本記事は、降圧型のスイッチング・レギュレーターのリップル波形測定時における外来ノイズの影響について説明します。
スイッチング・レギュレーターは、製品ボード上ではノイズ源として考えられ、「ノイズを放出する回路」と考えられているかと思います。そのためか、スイッチング・レギュレーターの波形確認時にオシロスコープで確認したノイズは、全てスイッチング・レギュレーターが原因と考え、原因と対策についてお問い合わせいただくことがあります。
今回は、オシロスコープで波形確認した際に問題となったノイズの事例をご紹介いたします。
リップル波形の測定
前回の技術記事「その測定正しい? 本当のリップル電圧は1/3だった」では、プローブの違いでリップル電圧の値に違いが出ることを説明いたしました。
この時のリップル測定結果は、図1の波形の様に綺麗なリップルを観測することができました。これにより、パワーレールプローブによる測定が有効であることが分かります。
しかし、この結果を得るまでに、実はノイズに苦しんで綺麗な波形取得ができず困っていました。
図1:リップル電圧の測定結果
当初の測定環境とリップル波形
今回は、アナログ・デバイセズ社の42V耐圧 同期整流型MOSFET内蔵 降圧DCDCである、LT8609Sの評価基板を使って測定しました。
評価ボード設定
オリジナルの評価ボードからの変更点は、フィードバック抵抗R5を182KΩ→300KΩにして、出力電圧を3.3Vに設定しました。
評価条件 : 入力電圧12V、 出力電圧3.3V、 負荷電流2A、 スイッチング周波数2MHz設定
図2: LT8609S評価ボード回路図
測定環境
・安定化電源 菊水電子工業株式会社の PWR801MLを使用。 評価ボードのVINーGND間に接続。
・電子負荷 菊水電子工業株式会社のPLZ164を使用。 VOUT-GND間に接続
・オシロスコープ Tektronix 6シリーズを使用。 出力コンデンサーC6の両端でリップルを観測。
- パワーレールプローブ TPR1000 または 汎用プローブ TPP1000 を使用。
リップル電圧の測定結果
今回は、2種類のプローブを使用してスイッチングレギュレーターのリップル電圧を測定しました。
図3の様な波形が得られました。赤枠部分に現れるノイズの影響でPeak to Peakで測定結果を出そうとしても、正しい値が測定できません。
GNDリードを使った測定では、GNDループが大きくなりノイズの影響が大きく出てしまっています。ノイズの影響が受けにくいパワーレールプローブにおいても、ノイズの影響が出ています。
プロービング方法を何度も見直しましたが改善しなかったので、最終的には電源を車載対応で用意しているバッテリーに変えて実験してみました。
図3:リップル測定結果
図4:パワーレールプローブ
図5:汎用プローブ(GNDリード使用)
安定化電源から12Vのバッテリーに交換し測定
商用電源 → 安定化電源 → 評価ボードと言う電力供給をやめて、バッテリー → 評価ボードの接続に変更しました。
図6がバッテリーによる電力供給時にパワーレールプローブで測定したリップル波形結果です。
先程までは形状にあったノイズがきれいに無くなりました。
図6:バッテリーによる電力供給時のリップル波形
まとめ
リップルのノイズ源は、商用電源または安定化電源からのノイズであることがわかりました。
(残念ながら、商用電源と安定化電源の切り分けまでは追えていません。)
今後は、低電圧のリップルを測定する機会が増えるため、入力電源のノイズに気を付けながら評価をする必要があることが再確認できました。
今回は、測定サイトにバッテリーがあったのでノイズ源の切り分けができましたが、バッテリーが無い環境で実施する場合は、入力ラインにフィルターを入れてノイズ除去も検討する必要があると思います。
今回の事例の様に、測定機器以外の測定環境によってノイズを拾い、正しく測れていないこともあるので注意が必要です。
また、電源ノイズによりFPGAの信号品質が劣化しているということで、お客様からスイッチング・レギュレーターのノイズをなんとかして欲しいと言うリクエストを良く頂きます。今回、自分が測定環境の電源ノイズに悩まされると言う良い経験になり、今後のお客様サポートではノイズの少ない電源設計ができるように提案・サポートをしていきたいと思いました。
補足:技術記事「その測定正しい? 本当のリップル電圧は1/3だった」の実験では、安定化電源を諦めてバッテリーで測定した報告です。
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