さまざまな社会課題を解決する手段として、AIへの期待が高まっています。
しかし、AIはどのようにして結果を導いたのかが明らかでない「ブラックボックス」であることが多いため、なかなか現場に受け入れられない状況も見受けられます。
このような限界を突破するのが、「ハイブリッドAI」です。ハイブリッドAIについて、マクニカ AI Research & Innovation Hubの楠が、具体的な事例や適用効果を交えて紹介します。

講演者情報

株式会社マクニカ
AI Research & Innovation Hub
プリンシパル
楠 貴弘

現場での課題解決に期待が高まるAIの活用

今、あらゆる業界で「現場の負荷が重い」「設備の高経年化」「労働力不足」といった、さまざまな課題に直面しています。
また、国内にあるほとんどのエチレン生産設備は、2025年までに稼働年数が40年を超えるそうです。このような課題を何とか解決しようと取り組む中で、AIへの期待が高まっています。

AIによって、ノウハウの継承、判断基準の平準化、負荷軽減、生産性向上など、さまざまな効果が得られるようになります。
ですが、そのためにはAIの特徴を踏まえたうえで、課題と導入効果を事前に設定して取り組むことが重要になってきます。

すぐにもAI導入を進めたいところですが、主に3つの課題が実装を阻んでいます。
組織整備・人材不足といった「経営的な課題」、高い技術水準の担保が難しい「技術的課題」、そして目標設定と信頼性説明の困難さに代表される「プロジェクト遂行における課題」です。

「特に難しいのは、どのようにして信頼性を説明するかです。では、AIの説明不足にどう対応すればいいのでしょうか。対策として『判断理由の明確さを重視したシステムを構築すること』『熟練者などドメインの専門家の知識を活用したシナリオを構築すること』『解釈可能な手法を選定すること』があります。この3つの対策を盛り込むことができるのが、『ハイブリッドAI』です」(楠)

近年では、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が「取り組むべきAI技術開発」の1つとして「意味理解のためのAI」を挙げ、事業化へ向け検討を進めるなど、AIに対する重要性や将来性への期待が伺えます。

説明不足を解消するハイブリッドAIとは

第三次AIブームで利用が広がった機械学習や深層学習は「数値AI」と呼ばれるもので、入力と出力の間にパターンを見つけることによってルールを学習します。タスクの実行方法を明示的に指示しなくても、学習に使用したサンプルデータに基づいて機械が予測し判断を下すことが可能となります。
しかし、なぜそのように推論されたのかという説明がなされない「ブラックボックス」であることが問題となっています。一方で、人が持つ知識モデルであり、説明可能なAIなのが「シンボリックAI」です。

「数値AIによるパターン認識で大量のデータから特徴を発見し、シンボリックAIで人間の経験や知識・知見を組み合わせることで、ホワイトボックス化を実現し判断をサポートすることが可能です」(楠)

数値AIだけの意思決定プロセスは、センサーデータを分類もしくは予測し、アラートメッセージを出すことはできますが、どうすればいいのか具体的な行動につながる情報は多くありません。
ハイブリッドAIでの意思決定プロセスでは、熟練者のナレッジやガイドラインをもとに作ったシンボリックAIを組み合わせることで具体的な理由や解決方法を添えて意思決定をサポートするリコメンドが可能になります。つまり、現場の担当者は、確証ある行動をとることができます。

さまざまな分野での広がりを見せるハイブリッドAI

ハイブリッドAIは、すでに適用領域が広がっており、さまざまな領域において社会実装の実績があります。

発電所では、燃焼効率の向上や設備の異常予知に利用されています。
医療分野では、センサーから取得したバイタルデータで数値AIが異常を検出した後に、シンボリックAIが臨床医の知識・知見を取り込んで最終的に判断するなどの取り組みがあげられます。

製油所では、計画された生産スケジュールと実際のオペレーションとのギャップが課題でした。
そこでハイブリッドAIによる意思決定のサポートを行うことで、プラントの製造工程全体を見すえた解決策の提示や、タイムリーで透明性の高いレコメンドを提示し、操業効率や収益の向上に貢献しました。

「ガス漏れ検知センサーの配置最適化にもハイブリッドAIが貢献しています。ネットワークトポロジーやセンサーデータと化学物質分配システムへの入力を取り込み、物理学をベースとしたシンボリックAIと数値AIであるディープラーニングをベースとしたハイブリッドAIを活用することで、カバレッジ不足のネットワークセンサーを発見し、最適なセンサーのパイプ内の配置についてアドバイスすることが可能となりました。センサーの最適な配置によりコストは軽減され、ダウンタイムや中断のリスクが大幅に軽減されたそうです」(楠)

エチレン生産の歩留まり改善にも、ハイブリッドAIが生かされています。
エチレンは世界で特に需要の高い石油化学製品の1つで、世界の生産量は1980年に比べ3倍になっています。
ですが、今この時もプラントはフル稼働している状態です。コンプレッサーの汚れやブレードの不均衡によって、閾値を超えた過剰な振動が発生すると、計画外のシャットダウンにつながり、巨額の損失になります。

「通常は問題が発生してから管理者が現場から連絡を受け、特定技術者が現場をチェックした後、交換部品の発注や仕込み作業を行いますので、非常に時間がかかります。ハイブリッドAI導入によって、運用ナレッジをベースにしたシンボリックAIが問題発生時に管理者に対して推奨するアクションを提示することができます。管理者は交換が必要な部品を現場技術者へすぐに提示可能となり、ダウンタイムの低減につながりました」(楠)

AIの社会実装にはデザイン思考も必要

数値AIとシンボリックAIのメリットをうまく組み合わせて使えるのがハイブリッドAIです。
しかし、いきなり導入するのは難しい、あるいはAIにまだ取り組んでいないという企業もあります。そのような場合には、マクニカが提供する「Re:Alize」を是非ご活用ください。

「Re:Alizeは、ユーザーが使い続けたくなるような体験をデザインするAI社会実装サービスです。AIは作ることが目的ではなく、そもそもどうやって事業戦略や経営戦略に組み込んでいくかが大変重要なポイントです。Re:Alizeは、そうした体験を一緒に設計して取り組んでいくサービスです」(楠)

Re:Alizeサービスは、「Re:Concept」「Re:Creation」「Re:Experience」の 3ステップに分けられています。

「最初のステップの『Re: Concept』では、課題の整理や目標設定を一緒に行います。どのような課題を、どのようなAIで解決したいのか、そしてどのような効果が得られるのかを整理します。その後、数値AI、シンボリックAI、ハイブリッドAIのどれを利用するべきかをアセスメントします」(楠)

次のステップの「Re:Creation」では、実際にデータを分析し、AIのモデリングを実施。そして、AIを活用するアプリケーションを開発します。

「最後の『Re:Experience』では、実際にユーザーの方に体感していただきます。そうすると、使い勝手などの意見が出てくるかと思いますので、それをフィードバックして、さらに課題設定し直すといったことを繰り返しながら、どんどんユーザビリティを上げていきます」(楠)

この取り組みで重要なのは、デザイン思考です。AIで社会課題や経営課題に取り組む際には、デザイン思考をうまく使うことが効果的です。デザイン思考を使ってAIの社会実装につなげる取り組みは、非常に重要になってきています。

AIを社会実装するには、データサイエンティストやエンジニアだけでは不十分です。
Re:Alizeでは、UI/UXデザイナーも含めたメンバーが一体となって、お客様のチームの一員として一緒に取り組みます。お困りの際は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

AIには、変化を加速させる力がある

Re:Alizeは、ユーザーが使いつづけたくなる体験をデザインするAI社会実装サービスです。