今回、日本の製造業DXにおけるDX推進責任者のリアルな課題と、その解決策となる「Digital Execution Factory」、DXの内製化を実現する支援の本質や泥臭い支援の原動力などをデジタルインダストリー事業部 事業部長代理の阿部にインタビューしました。
本連載では、再現性のあるDXを生む「Digital Execution Factory」にたどり着くまでのサービスの変遷から、製造業DXのボトルネックや解決のためのポイントなど、「DXをカルチャーにし、日本の製造業が世界で再び輝くためのヒント」をご紹介します。(この記事は4回目/全4回)
インタビュー連載
真のDXパートナーとしての信念と原動力
真のDXパートナーとは「一緒にやりたいと言ってもらえる人」
昨今、多くの企業がDXパートナーを名乗っています。阿部さんが考える「真のDXパートナー」とはどういった存在ですか?
阿部:目的変数と説明変数が同じになってしまいますが、文字通り「パートナー」であることだと思っています。単なる受発注の関係ではなく、一緒にやりたいと言ってもらえる人。共に何か新しいことに挑戦する「仲間」であり「チーム」であるということです。
この考えの背景には、時代の変化があります。今、生成AIをはじめとして様々な技術が進化し、やろうと思えばいくらでも方法がある時代になりました。技術的に「何ができるか」という点では、もはや差別化が難しくなっています。手段(How)がコモディティ化し、多くある時代になった時、最後に残るお客様の選定基準は「誰とやりたいか(Who)」ではないでしょうか。
その時に、顔を思い浮かべてもらえるだけのバリューが私たちにあるか。「誰とやるか」という問いに対し、「あなたとやりたい」と言ってもらえること。これこそが私たちが目指し体現するパートナーの姿であり、これからの時代を生き残る術だと考えています。
本当に価値があるものだけしかやらない
阿部さんが顧客と接する際に、絶対に曲げたくない「信念」を教えてください。
阿部:「お客様にとって価値があるものじゃなきゃやらない」ということです。これは私たち、マクニカとしての信念でもあります。
時に「とは言っても、本当は売りたいんでしょ?」と穿った見方をされて苦しい時もあるのですが(笑)、我々のポリシーは明確です。「自分たちが売りたいものを売る」のではなく、「効果があるものを売る(効果がある取り組みをする)」ということです。
ここに関して、絶対に譲りたくないポイントがあります。
それは、「お客様の成果(ハッピー)に対してどれだけコミットできるか」という覚悟です。極端な話、もしその導入がお客様をハッピーにしないと思ったら、たとえお客様が「買いたい」と言っても売りません。
目先の売上よりも、本当の価値を提供すること。これが、私が絶対に曲げたくない信念です。
頑張る人が、ただ疲弊し損をする社会にしたくない
阿部さんはなぜ「製造業DX」にこれほどの熱量を注いでいるのですか?その原動力について教えてください。
阿部:私の原動力は、一言で言えば「志を持って頑張る人が、ただ疲弊して損をする社会にしたくない」という強い想いです。
もともとマクニカは、日本の製造業のお客様に、世界の様々な最先端技術をお届けすることを祖業としていました。しかし、お客様と一緒にプロジェクトを進める中で、あることに気づき始めました。
一つは、技術が進化すればするほど、お客様の目的を達成するには「いかに良いテクノロジーを持ってくるか」ではなく、「何を実現したいか」という目的やビジョンが明確であることの方が重要だということ。
もう一つが、プロジェクトの成否を分けるのは、技術ではなく人であること。
達成したら嬉しいのも、うまくいかなくて悲しいのも、結局は「人間」なんです。私たちが相対しているお客様は、会社を良くしようという強い使命感やミッションを持って、とんでもないプレッシャーの中で生きています。今までのやり方を変えるわけですから、組織に対してものすごいストレスがかかります。すると、彼らは基本的には攻撃対象にされてしまうこともあります。「なんでやらなきゃいけないの?」「面倒くさい」と面と向かって言われたり、「それ良いですね!」と表面では支持しながら、裏側では足を引っ張るようなことが、やっぱり沢山あります。夜、お客様から泣きながら電話をもらったこともあります。
そうやって傷つきながらも前に進む人に触れていると、やっぱり成功してもらいたい。自分の意志や使命感を持って一生懸命頑張る人が、損をしたり、ただ疲れていくだけの社会には、この先なってほしくない。
だからこそ、私たちは「本当にやりたいことは何か?」を一緒に悩み、一緒にストレスと戦い、一緒に成功事例を作ってカルチャーを醸成し、変革に繋げていく。そのために、徹底的に人と向き合い、志を実現するための仲間となる。
この役割や楽しさに気づいて、のめり込んでいっているのは私だけではありません。うちの事業メンバーは大体みんな、そういう想いでやっているのではないかと思います。
日本の製造業はこれからだ
「今」は日本の製造業が世界で返り咲くラストチャンス
最後にメッセージをお願いします。
阿部:世界的な技術トレンドと日本の強みが噛み合い始めた「今」こそ、日本の製造業が世界で再び輝く絶好のタイミングであり、チャンスだと確信しています。
これまでのDXは、いわばインフラ整備や0から1を生み出す「1回戦」でした。正直、大規模投資やルール作りが苦手な日本はここで遅れを取りました。
しかし、技術が成熟したことで、状況やゲームのルールが変わりました。ここからは、既存の技術を使いこなし、品質を高める「2回戦」です。ここは日本が最も得意とする領域であり、勝算があります。
なぜ今がチャンスなのか。理由は大きく3つあります。
一つは、技術の進化による「インフラのハンデ」の解消です。
かつては、大規模で全社的なデジタルインフラを整備できるかどうかが勝負でした。しかし、ローコードプラットフォームや生成AI等の技術進歩により、技術の高度化と活用ハードルの低下が同時に起こっています。つまり、インフラが完璧でなくとも、高度なデジタルデータを「利用」するというところからスタートできる環境が整ってきたのです。
これにより、日本が得意な「現場での創意工夫」で、苦手な「大規模な変更を伴う投資やインフラ整備」の差を埋められるようになりました。
つまり、戦いの土俵が変わりつつあるのです。
注意点としては、インフラ整備がなくても良いというわけではありません。技術進歩によりデータのインフラが完璧でなくても、様々なことができるようになりましたということです。完璧なインフラなしでもできることからスタートし、効果や成果が出ればインフラ整備に着手できる。つまり、「局所で技術を活用する→成果を出す→インフラを整備する→さらに技術を活用する→成果を出す→インフラを整備する」というループに入ったら日本はさらに大きく変化するのではないでしょうか。
次に、日本人の特性を強みとして活かせるからです。
日本人は「イメージだけだと動きにくい」というところがあると思います。なので、スタートは遅い。しかし、DXのイメージが社会に定着しつつある今、「DXとはこういうもの」というイメージが浸透しました。つまり、ここからのスピードが速い。
また、日本人の「決まったことを忠実に実行する真面目さ」と「愚直な実行力と改善力」も大きな武器になります。
デジタル上で定義されたプロセスを、現実世界で正確に遂行する「実行力」。そして、実行が正確だからこそ、予実(デジタルと現実の差)を埋めるための高速なPDCAが可能になる「改善力」。
まずは正確に実行できなければ、予実をうめるための正確な分析ができません。「そもそもちゃんとやってないよね」という話になりますので。そして差が判明したら、それを解消するための改善力が非常に高い。そしてそれを支える「真面目さ」という特性。
つまり、できるイメージに向かって、当たり前のことを当たり前に実行し、加速度的に質を高めるこのプロセスにおいて、日本は圧倒的な強さを発揮できます。
最後に、「おもてなし」が生むデータ資産の価値向上です。
日本には、顧客一人ひとりに向き合う「おもてなし」の文化と、対面コミュニケーションの蓄積があります。これまで海外では非効率とされていたこれらの「非構造化データ(顧客の生の言葉ややり取りの履歴)」が、最新技術によって解析・活用可能になりました。
これは、効率化を突き詰め、顧客一人一人に時間を割いてこれなかった海外が一朝一夕では真似できない「日本独自の資産」であり、ラストワンマイルの付加価値や差別化の要因となると考えています。これが3つ目の理由です。
歴史を振り返っても、日本は「0から1を生み出す」ことよりも、「あるものを極限まで高品質化し、使いこなす(量産や改良)」こと、つまり「2回戦」で世界を席巻してきました。DXにおいてもゲームのルールが変わり、2回戦に入った今こそ、日本流のDXで組織変革を行うラストチャンスだと思っています。
なぜラストかというと、海外のDX先端企業が日本の上記のような点に注目し、学び始めているからです。さらに、2回戦は日本の得意領域であり、ここで負けると大きな敗北となります。
なので、「これからは自分たちの時代」と慢心するのは危険です。彼らはすでにインフラを整え、標準化・効率化という意味でのDXは成熟しています。さらなる成長を求めて、謙虚な姿勢で日本の強みを取り入れようと注目しています。
つまりこの機を逃さず、日本の製造業が再び世界を席巻することを目指し、私たちは「日本の強みと最先端の技術をかけ合わせられる触媒」として、日本の製造業の国際競争力を高めるご支援を続けていく。これが私たちの想いです。