による効率の違い

黒基板の温度による効率差は確認できましたが、温度を 23℃ 上昇させても効率は 0.6% しか低下しませんでした。さらに、-10℃ まで冷やした際の効率も測定しましたが、47.4℃ との差は 1.5% にとどまりました。黒基板を白基板と同じ温度条件に持っていっても、白基板ほど効率は落ちていません。これらの結果から言えることとしては、IC の温度が効率に及ぼす影響はわずかだということです。

これらの結果から黒基板と白基板の効率差の原因は、温度が効率に与える影響は多少あるものの、基板パターンの違いによる損失がほとんどであると結論付けました。やはり私が前知識なくパターンを書いた白基板と、先輩方の指摘を受けてパターンを修正した黒基板では、きちんと性能差が出ているということです!

最後に

今回の一連の検証を通じて、基板パターンが効率に及ぼす影響の大きさを改めて実感しました。基板設計において、単に部品を配置するだけではなく、電流が流れを意識したパターンの工夫が非常に重要だということを学びました。

また、実験を進める中で、原因の切り分けをどのようにおこない、論理的に問題を解決していくかというプロセスも非常に重要だと感じました。問題に直面した際には、一つ一つの要因を丁寧に確認し、試行錯誤しながら原因を特定していくというステップは、貴重な経験値になったと思います。

これで、基板作成に関するブログは完結です!最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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