フレッシャーズにはフレッシャーズの時にしかない特権があります。

まだ知らないことは恥ではありません。何でも聞けばよいし、先輩も教えてくれます。ただ、いつまでも聞くばかりでは進歩しません。まだこの特権があるうちに、いろんなことを覚えましょう。

今回は、『ダンピング抵抗~その2』です。

ダンピング抵抗~その2

ダンピング抵抗は、簡単な計算で求めることができます。この計算方法を知らないと、“過去の設計がこの値を使っていた” とか、“何となく” で決めてしまいがちですが、それはエンジニアとしてはやってはならない手法です。ダンピング抵抗に限らず、回路図に抵抗値やキャパシタの値を書き込む際には、なぜこの値になっているのか?を考えるようにしてください。決め方がわからなければ、決め方を勉強するようにしてください。

フレッシャーズ:ダンピング抵抗~その1』の 図1 は、(a) より (b) の方がよい設計だと述べました。この波形を図ではなく、言葉で人に伝えるときにはどのように説明すればよいでしょうか。

違いとしては、まず、最初の振幅の大小とその次の振幅の落ち込み、すなわち、跳ね返りの違いが目につきます。最初の振幅のことをオーバシュート(Overshoot)(脚注1)といいます。「通りすぎる」というような意味です。オーバシュートが大きいと跳ね返りも大きくなります。言葉での説明の例として、(a) の波形はオーバシュートが 64 %、その跳ね返りが 40 %、(b) の波形はオーバシュートが 20 %、跳ね返りが 4 % と言えばよいでしょう。オーバシュートを気にすることが多いですが、本当に問題なのは跳ね返りです。跳ね返りが大きいと、レシーバのスレッショールド電圧よりも下回って、誤動作する可能性があります。一般的な CMOS IC の入力のスレッショールド電圧は 30 ~ 70 % が多いので、(a) の場合には跳ね返りが 40 % なので、誤動作する可能性があります。それでは、跳ね返りを 30 % に抑えるためには、ダンピング抵抗をどのように設定すればよいのでしょうか。

実は、オーバシュートと跳ね返りとの間には、図1 に示すように、跳ね返り=オーバシュートの 2乗という関係があります。興味のある方は、図2 記載の式からこの関係を導き出してください。逆にいうと、オーバシュートは跳ね返りの平方根なので、オーバシュートを 30 % の平方根の 55 % に抑える必要があることがわかります。実際にはこのようなギリギリの値ではなく、5 ~ 20 % 程度に設定します。

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図1 オーバシュートとその跳ね返り

設計する上では、部品や基板のバラツキや電源・温度特性も考慮しなければならないので、ある程度の実用的にはこの程度のオーバシュートを設定します。

前置きが長くなりましたが、オーバシュートとその跳ね返りの式を 図2 に示します。R1 はドライバの出力抵抗で、24 mA ドライバの場合には 11 Ω 程度、12 mA ドライバなら 22 Ω 程度です。

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図2 遠端の電圧

図2 のように特性インピーダンスが 50 Ω でオーバシュートを 10 % に設定すると、R1 は 41 Ω になります。したがって、ドライバの出力抵抗が 11 Ω なら、ダンピング抵抗をその差の 30 Ω に選べばよいことがわかります。12 mA ドライバの場合にはダンピング抵抗の値は、41 - 22 = 19 Ω(脚注2)となります。ドライバの駆動能力やボードの特性インピーダンスがこれらと異なる場合には計算し直す必要がありますが、計算した結果をチャートとして求めておくと便利でしょう。スペシャリストコラムの『もっと簡単に決めるダンピング抵抗の値』に記載しているので、参照ください。

脚注1
立ち下がり波形の場合にはこの反転波形で、一般的にアンダーシュート(Undershoot)といいます。ただ、アンダーシュートは、英語の本来の意味では目標に到達できないことをいうので、負のオーバシュートといった方がいいかもしれません。



脚注2
抵抗やキャパシタの値は世界的に標準化された値の中から選ぶ必要があります。1桁を対数目盛りで 24 に分けた E24 系列がよく用いられます。19 Ω の場合にはその近くの値として、18 Ω と 20 Ω があります。

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