インダクターの磁気飽和について
電源回路に使用するインダクター選定時の注意点の1つに、インダクターの磁気飽和があります。インダクターの磁気飽和が発生すると、流れる電流が急上昇し磁気飽和を更に引き起こすことによりインダクタンス成分が急激に小さくなり、一気に電流が増加する現象を引き起こします。

インダクターが(磁気)飽和を起こした場合の問題点
モノリシック(パワーFET内蔵)スイッチング・レギュレーター電源ICの場合、内部に電流リミットの機能を持ちデータシート内で電流リミット値が規定されています。通常、インダクターが飽和していなければ、この規定値以上の電流が流れた場合ハイサイドのパワーFETをオフして電流制限を掛けます。
しかしながら、インダクターが飽和していると図1のように急峻に電流が増加するため、電流制限の制御が間に合わずICを破損させる可能性があります。そのため、多くの電源ICを使う設計者は、過負荷時も想定し電流リミット値より十分大きい飽和電流特性をもつインダクターを選定します。大きい飽和電流特性を持つインダクターは、電流を流すことができる太い配線のインダクターを必要とするため形状が大きくなり、インダクター小型化が難しくなり基板サイズが大きくなります。
アナログデバイセズ社のソリューション
アナログデバイセズ社のLT86xxシリーズは、高速ピーク電流モード・アーキテクチャーの採用により、出力が過負荷状態または短絡状態のときに、インダクターが飽和した状態での動作に支障なく耐えられます(図2のデーターシートより抜粋参照)。
このシリーズのデバイスは、On時間がnsオーダーと非常に短い時間までコントロール可能で過電流状態を高速に検出するコンパレーターを内蔵することにより、仮にインダクターが飽和したとしても安全に過負荷状態を検出することが可能になります。
これにより、過負荷状態を想定した大きなサイズのインダクターを選ぶことなく、アプリケーションの出力負荷要件に基づいてインダクターを選択でき、ソリューションサイズを最小限に抑える設計が可能となります。

最後に
インダクターを選定するには、飽和電流の規定を超えない電源回路設計が必要となり、形状が大きいインダクターを選定する必要が出る場合もあります。
アナログデバイセズ社は、この問題を回避し小型のインダクターを用いて小さな基板サイズで設計できるソリューションを提供しています。 ただし、インダクターには飽和電流の規定とは別に、自己温度上昇に基づく定格電流が規定されているので注意が必要です。電源ICとインダクター両方の特性を十分に理解して電源回路設計をすることが大切です。
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本記事では、アナログ・デバイセズ社のDC/DCコンバーターICがインダクター(L)を小さくできる理由(飽和時の応答性など)について紹介をさせていただきました。詳細を知りたいという方は以下からお問い合わせください。
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