車載アプリケーションの電源設計における+B接続の難しさ

車載の+B接続の難しさ

ECUの駆動電源となる車載バッテリーの電源ラインには、出力を大きく変動させる事象がいくつか存在します。
代表的なものとして、ロードダンプ、コールドクランク、逆接続、ジャンプスタートなどがあげられます。
より詳細は、アナログデバイセズ社の記事「Distilled Automotive Electronics Design 」をご参照ください。

図1  : 標準的な車載バッテリ電圧のトランジェント
図1 : 標準的な車載バッテリ電圧のトランジェント

ロードダンプは、充電中の車載バッテリーがオルタネーターから切断されたことに起因して発生するサージです。抑制されていない場合、100Vもの電圧が生成される恐れがあります。最新の車両では、十分なアバランシェ耐量の整流用ダイオードにより、35Vにクランプされていますが、それでも定常時の数倍の電圧が400m秒程度かかります。

ロードダンプのLTSPICEによる再現については、以下を参照ください。

出力変動が大きい車載バッテリに対応したSilent Switcherシリーズ

ジャンプスタートも、高電圧が発生するケースです。レッカー車で、2個のバッテリーを直列接続することで効果的にバッテリーを回復させる手法ですが、通常の2倍の28Vの電圧に数分間耐える必要があります。

一方、コールドクランクは、バッテリーやエンジンが冷えている時に、セルモーターを駆動させると、バッテリー電圧が大きく低下する現象です。LV124の定義では、3.2Vまで低下します。また、逆接保護として、ダイオードを使用した場合は、さらに電圧降下が発生します。

このように出力変動が大きい車載バッテリーに対応するためには、入力レンジの広い電源ICが必要になります。アナログ・デバイセズ社では、12Vバッテリーに対して42V耐圧、24Vバッテリーに対して65V耐圧の製品を幅広くリリースしています。図2は、低EMIを特徴としたSilent Switcherシリーズを、対応バッテリーと負荷電流を軸にマッピングしています。

図2 : 車載12V/24Vバッテリー向けSilent Switcherラインナップ
図2 : 車載12V/24Vバッテリー向けSilent Switcherラインナップ

また、コールドクランクに対応するために、初段に昇圧や昇降圧電源が必要な場合があります。LT8603は、昇圧、またはSEPIC型昇降圧用のコントローラーを持つ、クワッド出力の製品で、複数の電源系統が必要なシステムで、省スペース設計が可能です。

 

図3 : コールドクランク対応の昇圧/SEPIC型昇降圧用コントローラーLT8603
図3 : コールドクランク対応の昇圧/SEPIC型昇降圧用コントローラーLT8603

車載バッテリーの電源ラインに必要な理想ダイオード

車載バッテリーの電源ラインでは、バッテリーが誤って逆向きに接続されるケースも想定しておく必要があります。通常、これを保護するために、遮断用のダイオードを直列に配置します。しかし、ダイオードにより生じる電圧降下は、システム効率と入力電圧を低下させます。これを許容できないシステムでは、理想ダイオードと呼ばれるソリューションが有効です。

理想ダイオードは、Nch FETを制御し、電圧降下を小さく抑えて、理想的なダイオードのように動作させます。Pch FETで構成するのと比べ、電圧降下をより小さくできます。理想ダイオードの詳細は、以下参照ください。


また、外乱による影響で、バッテリー電圧にACリップルが重畳されてしまうことがあります。オルタネータの影響や、大電流負荷のスイッチングの影響です。ISO 16750LV 124では、最高周波数が30kHz、最大振幅が6Vp-pACリップルが想定されています。この場合、ダイオードを使用したのでは、十分なスピードで対応することはできません。

理想ダイオードのLT8672は、最高100kHzという高い周波数のゲート・パルスでFETを制御することで、ACリップルを除去することができます。

図4 : 理想ダイオードLT8672
図4 : 理想ダイオードLT8672

車載アプリケーションでは、多様な電源変動に対して、安全で、堅牢なシステムを構築することが不可欠です。ここでご紹介したようなアナログ・デバイセズ社のソリューションを活用することで、設計の簡素化、時間の短縮が可能となります。

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