この記事では、降圧型のスイッチング・レギュレーターのリップル電圧の測定方法について説明します。

 

最近FPGAのコア電圧に対するAC精度の要求は、ますます厳しくなり45mV(0.9V±5%)以内を求められます。 スイッチング・レギュレーターのリップル電圧は、周波数を高くすることで小さくでき、FPGAメーカーの要求を満たすこともできます。

 

しかしながら、測定方法を誤ると折角良いスイッチングレギュレーターを選定したとしても、「マージンが無い」または「FPGAメーカーの要求にミートできない」と言った判断をしてしまう可能性があるので注意が必要です。

 

電源の評価の実際

波形を測定するときに、測定する毎にその結果が変わってしまったような経験はないでしょうか? 波形を測定するときにプローブの使い方によっては、その結果に大きな違いが生まれます。

 

悪いプロービングによって測定された波形で判断すると、過剰にコストのかかるフィルター回路を設置せざるを得なかったり、あるいは、後段デバイスの仕様を逸脱していることに気づかなかったりするリスクがあります。

 

今回は、通常のパッシブプローブと電源評価用のパワーレールプローブを実際に使って、降圧電源の出力リップルのレベルを評価してみたいと思います。

評価環境

今回は、アナログ・デバイセズ社の42V耐圧 同期整流型MOSFET内蔵 降圧DCDCである、LT8609Sの評価基板を使って測定しました。

 

評価ボード設定

オリジナルの評価ボードからの変更点は、フィードバック抵抗R5を182KΩ→300KΩにして、出力電圧を3.3Vに設定しました。

評価条件 : 入力電圧12V、 出力電圧3.3V、 負荷電流2A、 スイッチング周波数2MHz設定

図1: LT8609S評価ボード回路図

測定環境

・電源 バッテリー(12V)を使用。 評価ボードのVINーGND間に接続。

 

・電子負荷 菊水電子工業株式会社のPLZ164を使用。 VOUT-GND間に接続

 

・オシロスコープ Tektronix 6シリーズを使用。  出力コンデンサーC6の両端でリップルを観測。

  - パワーレールプローブ TPR1000 または 汎用プローブ TPP1000 を使用。

リップル電圧の測定結果

今回は、3種類のプローブを使用してスイッチングレギュレーターのリップル電圧を測定した結果を比較しました。

 

パワーレールプローブ使用(図2)

peak to peak が約7mVと大幅に高周波ノイズの影響をおさえ、より正確なリップル特性を取得できました。

1.0Vを下回るような高精度な低電圧が必要な電圧ラインのリップル特性を確認する場合には、パワーレールプローブが有効です。

 

GNDスプリング使用(図3)

GNDリードよりは良いが、やはり高周波ノイズの影響を受け、振幅によっては測定誤差を生じています。
パワーレールプローブ使用(約7mV)と比較してpeak to peak が約14mVと約2倍大きくなっています。

 

GNDリード使用(図4)

GNDリードのL成分が高周波ノイズの影響を大きく受け、適切なリップル波形を取得できていません。
パワーレールプローブ使用(約7mV)と比較してpeak to peakが約22mVと 約3倍大きくなりました。

 

図2:パワーレールプローブ

図3:汎用プローブ(GNDスプリング使用)

図4:汎用プローブ(GNDリード使用)

図5:リップル電圧の測定結果

最後に

正しい環境で測定すると、LT8609Sは非常に良好なリップル特性を示していることが分かりました。

 

後段のデバイスのリップルに対する要件が厳しくなければ、出力のコンデンサをもう少し減らし、より低コストの回路にすることができる可能性があります。

 

測定したときのプロービングの状況を写真に収めておくと、再測定時の再現性確保の観点でよいでしょう。

 

今回実測してみて、プロービングの方法によってリップル電圧の値が2~3倍の違いが出て来るとわかり、改めて、プロービングには十分気を付ける必要があると感じました。

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