スイッチング・モードの各特長について

ADIの非絶縁DC/DCコンバータ製品では負荷の動作状況次第で、どのようなモードでスイッチングをおこなうかの設定が可能です(一部の製品では変更不可)。よって、お客様のアプリケーション、負荷駆動条件に応じて最適なスイッチング・モードで動作します。

今回紹介する方式は以下の3種類です。
 ・強制連続モード
 ・パルス・スキップモード
 ・バーストモード
基本的に定常状態と比較して、負荷電流が大幅に小さい状況で各モード間の差異が発生します。
大枠のイメージ波形、ならびにメリット・デメリットを以降で説明します。

強制連続モード

負荷電流に依存せず、インダクター電流がマイナス領域内でもスイッチングパルスを出力する。
 ・メリット
  
→インダクター電流に依存せず一定周期でスイッチングする。
   負荷応答特性が各モードの中で最も高速。
 ・デメリット
  
→軽負荷時の効率が他モードと比較して悪い

図1 軽負荷時のシミュレーション回路
図1 軽負荷時のシミュレーション回路
図2 軽負荷時のシミュレーション結果
図2 軽負荷時のシミュレーション結果

パルス・スキップモード

軽負荷時にインダクター電流が過多の場合、一定周期でスイッチング動作をオフ(パルスをスキップ)にする。
 ・メリット
  →強制連続モードよりも軽負荷時の効率が良い。
   バーストモード時よりも負荷応答特性が良い。
 ・デメリット
  →軽負荷時の効率面、応答特性面でNo.1ではない。
   スイッチング周波数が一定ではない領域が生じる。

図3 パルス・スキップモードのシミュレーション回路
図3 パルス・スキップモードのシミュレーション回路
図4 パルス・スキップモードのシミュレーション結果
図4 パルス・スキップモードのシミュレーション結果(定常状態におけるスイッチング周波数は2MHz設定)

バーストモード

軽負荷時において、出力コンデンサーの容量分のみで出力電圧をキープ。出力電圧が一定のスレッシュ(しきい値)を下回ったらスイッチをONする動作の繰り返し。IC内部も必要箇所以外はSLEEP
 ・メリット
  →軽負荷時の効率が最も良い。
 ・デメリット
  →応答特性が悪くなる(要説明)
   Vout_rippleが3つのモードで最も高い(≦10mVp-p)

図5 バーストモードのシミュレーション回路
図5 バーストモードのシミュレーション回路
図6 バーストモードのシミュレーション結果
図6 バーストモードのシミュレーション結果

性能

強制連続

Forced Continuous mode

軽負荷

Pulse Skip mode

軽負荷

Burst mode

軽負荷時の消費電流

X

LT8609Sでは数mA

LT8609Sでは2.5uA

負荷応答性

周波数低下

しない

負荷電流が減るとFsw1/Nで低下

負荷電流が減るとFswはリニアに低下

周波数低下

閾値

なし

低い

LT8609Sでは60mA程度

@12Vin, 3.3Vout, 2.2uH 2MHz.

高い

LT8609Sでは400mA程度

@12Vin, 3.3Vout, 2.2uH 2MHz.

なお、特にCISPRR 25などの要求がある車載アプリケーションでは、ノイズ観点においては「大きさ」と言うよりは、周波数低下が起きた周波数帯域でスペクトルが立つ可能性があるという点です。パルス・スキップ、バーストモードは上記に説明した通り周波数が変わるため、その帯域でのスペクトルが見える可能性はあります。

問題の有無はお客様の方で実機測定を行った結果を元にご判断頂く形となります。

重負荷時の動作のままで軽負荷になった際、効率低下を招くメカニズムは以下の通りです。

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