今回は、オンセミ社SiC MOSFET製品のスパイスモデルを、LTspiceを使って回路シミュレーションする方法を紹介します。

最初にオンセミ社SiC MOSFET製品のスパイスモデルのダウンロード、インストール方法を紹介し、

最後に光アイソレーター不要のマイクロパワー絶縁型フライバック・コントローラー LT8316を用いて、回路シミュレーションをおこないます。

もしLTspiceを今から始められる方でしたら、以下の一覧から「基本編」を見ることをお勧めします。 

LTspiceを使ってみようシリーズ 一覧はこちら


また、基本的な回路の書き方から実行方法までを動画で見たいという方がいましたら、個人情報入力不要のオンデマンドセミナーがありますので、ご興味がありましたらぜひご覧ください。セミナーの詳細資料に関してもアンケートご記入の方に提供しています。

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SiC MOSFETスパイスモデルのダウンロード

オンセミ社では、SiC MOSFET製品のスパイスモデルとしてPSpiceモデル、SIMetrixモデル、LTspiceモデルの3種類のスパイスモデルを公開しています。

公開されているスパイスモデルは、以下のリンクからダウンロードできます。

https://www.onsemi.com/design/resources/design-resources/models?category=18460

LTspice用のスパイスモデルは、Document TitleLTspice(もしくはltspice, LTSPICE)と記載されているものを使います。

今回は、900V耐圧のSiC MOSFETのスパイスモデルを使用します。

Document Titleの ”ONSEMI SiCMOSFET 900 LTspice Model”をクリックすると、自動的にスパイスモデルが入ったZipファイルのダウンロードが開始されます。

スパイスモデルのインポート

ダウンロードしたZipファイルを解凍すると、フォルダーの中には以下のファイルとフォルダーが存在します。

・“Symbol”フォルダーSiC MOSFETの回路図シンボルファイルが格納されています。
・“ONSEMI_SiCMOSFET_900_ltspice.txt”SiC MOSFETの電気的特性を示すスパイスモデルです。

このONSEMI_SiCMOSFET_900_ltspice.txtは、LTspiceでのみ使えるように暗号化されています。

このモデルを使用するために、次の手順を実行してください。


1. LTspiceディレクトリー(C:\Users\(ユーザー名)\Documents\LTspiceXVII\lib\sub)”ONSEMI”フォルダーを新規作成します。
  (フォルダー名は任意に設定可能です。)


2. ダウンロードした“ONSEMI_SiCMOSFET_900_ltspice.txt”を、ステップ1で作成した”ONSEMI”フォルダーに格納します。


3. LTspiceディレクトリー(C:\Users\(ユーザー名)\Documents\LTspiceXVII\lib\sym)”SiC MOSFET”フォルダーを新規作成します。
(フォルダー名は任意に設定可能です。)


4. ダウンロードした”Symbol”フォルダーに格納されている回路図シンボルファイルを、作成した”SiC MOSFET”フォルダーに格納します。

5. “SiC MOSFET”フォルダーに格納した回路図シンボルファイルをテキストエディターで開きます。

6. テキストエディターで開いた回路図シンボルファイルに“SYMATTR ModelFile ONSEMI\ ONSEMI_SiCMOSFET_900_ltspice.txt”と記載し、上書き保存します。

  (ここの”ONSEMI\~”はステップ1で作成したフォルダー名にします。)

      この作業は、使用する回路図シンボルファイル、もしくはダウンロードした全てのオンセミ社SiC MOSFET回路図シンボルファイルにおこないます。

7. LTspiceを起動します。

8. 新しい回路図エディター画面を開き、”Component”ボタンをクリックします。

9. ダウンロードしたSiC MOSFETのモデルが存在していることを確認し、使用するモデルを選択し”OK”をクリックします。


10. LTspiceの回路図エディターでシミュレーション回路を作成しシミュレーションが実行されることを確認します。


これでオンセミ社SiC MOSFETのインポートは完了です。


実際にインポートしたSiC MOSFETを、LT8316のサンプル回路図に組み込んでシミュレーションをしてみましょう。

シミュレーションの実行

この回路で使用されているパワースイッチ M1 STW11NM80 を、今回インポートしたSiC MOSFETに置き換えます。

ただし、SiC MOSFETのゲート駆動電圧はシリコンMOSFETと違い、高いゲート電圧(+18V)とマイナス電圧(-5V)が必要です。
そのため、SiC MOSFETのゲート駆動用回路を別に追加します。

回路シミュレーションの結果、回路が正常に動いていることが確認できました。

今回検証したLTspiceデモ・ファイル


今回実施したLT8316を使用したシミュレーションファイルが格納されています。

このデモ・ファイルにはオンセミ社SiC MOSFETのモデルは含まれていませんので、そのまま実行しても「モデルが無い」と言うエラーが発生します。
今回紹介したオンセミ社SiC MOSFETのスパイスモデルのインポートをお試しいただいた後に、シミュレーションを実行するようにしてください!

最後に

上記のように各社がLTspice向けのスパイスモデルを公開しており、それを使って簡単に回路検証をできます。

また、今回紹介したオンセミ社のSiC MOSFET製品の概要とその他お役立ち情報は以下のページで紹介しています。

https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/manufacturers/onsemi/





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