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DXの進め方 DSF Cyclone

「DSF Cyclone」で“感覚”から“データ”へ
やまびこ流スマート工場の実現

無駄を削ぎ落とし、競争力を高める──YAPSが導いた新たな一歩

──株式会社やまびこ様

屋外作業機械の総合メーカーとして、グローバルに事業を展開する株式会社やまびこ。草刈機やチェーンソーといった2サイクルエンジンを搭載した製品群は、森林・農業・緑地管理の分野において欠かせない存在となっています。中でも、横須賀事業所はこうしたエンジンの中核を担う「基幹工場」として、鋳造から機械加工、表面処理、そして組み立てまでを一貫して手がける、同社の心臓部とも言える存在です。
アルミ素材からエンジンが組み上がる全工程を自社で完結できる体制は、国内でも稀有であり、同工場ならではの強みとなっています。排ガス規制に対応した独自の加工技術、鋳造工程までを内製する希少な生産体制は、国内外の顧客からも高く評価されています。

その横須賀事業所で、いま大きな変革が進行しています。キーワードは「YAPS」。YAPSYamabiko Production System)とは、「無駄の排除により経営効率の向上を図る」ことを目的とした、やまびこ社独自の全社的な生産方式であり、長年にわたって同社の改善文化を支えてきた中核的な取り組みです。今回の変革は、このYAPSをデジタル技術の力で次のステージへと進化させる試みになります。

本プロジェクトの参加メンバー

株式会社やまびこの方々

  • 生産本部 横須賀事業所 事業所長代理 櫻 賢二様
  • 生産本部 横須賀事業所 生産技術課 課長 山浦 敬和様
  • 生産本部 横須賀事業所 生産技術課 野方 慎一様
  • 生産本部 横須賀事業所 機械課 課長 岩谷 栄二様
  • 生産本部 横須賀事業所 機械課 チームリーダー 遠藤 慎様
  • 生産本部 横須賀事業所 機械課 石渡 小百合様
  • 生産本部 生産技術部 技術開発課 戸谷 峻汰様

株式会社マクニカ

  • デジタルインダストリー事業部プロフェッショナルサービス第2部第3課 課長 影山 優太
課題
  • 感覚に頼った現場判断によるカイゼン活動の限界
  • 手作業によるデータ集計の高負荷と非効率
  • 全社的な横展開を阻むリソースと仕組みの不足
目的
  • 原価低減に直結する、データに基づく改善活動の推進
  • YAPSの理念に沿った、継続可能な改善文化の強化
  • 現場から経営までをつなぐ共通言語としてのデジタル基盤構築
効果
  • 感覚からデータ起点への意思決定へ転換
  • 作業者の意識向上と“やりがい”の醸成
  • 海外拠点も視野に入れた、スマート工場化の土台構築

現場主導のカイゼンは、限界に差しかかっていた

人手と勘に頼った改善活動──仕組みとしての限界が見え始めていた

戸谷様:きっかけは2021年の全社方針で「ITインフラ整備」が打ち出されたことでした。うちの横須賀事業所でも、それを受けてデジタル化を本格的に進めることになりました。
それまでもEXCELベースで日報を集計したり、段取り時間を手で計測したりと、現場が主導して見える化の取り組みは進んでいました。

ただ、その先――つまり、データをしっかり分析して活用するところまでは、人手も知識も追いつかなくて。ライン数も多いので、すべてを横展開していくには限界がありました。自前でツールを作って運用はしていましたが、現場の負担が大きく、このままでは持続可能な仕組みにはならないと感じていました。

IT活用の目的は、利益の源泉を見つめ直すこと

“原価低減”という本質課題に向き合い、改善の武器としてデジタルを選んだ

戸谷様:私たちがIT活用を進める中で、もっとも意識していたのは「原価低減」というテーマでした。製造業が国内で利益を出し続けるには、人手不足やコストの上昇といった構造的な課題と正面から向き合わないといけません。
そのためには、現場の改善活動にITの力を掛け合わせるしかない。単に作業を効率化するという話ではなく、もっと根本的な経営課題の解決を目指す必要がありました。

YAPSと親和性の高い仕組み──導入の決め手となったのは“共通言語”だった

企業文化と方向性が一致したことで、DSF Cycloneの導入がスムーズに進んだ

戸谷様:当時、社内では「YAPS」とデジタルツールの親和性について議論が進んでいました。YAPSというのは、「Yamabiko Production System」の略で、無駄を徹底的に排除して経営効率を上げていこうという、やまびこ独自の全社活動です。
そのYAPSの思想と、マクニカのDSF Cycloneが掲げる「データを起点に改善を自走させていく」という方向性が非常に似ていました。細かな機能がどうというより、目指す姿が同じだった。それが大きかったですね。
単なるITツールの導入ではなく、私たちが会社として大事にしている「改善文化」と親和性のある仕組み。そこが、DSF Cycloneを選んだ一番の理由です。

DSF Cyclone 活用事例紹介動画

やまびこ様におけるDSF Cyclone活用の様子は、実際の現場映像とともに、以下の3つのケースに分けて動画でご覧いただけます。

CASE1:リアルタイム監視

製造では、ライン横のモニターで、生産量や設備状態をリアルタイム表示。異常を即座に発見し、迅速な改善に繋げる様子をご紹介します。

CASE2:生産効率分析

生産技術では、標準時間と実績時間の差を分析し、無駄な工程を特定。データに基づいた効率的な業務改善と、生産性向上への取り組みをご紹介します。

CASE3:基準時間分析

生産管理では、製品ごとの基準時間と実績を比較分析し、生産能力を可視化。データに基づいた標準時間の見直しと、効率的な改善活動をご紹介します。

現場の判断が、“データで裏付けられる”体制へ

感覚に頼っていた意思決定に、数値という確かな根拠が加わった

山浦様:以前は「このライン、なんか調子が悪いな」みたいに、感覚を頼りに現場判断していました。もちろん、紙ベースでの集計はやっていましたが、あくまでアナログで、どこか決め手に欠けていました。そこにDSF Cycloneで可視化されたデータが入ってきたことで、「やっぱり数字でもそう出ているね」と、裏付けが取れるようになった。これは大きな変化だったと思います。

戸谷様:いま、横須賀事業所では複数のラインでDSF Cycloneを導入していて、さまざまな視点から日々の生産活動を見える化できるようになっています。中でも特徴的なのは、「生産計画と実績の差異」と「設備の停止情報」をひと目で把握できる仕組みですね。
それに加えて、単位時間あたりの生産量を表示するボードや、各設備のリアルタイム稼働状況、不良の記録と分析を行う画面もあって、活用の幅は着実に広がってきています。

現場に生まれた“気づき”と“やりがい”

入力作業の意味づけと対話の積み重ねが、行動と意識を変えていく

戸谷様:ただ、データがあるだけで現場が変わるかというと、そう簡単ではないですよね。やっぱり大事なのは、それをどう活用するかという視点だと思います。
実際、導入当初は入力作業の定着に苦労しました。製造指図ごとの着工・着完、不良の記録、停止理由の入力などはシステム的に必要な情報なのですが、すべてを現場に求めるのはなかなか難しい。
だからこそ、マクニカの支援を受けながら、画面をできるだけシンプルにして、クリックで選べるようにしたり、入力の負担を減らす工夫を重ねていきました。それと同時に、「この入力がこういう改善につながった」とか、「これを見てこんな仮説が立てられた」といった対話も地道に続けていきました。そうやってやらされている入力ではなく、役立つデータとして受け止めてもらえるように、少しずつ空気を変えていきました。

あるとき、作業者の方が「今日は目標超えましたよ!」って笑顔で報告してくれたことがあって。別の現場でも、「あの工程の停止、多いんじゃないか?」って、データから仮説を立ててくれるリーダーが出てきたりもしました。
会話のきっかけが感覚じゃなくてデータになった。その変化は小さいようでいて、すごく大きな前進だったと思っています。
この変化の背景には、やっぱり「成果」がちゃんと見えてきたっていうことがあると思います。DSF Cycloneの導入で、改善活動の根拠になるようなデータが残せるようになって、現場と管理者が共通の視点を持てるようになりました。以前は「頑張っているつもり」だったのが、今では「数字で見て分かる」。だから「どうせやっても変わらない」っていう諦めじゃなく、「やった分だけ結果が出る」っていう納得感が、現場の中に育ってきたように感じています。

改善って、すぐに成果が出るものではないですけど、見る習慣を足がかりに、考える文化が少しずつ根づいてきている。そんな実感がありますね。

導入を“現場の現実”に変えた、マクニカの伴走支援

定着・運用・育成まで寄り添い、導入を“成果”へとつなげた支援体制

戸谷様:導入のときに一番不安だったのは、やっぱり現場の作業者がちゃんと入力してくれるかどうか、というところでした。ルールや運用の定着って簡単ではないですよね。たとえば、着工・着完の入力タイミングをどこにするか、誰がどの工程でやるか──そういった細かいところまで現場とすり合わせが必要になるので、手間も時間もかかりました。

山浦様:最初は手打ち入力が多くて、これじゃちょっと大変だなと思っていましたが、その話をしたらすぐにマクニカがクリックで選択する方法に変えてくれて。入力のハードルが下がったことで、だいぶ継続しやすくなりましたね。

 戸谷様:それに加えて、マクニカにはデータの見方伝え方の部分も丁寧に教えていただきました。私たちがちゃんと理解して、扱えるようにならないと意味がないので、知識がない中でも相談すれば何とかなるという安心感があったのは大きかったですね。ちょっとしたことでも聞きやすくて、いつも丁寧に対応してくれた。あの関係性が、何よりありがたかったです。

日本の製造業が進むべき未来へ──スマート工場構想の現在地

省人化と競争力強化を見据え、国内外をつなぐデジタル基盤づくりへ

中舘様:スマート工場化って、どこかで完成するものじゃないと思っています。むしろ、止まらずにやり続けることで少しずつ形になっていく。今はまさに、そんな段階に入っていると感じています。我々が目指しているのは、省人化された高効率なものづくりです。それを実現するために、現場の改善にデジタルの力を掛け合わせていく──その共通認識が、ようやく社内にも根付いてきたところです。

デジタル化って、単なるIT投資じゃないんですよ。現場の情報をつなげて、経営や営業、物流といった他の領域とも連携できるようにする。そうすることで、会社全体のオペレーションスピードが上がるし、判断の質も変わってきます。海外にも視野は広がっています。うちの製品って、北米をはじめとした海外市場でエッセンシャルな存在なんですね。コロナのときも供給が止まることなく、社会的に必要なものとして扱われていた。だからこそ、安定して届け続けるという責任があると考えています。そのためには、地域に根ざした地産地消型の生産体制が不可欠で、各拠点をしっかり見渡せる見える工場が必要です。DSF Cycloneによる工場のデータ可視化は、その第一歩だと思っています。

マクニカには、単にシステムを提供するだけでなく、この全体像の中で「マクニカの技術がどう貢献できるか」を一緒に考えてほしいと思っています。国内の工場と海外拠点をつなぐ──そういったチャレンジの中で、これからも伴走していただけたら嬉しいですね。

会社ロゴ

株式会社やまびこ様

事業内容
小型屋外作業機械等、各種機械の製造および販売
設立
2008年12月1日
従業員数
3,070人(2024年12月期連結)
ウェブサイト
https://www.yamabiko-corp.co.jp/

PRODUCT/SERVICE

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