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製造業DXの現場では、日々多くの推進リーダーが壁にぶつかり、悩みを抱えています。

私たちマクニカは、組織のために奮闘する皆様を現場で支援し続けてきました。本連載ではその経験を踏まえ、DX推進リーダーを3つのタイプに分類し、それぞれの「よくある失敗」と「解決策」を解説します。

本連載が、DX推進に悩む皆様が再び前を向くヒントになれば幸いです。(この記事は3回目/全3回)

製造業DX推進リーダーの3タイプ

先の記事では、製造業DXを推進するリーダーを以下のように分け、各タイプの「よくある失敗の解決策と伴走のポイント」について、長年製造業のDXを伴走支援してきたデジタルインダストリー事業部 事業部長代理の阿部に聞きました。

タイプA
事業部門が主体となってDXを推進するケースのリーダー
タイプB
IT/情報システム部門がDXを推進するケースのリーダー
タイプC
DX推進部/経営企画部門がDXを推進するケースのリーダー

本記事では、各タイプのリーダーたちが成果を出すための強力な武器であるMendixDXノウハウの5Pについてご紹介します。

なお、Mendixについては以下で詳しくご紹介しています。
ローコード開発プラットフォーム Mendix

製造業DXの武器「Mendix」が3タイプのリーダーに効果的な理由

事業部(タイプA)の武器:アジャイルな速さとセキュアな連携

—— では早速、タイプA(事業部門が主体となりDXを推進するケースのリーダー)が成果を出すにあたって、Mendixが良い理由を教えて下さい。

阿部:タイプAにとって、Mendixを導入するメリットは大きく2つあります。

1つ目は、現場の非IT人材でもクイックにサービスをリリースし、その場で修正できるというアジャイルな開発体制を持てることです。ローコードによって開発期間を短縮できるだけでなく、現場のフィードバックを即座に反映できるため、『作ったけれど現場で使われない』というシステム開発における最大のリスクを回避できます。

また、外注のようなタイムラグなしに、ビジネスの変化に合わせて自分たちの手でシステムを成長させることが可能です。

2つ目は、社内業務の効率化にとどまらず、顧客やパートナーと連携する対外的な本番サービスまで構築できる点です。 他のローコードツールは、主に社内向けのデスクトップアプリ作成に向いていますが、外部向けのビジネス利用にはセキュリティや品質の面で課題が残ることがあります。

その点、Mendixは親会社であるシーメンス(Siemens)がセキュリティやSLA(サービス品質)を担保しているため、個人情報や取引先連携を含む重要な領域であっても、事業部門の責任で安心してサービス提供に踏み切れます。

つまり、単なる業務効率化ツールではなく、顧客や取引先を巻き込んだ事業システムまで、自分たちの主導で作れるようになる点が最大の強みです。

IT部門(タイプB)の武器:シャドーITを防ぐ統制力と拡張性

—— では次に、タイプB(IT/情報システム部門がDXを推進するケースのリーダー)が成果を出すにあたって、Mendixが良い理由を教えて下さい。

阿部:タイプBにおけるメリットは、ガバナンスと可視化による統制力の強化と拡張性です。

まず、現場主導の開発や市民開発で最も懸念される、システムのブラックボックス化やシャドーITを防げる点です。 誰が何を開発し、どれだけ使われているかをプラットフォーム上で一元管理できるため、IT部門がコントロールタワーとしての機能を維持できます。

利用頻度や効果(例:3分の削減×1万回=3万分の効果)を数値で可視化できるため、投資対効果を明確に説明できます。また、使われていないアプリのスクラップ&ビルドも容易にできるため、システム資産の肥大化を防ぎ、健全な状態を保つことが可能です。

2つ目は、既存システムとのデータ連携が標準機能として容易に行える点です。 複雑な連携プログラムを個別に開発する必要がなく、既存の基幹システムやデータベースと安全に接続できます。

これにより、既存のIT資産を活かしつつ、複雑化も防ぎ、拡張性の高いシステム環境を効率的に構築・維持できるのが大きな強みです。

DX部門(タイプC)の武器:ビジネスとITを繋ぐ共通言語とノウハウ

—— タイプC(DX推進部/経営企画部門がDXを推進するケースのリーダー)が成果を出すにあたって、Mendixが良い理由を教えて下さい。

阿部:タイプCのメリットは、ビジネス部門とIT部門の架け橋となるための強力な武器となる点です。

Mendixの特徴として、単なる開発ツールではなく、両部門がいかに協力して成果を出すかという協業プロセスそのものが設計されている点があります。

タイプCの役割は両部門の巻き込みですが、Mendixはスピードを求めるビジネス側と、統制を求めるIT側の要求を一つのプラットフォーム上で両立させることができます。 これにより、対立しがちな両者を繋ぐ共通言語として機能し、円滑な連携を実現します。

また、プロジェクトを成功させるためのノウハウがセットで提供できる点もメリットです(ただし、こちらの提供はマクニカのみのサービスです)。 単に『ローコードで作れます』という機能だけでなく、“どのようなチーム構成にすべきか”、“DXに向け、どのタイミングで何を検討すべきか”といった、DXプロジェクト推進の型がガイドラインとして組み込まれています。

つまり、ツールを導入するだけで、本来コンサルタントが提供するような成功へのベストプラクティスも同時に手に入れることができる点が、推進リーダーにとっての大きな価値となります。

マクニカにしかできないMendixの導入・開発支援

最大の違いは目指す「目的」

—— DX推進リーダーにとって強力なツールとなるMendixだけでなく、「DX成功のベストプラクティス」も提供できる点がマクニカの強みの一つだと思います。改めてMendixの導入・開発支援において「なぜマクニカが良いのか?」という点を教えて下さい。

阿部:大きく2つあると思います。

1つ目は、システムを納品することではなく、お客様自身が使いこなせる状態、つまり内製化をゴールに定めている点です。

一般的に、ツールの導入・開発支援は“納品すること”自体が目的になりがちです。しかし我々は、将来的に我々がいなくなっても、お客様自身がスピードと柔軟性を持ってビジネスを変革できる能力、すなわち『ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)』を獲得していただくことを真の目的としています。

もちろん、最初から全てをお任せするわけではありません。お客様のリソース状況に合わせて、初期は我々が開発を主導し、徐々にスキルトランスファーを進めるといった柔軟な伴走を行います。

つまり、依存ではなく自走させることを前提とした支援スタイルが、最大の特徴です。

2つ目は、単なる開発技術だけでなく、IT活用の判断基準となる組織のOSのインストールや実行する組織の構築支援まで提供できる点です。

Mendixはあくまで手段の一つに過ぎません。真に重要なのは、『どの業務にMendixを使い、どこにSaaSやスクラッチ開発を適用すべきか』という技術選定の判断基準をお客様が持てることです。

例えば、開発プロセスにおいても「全てをアジャイルにする」といった極端な方針ではなく、「堅実なウォーターフォールとどう使い分けるか」といった手順も策定したりします。

また、継続してDXを進めていくためには、その機構を持った組織を構築することが必須です。我々は、Digital Execution Factoryというサービスとして「CoE(Center of Excellence)組織」や「仕組みの立ち上げ自体」を提供しています。

これらのノウハウは、シーメンスやMendix、海外のDX成功企業が実践してきた方法論で、我々自身が自社でトライし、日本流に最適化しました。そのノウハウとナレッジを提供できるのが大きな強みです。


なお、Digital Execution Factoryについては、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
世界が試し、マクニカが磨き上げた「組織を変える日本流製造業DXとは」〜分断・対立・不動を超え、DXをカルチャーにする仕組み〜

製造業DXのベストプラクティス「5P」で、リーダーの「足りない」を埋める

先に出てきたDigital Execution Factoryというサービスは、製造業DXのベストプラクティスを体系化したフレームワークである5Pをベースに提供されています。

本章では5Pの詳細、また5Pが各リーダーたちをどのようにサポートしてくれるのかをご紹介します。

そもそも5Pは、DX成功に欠かせない要素を体系化

—— まず、そもそも5Pとは何か教えてください。

阿部:5Pとは、DXを成功させるために不可欠な5つの要素を体系化した、製造業DXの推進フレームワークです。

元々はシーメンスやMendixが提唱するグローバル標準のメソドロジーをベースに、我々が自社での実践を経て、日本企業の文化や商習慣に合わせて最適化したものです。

5PはDXを実現するうえで、一つでも欠ければ成果が得にくくなる要素である、People・Portfolio・Process・Platform・Promotionの5つを定義し、それぞれの頭文字を取って「5P」と呼んでいます。

5P要素 概要
People アジャイルでビジネスとITを連動したプロジェクトを実行するための必要な人材像とチーム編成
Portfolio 何のために何をやるかを明確にし、アプリケーションのアイデアをリスト化・優先順位付けする
Process アイデアを高速リリースし、利用しながらアップデートする業務・開発プロセスとガバナンス
Platform 新サービス創出を事業部門 × IT部門で連携して進めるための共通IT基盤
Promotion チームのモチベーション維持と文化変革を促す、内外への発信・啓蒙

5Pの価値の一つは、DX推進における現在地の可視化とナビゲーションです。 DXプロジェクトでは、『自分たちが今どのレベルにいるのか』、『次に何をすべきか』という基準を持たずに進め、迷走してしまうケースが少なくありません。

また、これら5つの要素は相互に関連しており、どれか一つが欠けてもプロジェクトは頓挫してしまいます。

そこで我々は、この5つの軸を用いて組織の成熟度を客観的に診断し、ナビゲーターとして正しい現在地次に目指すべきゴールを提示し、お客様のパートナーとしてDXを伴走します。

タイプAには「Process・Platform」

—— では具体的に、各5Pが各リーダーたちをどのようにフォローしてくれるのでしょうか。

阿部:まず、タイプAは、ビジネスのアイデアである“Portfolio”は豊富に持っていますが、それをシステムとして形にするための手順である“Process”や、セキュリティを担保する基盤である“Platform”が不足しています。

そこで我々は、彼らの情熱が単なる簡易ツールで終わらないよう、標準化された開発プロセスとアプリを開発し続けられる基盤を提供します。

これにより、アイデアを社内外で本格的に活用できるビジネスサービスへと昇華させることができます。

タイプBには「Portfolio」

—— では、タイプBはいかがですか?

阿部:タイプBは、運用ルールである“Process”やインフラの“Platform”の整備には長けていますが、その強固な基盤の上で何を作ればビジネスに貢献できるかという“Portfolio”という企画立案において、サポートを必要としています。

日々の安定稼働や調整業務に追われるタイプBが、DXに向けた攻めの提案や行動に移すのは容易ではありません。そこで我々が、他社の成功事例を提示したり、ビジネス部門とのワークショップをファシリテートしたりして、対話のきっかけを作ります。

IT部門が本来持っている高い技術的知見を、受動的な管理だけでなく、ROIの高い開発テーマの提案へと繋げられるよう支援します。

タイプCには「Promotion」

—— それでは、タイプCはどうですか?

阿部:タイプCにとって最も重要なのは“Promotion”です。

事業部のような売上も、IT部門のようなシステム権限も持たない彼らは、社内において“なぜ彼らが主導するのか”という正当性が問われ続ける立場にあります。

そのため、単なる広報活動にとどまらず、経営層を巻き込んだメッセージ発信や成果の可視化を通じて組織内での市民権を獲得し、部門間の壁を突破する求心力を高めることが不可欠です。

この社内マーケティングを体系的に実施できる“Promotion”で支援します。

すべてのタイプに不足する「People」

—— すべてのタイプに不足する「P」はありますか?

阿部:どのタイプにも共通して絶対的に不足しているのが“People”つまり、人材です。

どれほど優れた戦略や基盤があっても、それを動かし続けるのは最終的に人です。外部ベンダーに依存し続けるのではなく、お客様ご自身の社員が変革の主体となるには、このPeopleへのアプローチ、つまり育成が重要となります。

マクニカでは、社内でDXを推進できる人材を育成するためのサービスだけでなく、惜しみないノウハウ提供やパートナーとしての精神的な支えとして、お客様のPeopleを支援します。

重要だが、軽視されがちな「Promotion」

—— 実務支援の中で、各リーダーの頭から抜けがちだが、実は効果が大きい「P」はありますか?

阿部:Promotionです。

People, Portfolio, Process, Platformの4つについては、その必要性が論理的に理解されやすいため、予算や時間が割かれます。

しかし、Promotionに関しては単なる社内広報やお知らせ程度に捉えられ、優先順位が下げられてしまうケースが多いです。 しかし、どれほど優れたシステムを作っても、それを使う人や関わる人の心が動かなければ、プロジェクトは定着せず、失敗に終わります。

この心を動かすために、例えば、以下のような活動を実施します。

Promotion施策 概要
ビジョンの明確化 「なぜやるのか」を経営目標とリンクさせて言語化する。
価値(ROI)の数値化 「アプリを10個作った」という機能報告ではなく、「年間120時間の工数を削減した」というビジネス価値で語る。
ステークホルダー管理 社内政治地図を描き、応援者(チャンピオン)と反対者(デトラクター)を把握して個別にアプローチする。
コミュニティ作り 現場担当者が成果を自慢できる場を作り、上意下達ではなく、横のつながり(口コミ)による信頼を醸成する。
成功を祝う 小さな成功(Quick Win)でも大げさに祝い、チームの一体感を作る。

効果的なPromotionをするために、上記のような施策を含め、どうすれば現場や経営層に響くのかを、メディアへの発信や採用への波及効果など、広い視点で設計する必要があります。

マクニカは、50年にわたり海外の未知のプロダクトを日本市場に浸透させ、信頼を勝ち取ってきたマーケティング会社としての歴史があります。 ここで培った、人の心を動かすノウハウを活かし、お客様のDX機運を醸成、浸透させる戦略的パートナーとして、プロモーションの実行までを一緒に考え、支援しています。

デジタルインダストリー事業部 事業部長代理 阿部

製造業DXで戦うリーダーたちへ

失敗の回避も重要だが、失敗の許容も大切

本記事では、各リーダーのタイプごとに、失敗事例や解決方法をご紹介してきました。

最後にもう一つ、仮に失敗したとしても「失敗を許容すること」もDX推進リーダーのマインドとして非常に重要だと阿部は話します。

阿部:DX推進リーダーは、リスクを完全に排除しようとするのではなく、“失敗を許容しながら進める”というマインドセットを持つことも重要です。

グローバルな潮流としても、計画に時間をかけすぎるより、実行段階での小さな失敗を通じて軌道修正していくアプローチの方が、不確実性の高いDXにおいては正解に近いとされています。また、数々の失敗を経験してこそ、本質を見極める目も養われます。

失敗への備えは、もちろん重要です。しかし“失敗を受け入れ、そこから学ぶ姿勢を持つこと”も同時に重要になります。この両輪が、長く困難なDXプロジェクトを成功に導く鍵だと感じています。


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ソリューション

製造業DXを組織文化にするDigital Execution Factory

マクニカでは、製造業DXの各リーダーの強み・弱みに合わせて、パートナーとして失敗を一緒に乗り越える製造業DX支援サービスを提供しています。

具体的には以下のようなご支援を通じて、DXを組織文化にする「Digital Execution Factory」を提供しています。

  • 全社を巻き込むガバナンス体制の強化
  • 事業部門・IT部門を横断する専門組織(CoE)の構想設計から立ち上げ・定着に至るまでの伴走
  • DX推進を現場でリードできるスペシャリスト人財の育成プログラム
  • アジャイル開発で小さい成功体験を積めるローコード開発プラットフォームのMendixを活用した開発支援

など

「Digital Execution Factory」はDXが進んでいる欧米で確立された実学を、日本の製造業向けに最適化した日本でマクニカしか提供できないノウハウです。お客様それぞれにとって最適なDXが、「自発的かつ継続的に創出される」状態を目指し、伴走いたします。