はじめに
2020年3月から商用利用されている5Gは2022年現在もエリアの拡大を続けています。5G方式の最初の仕様であるRelease 15は2019年に策定されましたが、その後も3GPPでは5G NR(New Radio)およびLTE機能の拡張技術の検討が続けられ、2020年に5G NR Phase 2とも言えるRelease 16が策定されました。
今回はそのなかからRIM ( Remote Interference Management) という遠隔セル間の干渉管理技術について紹介します。
干渉を測定し軽減する新たな技術は、将来的に動的なTDDオペレーションの実現と安定した展開を可能にし、5Gによる新しいサービス展開モデルの登場にも期待が持てます。
ラジオダクト現象による遠隔干渉
ラジオダクト現象とは、特殊な気象条件下で電波があまり減衰せずに遠方に伝播してしまう現象です。(図1)
5G NRの同じ構成の上り下り伝送方向のTDDネットワークでは、干渉を避けるためにギャップ(ガード期間)が使用されていますが、ラジオダクト現象が発生するとダウンリンク送信の電波は長距離を移動してしまい、ギャップを超えて遠隔地の基地局のアップリンク受信を妨害することがあります。(図2)
このような干渉を遠隔干渉と呼び、遠隔干渉の影響を軽減するためのいくつかの機能実装をとることがRIMの役割です。

図 1 ラジオダクト現象概略図

図 2 遠隔干渉時の各TDDスロットの概略図
( UL: Up Link data、DL: Down Link data、GP: Guard Period )
遠隔干渉管理の流れ
「 5G RIM 」では、被干渉側からのRS信号(Reference signal)の受信後、与干渉側基地局のコアネットワークが干渉緩和ソリューションを適用し、干渉緩和処理をおこないます。Release 16 RIMでは、2パターンのRS信号があります。(図3)
・RS-1信号:被干渉基地局が与干渉基地局へ干渉が発生していることを伝えるための信号
・RS-2信号:与干渉基地局が発信する信号で、ラジオダクト現象が発生していることを伝えるための信号
ちなみに、遠隔干渉をRIMによって確認した後に行われる干渉緩和処理例は、下記のとおりです。
・アンテナの高さ調整
・基地局から発信するビーム角度を調整
・TDDのスロットのズレなどを調整
・干渉スロット( UL / DL )の周波数を直交関係なるように調整 など

図3 5G RIMシーケンス図
おわりに
今回は、5G RIMについて機能概要を紹介しました。今後も5G技術関連の情報を随時アップして参りますので、ご覧いただけますと幸いです。
また、弊社では5G通信モジュールの取扱いもございますので、最新の製品動向にご興味のある方はぜひご連絡ください。
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