高精度な測定機器を開発する場合、プラス・マイナス両電源が必要なオペアンプやADコンバーターを使用します。その場合、問題となるのがプラスとマイナス電源の設計です。

本記事では、プラス・マイナス電源の設計時の問題点について触れたあと、最後にシンプルでローノイズで構成ができるソリューションを紹介させていただきます。

プラス・マイナス電源設計の問題点 (1)

プラス・マイナス電源を設計する時の問題点としては、電源回路が複雑になることです。
単純な降圧型のスイッチング電源回路を設計した場合でも、ディスクリートで設計した場合複雑になりますが、反転型のマイナス電源を設計するとなると、さらに複雑になります。


図1は、LTC3863とLTC3864を使用した、スイッチング電源の±5V出力の電源回路の例になります。2つのスイッチングレギュレーターを使用しているので回路規模も大きくなり、パターン設計が難しくなる問題点があります。

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図1: ディスクリートによるプラス・マイナス電源回路

プラス・マイナス電源設計の問題点 (2)

スイッチングレギュレーターの出力はノイズが大きいため、オペアンプやADコンバーターに直接入れることはできないため、図1の回路に対してリニアレギュレーターが2つ必要になります。そのため、回路規模はさらに大きくなります。

スイッチングレギュレーター1つで、プラスマイナス電源を構成した回路例が図2になります。先程の例よりもシンプルになりましたが、これでも、まだ複雑に感じます。

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図2:1つのスイッチングレギュレーター+LDO回路構成

ワンチップ・ソリューション

従来のスイッチングレギュレーターでは、ワンチップ構成になっても周辺部品が多い回路構成でした。

しかし、μModuleシリーズのLTM8049を使用することで、インダクターやパワーFETを含めた周辺部品を内蔵した非常にシンプルな回路構成でプラス・マイナス電源を構成することが可能になりました(図3)。

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図3:LTM8049

LTM8049は、スイッチングレギュレーターのため、アナログ回路に使用する時は、後段にリニアレギュレーターを入れる必要が有ります。最大150mA未満の負荷電流の場合は、リニアレギュレーターのワンチップ ソリューションのLT3032を使用することで回路構成がシンプルになります(図4)。

 

LTM8049とLT3032を使用すれば、2つのICで、アナログ回路に使用できるローノイズのプラス・マイナス電源を構成することが可能になります。

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図4:LT3032

これ以上シンプルにすることは無理?と思ってしまいますが、シンプルなアナログ回路なので「50mAまでの電流で問題無いよ!」と言っていただければ、ワンチップソリューションが可能になります。チャージポンプ+リニアレギュレーターの構成をワンチップに収めたLTC3260を使用することが可能です。


出力は、リニアレギュレーターを通しているのでローノイズの電源を得ることが可能です。フロントエンドの回路で少しアナログ回路がある場合などに最適なソリューションです。

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図5:LTC3260回路図と出力波形

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