データセンターや画像処理、通信機器などに利用されるFPGAは、急速に性能が向上し、新たなデバイスが次々に市場投入されています。それにつれて、FPGA用の電源には低電圧・大電流が要求されるようになり、設計の難易度が上がっているのが実情です。
こうした中、注目されているのが、モジュールタイプの電源ICです。一方、電源設計にまだ慣れていない方は、「FPGA用電源として使うときに、ディスクリートと比べてどのような優位点があるのかわからない」と疑問をお持ちなのではないでしょうか。
そこで、今回は、FPGAの電源回路を設計する方に向けて、FPGAの電源設計で知っておくべき要件を解説し、その要件にマッチする電源モジュールとして、アナログ・デバイセズ社の「μModule®(マイクロ・モジュール)レギュレーター」を紹介します。ぜひ最後までお読みください。
FPGAの設計で電源に求められることとは?
FPGAの大電流化が進む中、FPGA用の電源にはどのような要件があるのでしょうか?
大きく分けて、次の4点が挙げられます。
<FPGA用電源の要件>
(1)省スペース
(2)高い精度と熱効率
(3)長期供給性
(4)設計の柔軟性
順番に説明していきましょう。
(1)省スペース
多くの場合、先に決まっている最終製品のサイズに合わせて電源回路のスペースが制限されるため、「基板スペースに余裕がなく、必要な機能が載せきれない」というのが設計者の共通の課題です。特にFPGAには電圧系統が多く、回路規模が大きくなりやすいため、難しい設計となりがちです。
さらに、FPGAを実装する多層基板は高価なため、「少しでも基板コストを抑えたい」という観点でも小型化が求められます。
(2)高い精度と熱効率
最新のFPGAは電流と精度が厳しく要求され、設計者から「大電流を高精度で出力するのが難しい」という声が聞かれます。
また、FPGAの消費電力が上がるにつれてICからの発熱量も増加します。「完璧に設計したはずが、基板が高熱になりすぎて製品化できない」という事態を避けなくてはなりません。採用するICの精度と効率が、電源設計に大きく影響します。
(3)長期供給性
FPGAの周辺回路は設計難易度が高いため、「一度作った基板はできるだけそのまま量産し続けたい」というのが当然の考え方です。部品が製造中止になると、再設計に大きな手間がかかるため、部品の長期供給性を考慮して採用する必要があります。できるだけ部品点数を削減して、部品管理の煩雑さや製造中止のリスクを軽減することも重要です。
(4)設計の柔軟性
スイッチングレギュレーターは部品が多く、複雑なレイアウトになるため、設計に時間がかかり、ノウハウも必要です。検証が不十分なレイアウトは過電圧 (EOS) による破壊につながりますが、近年は製品の早期市場投入が優先され、十分な検証時間が取れないことが常態化しています。
また、最先端のFPGAを先行して取り入れる場合、電源設計中に要求仕様が変わることがあります。必要な電流量はFPGAに実行させるタスクによって左右されるため、納期直前に電流不足が発覚することもあります。
「時間の余裕がない中で、手戻りに急いで対応しなければならない」という例は珍しくありません。さまざまな事態に素早く対応するために、設計には柔軟性が必要になっています。
FPGAに最適な電源IC「μModule® レギュレーター」とは?
このように、多くの要件があるFPGAの電源には、どのような電源ICが最適なのでしょうか?
その答えが、アナログ・デバイセズが提供する電源モジュール「μModule®(マイクロ・モジュール)レギュレーター」シリーズです。高精度アナログICと周辺回路を1つのパッケージにまとめた、DC/DCコンバーターのワンチップソリューションで、幅広い電源に対応するラインナップを持っています。
小型パッケージの中に、周辺回路も含めた各部品が理想に近い配線配置で実装されており、低ノイズを実現しています。回路設計のノウハウがない方でも、細かい部品のレイアウトを気にすることなく、高品質なFPGA用電源を容易に開発することが可能です。
電源回路の小型化、設計工数の大幅削減、部品点数の削減に貢献するμModule® レギュレーターで、開発期間を短縮し、製品をスピーディに市場投入できます。
「μModule® レギュレーター」の特長と機能
アナログ・デバイセズのμModule® レギュレーターには、具体的にどのような特長があるのでしょうか?
主に次の5つが挙げられます。
<μModule® レギュレーターの特長>
・コンパクトなサイズ
・高い効率
・高い精度
・高いスケーラビリティー
・製造中止のない長期供給性
詳しく紹介していきましょう。
コンパクトなサイズ
μModule® レギュレーターは、大電流に対応しながらパッケージの小型化を実現しています。
例えば、超小型パッケージの「LTM4624」は、インダクターなどの周辺部品を含めて6.25 mm x 6.25 mm x 5.01 mmという省スペースで、4Aまでの駆動が可能です。ディスクリートで同規模の電源を構成する場合に比べて、基板面積を約70%も削減できます。他社モジュールと比較しても、面積あたりの電流量の多い製品がそろっています。
高い効率
高い効率を実現している製品が多いことも、μModule® レギュレーターの魅力の1つです。
例えば、定格電流125Aの「LTM4681」は、90%という高効率を特長とし、他社モジュールとの比較でも優れた値となっています。大電流でも発熱を抑えられるため、消費電力が年々増えるFPGAの電源として最適です。
高いスケーラビリティー
次に挙げるように、柔軟な設計を可能にするμModule® レギュレーターの独自機能がいくつも実装されており、高いスケーラビリティーを有しています。
<カレントシェア機能>
1つの電圧系統への出力を、並列に置いた複数のモジュールに分担させる機能です。
発熱を分散できるため、基板の熱の問題を容易にクリアできます。
【活用例】
・複数の出力を束ねることで、1つのモジュールでは実現できない大型電源を構築できます。
・電源を分散させて冗長性を持たせることができます。
<マルチアウトプット>
1つのモジュールから1系統の電源を供給するだけでなく、2系統、4系統といった多チャンネルを出力できる製品がラインナップされています。
【活用例】
・1モジュールで複数の電圧系統に電源供給できるため、圧倒的な省スペースを実現し、部品点数も大幅に削減できます。
・複数の出力系統を柔軟に束ねて回路を構成できます。
例えば、クアッドチャンネル(4系統)の「LTM4644」では、「4系統の4A出力」から「単一の16A出力」まで、モジュール1つで対応できます。
・「予備として、不足したら使う」など、冗長性を持たせるためにも便利です。柔軟性が向上し、急な仕様変更にも対応しやすくなります。
【設計例:Xilinx Kintex UltraScale PCI Express Platform】
「0.95V 26A」「1V 16A」などの大電流を含む多数の電圧系統でも、部品点数を抑えながら、省スペースですっきりした回路を実現できます。
<ピンコンパチブル>
入力電圧、出力電圧、パッケージサイズがほぼ同一で、多様な出力電流値に対応するピンコンパチブルのラインナップを提供しています。回路そのものを変更することなく、部品だけを差替えて、仕様変更やコストの最適化に簡単に対応が可能です。豊富なラインナップがあるため、最適なモジュールを自由に選択し、思いのままに設計を進められます。
<製造中止のない長期供給性>
μModule® レギュレーターは、「原則として製品の製造中止をしない」という旧リニアテクノロジー社のポリシーを継承しながら提供されています。
製造中止の心配がなく、設計負荷の高いFPGAに安定的に利用できることは、仕様書にこそ書かれませんが、非常に大きな価値をもたらしてくれるでしょう。
μModule® レギュレーターのラインナップ紹介
μModule® レギュレーターは、出力可能な系統数ごとに3種類があります。
・シングルチャンネル:1モジュールから1つの電圧系統に出力
・デュアルチャンネル:1モジュールから2つの電圧系統に出力
・クアッドチャンネル:1モジュールから4つの電圧系統に出力
デュアルチャンネル、クアッドチャンネルでは、出力電圧を束ねて使うことが可能です。
3種類それぞれに豊富なラインナップがあります。
シングルチャンネル
デュアルチャンネル
クアッドチャンネル
Intel® FPGA向け アナログ・デバイセズ社リファレンス電源ガイド
マクニカ取扱い製品であるIntel社のFPGA向けに、弊社の電源スペシャリストがアナログ・デバイセズ社製品の中から厳選し、リファレンス電源ガイドを用意しました。リファレンス電源ガイドには各FPGAシリーズ向け推奨デバイスのほかに、電源起動時と停止時に定められたシーケンス要件を満たす順序を記載しています。
リファレンス電源ガイドは、お客様情報をご記入いただければ無料でダウンロードできます。これからIntel社のFPGAを使った電源設計をされる方、FPGAにおける電源ICの部品選定にお困りの方は、ぜひご活用ください。
アプリケーション例
・データセンター
・通信機器
・画像処理機器
本記事では、FPGAの電源に最適な、アナログ・デバイセズのμModule® レギュレーターを紹介しました。
μModule® レギュレーターなら、大電流に対応できる小型のFPGA電源をスピーディーに設計できます。ぜひ検討候補に加えてください。
ご興味をお持ちの方は、マクニカまでお気軽にお問い合わせください。
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