EMIを抑えるには?
車載アプリケーションにおいて、電源のEMI低減は重要な課題の一つです。電源のスイッチングノイズのAM滞干渉や、車載EMI規格CISPR25 Class5などに適合するためにはEMIの発生要因を最小限に抑えることが重要です。
一般的な降圧スイッチング・レギュレーターでは、図1の緑色で示されるホット・ループと呼んでいる高di/dtの電流が流れる部分が最もEMIに影響を与えます。もし、ホットループの基板面積をゼロまで削減でき、インピーダンスがゼロの理想的な入力コンデンサーを入手できればEMIの影響はなくなりますが、現実の基板では配線や部品の影響をゼロにすることはできません。

ホットループ(High di/dt ループ)と入力コンデンサーの関係
LT8609を参考にEMIの緩和について考察してみます。LT8609のようにFET内蔵タイプの場合、ホット・ループ内にある入力コンデンサーの配置が最も重要です。
入力コンデンサーは、ホット・ループを小さくするためにICと同一面で、かつICの入力ピン直近に配置します。また、配線の寄生インダクタンスなどを最小限に抑えるため短く、太いパターンで接続する必要があります。ビアを介してICと異なる面に入力コンデンサーを配置すると、ビアのインダクタンス成分によりホット・ループ長が長くなるため、必ずICと同一面に配置してください(図2-(b))。同様の理由により、サーマルリリーフも使用しないでください。

LTspice使用して入力コンデンサーの影響を確認する
アナログデバイセズ社が提供しているLTspiceを用いることで、入力コンデンサーがIC直近に適切に配置されている場合と、適切に配置されていない場合の違いを、簡易的に確認することができます。
図3は、入力コンデンサーが適切に配置されていることをシミュレーションした結果です。
入力コンデンサー(C6)とLT8609の間に寄生インダクタンスが無い状態でLTspiceを実行しました。
パターンの寄生インダクタンスがない理想的なトレースの場合、入力元のV(input_power)とIC直近の電圧Vinが、ほぼ同じであることが確認できます。
※ 入力コンデンサー(C6)とLT8609の間に寄生インダクタンスがあることが問題であることを理解するために、異常時に追加する3nHのインダクタンスを念のため入力部に追加してあります。

図4は、入力コンデンサーが適切な配置ではないことをシミュレーションした結果です。
入力コンデンサーとICピンの間に、2mm幅で6.5mmの長さで配線があった場合を想定して寄生インダクタンス成分として3nHを配置しています。
入力電圧波形 V(in) を測定すると、入力コンデンサーの配置が適切ではない場合はスパイク電圧が発生していることが確認できます。
この結果からわかる通り、入力コンデンサーをIC直近に配置に適切に配置することが重要とわかります。

コンデンサーの周波数特性と配置について
入力コンデンサー
多くのスイッチング・レギュレーターで入力コンデンサーに低ESR、ESLのセラミックコンデンサーが使用されています。セラミックコンデンサーには周波数特性があり、容量が小さいものほど共振周波数が高くなるため、容量の大きいコンデンサーを組み合わせて使用することで、よりEMIを緩和することが可能です。
この組み合わせの入力コンデンサーの配置については、図2-(b)を参考にしてください。ICに近い配置を小型の高周波用のコンデンサー遠い方を大きめの低周波用のコンデンサーとしてください。。また、セラミックコンデンサーには温度特性、DCバイアス特性などの注意点もありますので、部品選定の詳細は各コンデンサーのデータシートをよくご確認ください。
出力コンデンサー
入力コンデンサーのように高di/dtの電流は流れませんが、出力コンデンサーにはリップル電流が流れ、インダクター電流と出力コンデンサーのESRに応じたリップル電圧が発生します。このリップルを含む出力変動が設計ターゲットを満たすようにリップル電圧を抑える必要があります。
入力コンデンサーと同様にパターンのインピーダンスの影響を最小限にするためにインダクター直近に配置し、低ESRのセラミックコンデンサーを使用することでリップル電圧を最小限に抑制することが可能です(図2)。詳細は、各製品のデータシートをご確認ください。
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本記事では、車載アプリケーションで使用するDCDC入出力のパスコンの位置(コンデンサの種類)の重要性について紹介をさせていただきました。詳細を知りたいという方は以下からお問い合わせください。
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