格子線図(Lattice Diagram)

格子線図は、近端と遠端における反射を繰り返し用いる方法です。準備として、図1 の回路図における近端と遠端の反射係数を求めておきます。R1 = 22 Ωは、ほぼ 12 mA ドライバです。(『特性インピーダンスとドライバの駆動能力』を参照ください。)

近端の反射係数 r1 は、r1 = (R1-Z0)/(R1+Z0) = (22-50)/(22+50) = -0.389 です。遠端は開放なので、反射係数は r2 = 1 です。

Article header 122061 sc43 fig1  1
図1 回路図

t = 0

ドライバの信号が変化する瞬間です。分布定数線路は反射が戻ってくるまでは、特性インピーダンスの値を持つ純抵抗と見えます。(『特性インピーダンスって何?』も参照ください。)したがって、ドライバ端の電圧はドライバの出力抵抗 R1 と特性インピーダンス Z0 との分圧 v0 = Z0/(R1+Z0) = 0.694 となります。

図2 が格子線図です。格子は英語で Lattice というので、Lattice Diagram といいます。初期値を 図2 に記載します。

Article header 122061 sc43 fig2  1
図2 格子線図

t = τ

この電圧が、t = τ で遠端に到達します。(τ:ギリシャ文字子文字のタウ。)遠端における反射係数 r2 = 1 なので、そのまま反射します。その結果、遠端の振幅は 0.694 の 2倍の 1.389 となります。なお、数値は小数点以下 4桁を四捨五入しています。

t = 2τ

遠端からの反射波が、t = 2τ で近端に到達します。近端における反射係数 r1 は -0.389 なので、0.694×(-0.389) = -0.270 が近端における反射波です。近端における振幅は、最初の 0.694 に遠端からやってきた 0.694 と、反射波の -0.270 の和の 1.119 となります。

t = 3τ

近端からの反射波が、t = 3τ で遠端に到達します。

これ以降は、上の繰り返しです。

表1 は、これをエクセルで計算した例です。上段に数式を、下段に計算結果(数値)を表します。

Article header 122061 sc43 tab1  1
表1 格子線図のエクセル

B1 は特性インピーダンス Z0、B2 はドライバの出力抵抗 R1、この場合は、22 Ω でおよそ 12 mA ドライバを表します。B5 は立ち上がり時のドライバの振幅、B6 と B7 は近端と遠端における反射係数です。D列から G列までは、図2 をエクセルで表したものです。文字の色を対応させているので、両者を比較すると分かりやすいと思います。

時刻と振幅

図3 に、上に述べた時刻と振幅とをプロットします。t = 0 で 0.694(近端)、t = τ で 1.389(遠端)、t = 2τ で 1.119(近端)、t = 3τ で 0.849(遠端)とプロットします。波形を表すには、図3 の破線のように点をつなぐ必要があります。

Article header 122061 sc43 fig3  1
図3 時刻と振幅

I列から N列にその方法を示します。D2 と E2 を J3 と K3 に、D6 と E6 を J5 と K5 に対応させるために、Offset 関数を用います。元のデータが D2, D6, ... と 4行おきに現れるので、I列にそのインデックスを準備します。例えば、J3 は D2 から 0 だけオフセット、J5 は D2 から 4 だけオフセットという意味です。D2 の行を絶対参照に変えておくとコピーが容易です。インデックスの I列は、列を絶対参照に変えます。したがって、J3 は =OFFSET(D$2,$I3,0) となります。( ) 内の 3番目の引数は Offset 関数の列のオフセットを表しますが、この例では列のシフトはないので 0 です。

K3 も同様に E2 からのオフセットなので、=OFFSET(E$2,$I3,0) です。列のオフセットを用いれば、=OFFSET(E$2,$I3,1) としても同じ結果が得られます。3行, 5行, ... の 1行上に時刻tは下の行を引用、振幅は上の行を引用します。J, K, M, N列をプロットした結果を 図4 に示します。これで波形を表すことができます。

Article header 122061 sc43 fig4  1
図4 点をつないだグラフ

効率的なエクセル作成方法として、B7 は B6 をコピーして貼り付け(コピペ)します。D ~ G 列は繰り返しなので、D5 ~ G8 を D9 にコピペ、さらに D13 に 4行ごとコピペすると繰り返し反射を解析することができます。I ~ N 列は、I3 ~ N4 を I5 にコピペ、さらに I7 に 2行ごとにコピペするだけです。

図5 に、R1 = 11 Ω の場合に、19τ まで計算した結果を示します。反射の回数が多くなっても単純にコピペするだけなので、簡単に求めることができます。

Article header 122061 sc43 fig5  1
図5 19τまで解析した結果

おすすめ記事/資料はこちら

豆知識:Offset関数
豆知識:相対参照と絶対参照

======================================

碓井有三のスペシャリストコラムとは?

基礎の基礎といったレベルから入って、いまさら聞けないようなテーマや初心者向けのテーマ、さらには少し高級なレベルまでを含め、できる限り分かりやすく噛み砕いて述べている連載コラムです。

もしかしたら、他にも気になるテーマがあるかも知れませんよ!
こちら から他のテーマのコラムも覗いてみてください。