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導入から1年。デジタルの力で変わる工場
──東郷製作所の挑戦と成果

“ばねの百貨店”が挑むスマート化

──株式会社東郷製作所様

1881年に村の鍛冶屋として創業し、ばねの東郷の愛称で親しまれる株式会社東郷製作所は、自動車用小物ばねを中心にグローバルな事業を展開し、ホースクランプをはじめとする多様な製品を手がけてきました。「昨日よりもよい品で社会に奉仕する」という社是のもと、長年にわたり品質と技術力を磨き続けており、2020年には経済産業省が選定するグローバルニッチ企業にも選定されています。
そんな同社の製造DXをリードしているのが、20234月に発足した「デジタル推進部」。IoT導入を担ってきたデジタル推進室と、社内システムを担う総務部システム開発課が統合され、現場と基幹システムの橋渡しを担う中核組織として活動を進めています。

現場のリアルな情報を価値ある形に変え、全社的な業務最適化を図る──その中心に据えられているのが、「DSF Cyclone」の活用。東郷製作所では、設備の稼働情報や異常信号、生産実績などをリアルタイムで可視化・分析し、感覚や経験だけでは捉えきれなかった改善の糸口を見出しています。
“情報を活かす”という視点から、スマート工場化に挑む東郷製作所。その取り組みは、次代のものづくりに向けた確かな布石となっています。

本プロジェクトの参加メンバー

株式会社東郷製作所の方々

  • 製造部豊明製造一課第二係 係長 松原 浩之様
  • 製造部豊明製造一課第二係 グループ長 中村 昭彦様
  • TPS・デジタル推進部 理事 部長 太田 貴也様
  • TPS・デジタル推進部デジタル推進課 課長 村瀬 拓哉様
  • TPS・デジタル推進部デジタル推進課 髙田 昌稔様
  • TPS・デジタル推進部デジタル推進課 宮村 卓様
  • TPS・デジタル推進部デジタル推進課 西尾 翼様
  • TPS・デジタル推進部デジタル推進課 加藤 大智様

株式会社マクニカ

  • デジタルインダストリー事業部プロフェッショナルサービス第2部第3課 課長 影山 優太
プロジェクトメンバー集合写真
課題
  • 紙による手書き記録や属人的な自作システムによる限界
  • データ活用が部分最適にとどまり、全体最適につながらない
目的
  • 工場全体を俯瞰し、横断的な改善を可能にする“共通の物差し”の確立
  • 改善活動を現場任せにせず、組織全体で再現可能な仕組みへ移行
  • 現場と経営層が同じKPIを共有し、迅速かつ的確な意思決定を実現
効果
  • “感覚ベース”から“根拠ある改善”への現場文化の変革
  • リアルタイムでの異常検知と素早い対応による生産の安定化
  • 国内4工場・将来の海外拠点展開を見据えた、仕組みの基盤づくり

デジタル化の裏に残る“紙の運用”

手書きによる記録の限界──DX推進を妨げる根本的な課題があった

太田様:以前から画像処理の内製やAI人材の育成など、先進的な取り組みは進めていました。でも、製造現場にはアナログな部分も多く残っており、たとえば工程ごとの生産数は、紙に手書きで記録していました。
画像処理の取り組みを通じて感じたことは、工場のライン全体を“デジタル化”して、“見える化”していく必要があるということ。工程単体ではなく、全体を横断して見えるようになれば、中間在庫の流れも見えるし、工場ごとのキャッシュフローも把握できる。そうなれば、より精度の高い生産計画を立てるための基盤になります。

現場にも経営にも届く“共通の物差し”を

標準機能で全体をカバーできる仕組みを求め、たどり着いた選択肢

村瀬様:これまでも、Raspberry Piやマグネットセンサーを使って、自分たちで仕組みをつくってはいました。たとえば、成形機に取り付けたマグネットセンサーでプレス回数を取ったり、組み付け機のシーケンサーからエラーコードを取得したり。BIツールを使って、現場の要望に合わせた画面も自作していました。
ただ、センサーや機器の数が増えるにつれて、仕組みの保守やデータ分析の負担がどんどん増えていきました。環境を整えることに時間と手間がかかってしまい、改善活動にまで手が回らなくなっていたのです。
しかも、製造現場だけを見える化すれば十分というわけではありません。現場で得たデータは、経営層にも伝わる形で見せていかないと、本当の意味での全体最適にはつながらない。そう考えたときに、標準機能で全体をカバーできる仕組みじゃないと難しいと感じました。
そこでいくつかの選択肢を検討し、我々が選んだのがマクニカの「DSF Cyclone」でした。現場が必要とする稼働状況や不良率だけじゃなくて、経営判断に使えるような指標──たとえば設備総合効率といったデータまで一貫して可視化できる。それが一番の決め手でした。
従来は稼働率とか可動率は見ていましたけど、それだと製品の質とか歩留まりの部分が見えにくい。設備総合効率を“共通の物差し”にすることで、品種や工程の違いを超えて、生産性を横断的に比較できるようになります。

太田様:クラウド環境を使うことも検討しましたが、初期費用や保守体制、自社内での柔軟な運用を考えると、オンプレミスで内製化する方が現実的だと判断しました。
それに、サーバーライセンスだったというのも大きかったですね。ユーザー数に縛られず、部門を超えてメンバーが一緒に同じ画面を見ながら改善を進められる。それが“全体最適”を目指す上での必須条件だったと思います。

村瀬様:スピード感も重要でした。ゼロからフルスクラッチで仕組みを作っていたら、何年かかるか分かりません。日々の業務の中で改善を進めるには、すぐに始められて、すぐに結果が出せることが必要です。そういう意味でも、パッケージ導入のスピード感は、我々にとって現実的な選択肢でした。

DSF Cyclone活用事例紹介動画

東郷製作所様におけるDSF Cyclone活用の様子は、実際の現場映像とともに、以下の4つのケースに分けて動画でご覧いただけます。

CASE1:フロア朝礼

製造では、現場モニターを活用して朝礼で前日の異常停止や不良データを共有。傾向を早期に把握し、対策につなげる様子をご紹介します。

CASE2:リアルタイム監視

製造では、ラインごとの進捗状況&異常発生状況をモニターで可視化。リーダーが遅れに対し、生産性向上を図る取り組みをご紹介します。

CASE3:生産効率分析

生産技術では、日ごとの生産数と設備総合効率を可視化。改善ポイントを迅速に特定し、継続的な改善につなげる取り組みをご紹介します。

CASE4:実績レポート

生産管理では、実績データを自動収集し、報告書作成までを自動化。業務効率化と正確な意思決定を支える仕組みをご紹介します。

現場を“つなぐ”共通指標──全体を見渡せる工場へ

横串のKPIが、感覚頼りだった現場に“根拠”をもたらした

村瀬様:最初にDSF Cycloneを導入したのは、主力製品であるホースクランプの組付工程でした。設備のPLCからデータを収集し、ラインごとの時間稼働率、性能稼働率、良品率などを可視化することで、工程の稼働状況や停止要因を一目で把握できる環境を整えました。まずは「現場で何が起きているのか」を、誰もが同じ“物差し”で見られるようにすることが必要でした。共通のKPIを定義できたことで、ようやく横串を通した議論ができるようになったと感じています。

とくに大きかったのは、不良や停止の傾向を日次で見られるようになったことです。今までは、何か異常が起きても、後からまとめて振り返るしかなかった。それが、今では「その日」に起きた異常としてすぐに把握できるので、改善までのタイムラグが縮まり、リアルタイムで対応できています。
改善活動が“感覚”から“根拠”に基づくものに変わってきた実感がありますね。データを基にした会話が現場で自然と行われるようになってきましたし、数字に裏打ちされた改善提案も増えています。全体最適を目指すなら、工程ごとの“つながり”をデータで見ていくことが欠かせません。これまで部分的に進めてきた取り組みが、ようやく工場全体に広がり始めています。

最近では、「廃棄が目に見えて減ってきた」という声も現場から出てきました。数値化されていなかった“もったいなさ”がようやく見えてきて、最小限の資源で最大限の成果を出そうという意識が、現場に浸透してきていると感じています。
今まで「なんとなく多いな」と思っていたロスも、数値で見えるようになってきたことで、議論が進むし、実際の改善にもつながってく。こうして、数字が単なる報告のためじゃなく、“次に進むための材料”として機能し始めているのは、すごく大きな変化ですね。

提案・改善・定着を一緒に進めるパートナー

マクニカの存在が、“共通の物差し”を育てた

太田様:DSF Cycloneの導入では、単にシステムを整えるだけでなく、「どう現場に定着させるか」という観点での支えが必要でした。そこを一緒に考えてくれたのが、導入パートナーとしてのマクニカです。
最初のフェーズでは、ダッシュボードの構成や表示内容について、何度も意見交換を重ねながら作っていきました。現場の反応を見ながら、「こうしたらもっと見やすくなるのでは」とすぐに提案してくれるスピード感は本当にありがたかったです。改善活動を進めるなかで、マクニカが複数パターンのダッシュボードを用意して、実際に現場で効果を検証する取り組みなども行いました。こうした対応が、結果的に「共通の物差し」を作る土台になっていったと感じています。
それと、拠点を超えた展開を考えたときに、マクニカの“先回り力”はとても心強かったです。現場の目線と経営の視点、その両方を持って、「ここに課題がありそうですよ」といった提案を先回りして出してくれる。我々がまだ気づいていないようなニーズを言語化してくれる存在は、ただのベンダー以上の価値があると思っています。

また、導入を進めるうえで欠かせないのが、社内の意識づくりです。その点でもマクニカの存在は大きかったですね。会議に一人入ってもらうだけで、社内の進み方が全然違う。外部の目線が入ることで会話に説得力が増しますし、デジタル推進部だけでは出せなかったスピードが生まれました。

スマート工場を全国に、そして世界へ

東郷製作所が描く“未来のものづくり”のかたち

村瀬様:現在は、ホースクランプの組付工程を皮切りに、前工程への展開を進めている段階です。2027年までには、国内4工場すべてでDSF Cycloneによる可視化を完了させる計画が進んでいます。あわせて、改善に向けた“議論の文化”も少しずつ現場に根づいてきました。今では、ただ指示を待つのではなく、「なぜ止まったのか」「どう対策すべきか」を、自分たちでデータを見ながら振り返るようになってきています。現場の中に、少しずつ“考える力”が育ち始めている実感があります。

太田様:将来的には、工場間のデータ連携やAI活用による生産計画の最適化、歩留まりの向上、在庫削減といった分野にも領域を広げていきたいと考えています。現場の感覚だけではなく、AIやデータの力を使って効率のよいものづくりを実現したい。国内外の拠点ともつなげて、もっとダイナミックに展開していけたらと思っています。

そしてその先にあるのが、“日本のものづくりの再興”です。海外に押されがちな今だからこそ、愛知県・東郷町から「日本の製造業はまだまだ強いぞ」と世界に向けて示したい。
製品の性能だけではなく、仕組みや現場力でどう勝負していくか──。そうした視点が、これからのものづくりに求められていると感じています。
東郷製作所としても、人に優しく働きやすいスマート工場化の取り組みを通じて、「これからの日本らしいものづくり」のかたちを、現場から問い直していきたいと考えています。
DXの力で、もう一度日本がものづくりで輝けるように──その挑戦を、マクニカと一緒に成し遂げていきたいですね。

会社ロゴ

株式会社 東郷製作所様

事業内容
自動車のエンジン、トランスミッション、ブレーキ、内外装、ハイブリッドシステムに使用される自動車部品などの開発・設計、製造・販売
創立
1947年
従業員数
870名
ウェブサイト
https://www.togoh.co.jp/

PRODUCT/SERVICE

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