3GPPリリース16における5G仕様概要

はじめに

5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが2020年より国内でスタートしています。最近では私達の日常生活の中でも実際に5G対応した機器を持っている人や、その技術を活用したサービスを体験できる機会なども増えてきており、これからその事例はますます増えていくことが期待されます。その注目度からも分かるように、5Gには次世代の通信インフラとして多くのメリットがあり、これまで以上に様々なものがインターネットに繋がり、さらに高速かつ低遅延の通信を実現することで、例えば商業施設や医療、交通、工場など、今までは想像もしなかったような幅広い場面で活用できることが期待されています。

 

3GPP(移動体通信システム規格の標準化機関によるプロジェクト)によっておこなわれている5Gの仕様策定は、リリース15/16/17の3段階のフェーズに渡っておこなわれており、リリース17で完全版の仕様になると言われています。2020年7月に公開された第2弾のリリース16ではリリース15に対して大幅に機能拡張されており、今後5Gを活用した新たなサービスのさらなる拡大に寄与すると考えられています。本記事では5Gについてリリース16で強化された機能や新しく追加された機能ついて紹介します。

リリース16による追加仕様

MIMO機能の拡張

3GPPは、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)の性能と効率の向上に常に取り組んでおり、リリース16もその流れに沿ったものとなっています。リリース15でMIMOフレームワークはリリースされていましたが、一部の機能はリリースされておりませんでした。リリース16では、マルチユーザーMIMO(MU-MIMO)の強化、リンクの信頼性を向上させるための複数送受信ポイント(multi-TRP)による通信の実現やマルチビーム管理のサポート、PAPR(Peak to Average Power Ratio)を低減するためのリファレンス信号の改善など、多くの技術分野での強化を図っています。また、リリース16ではMIMO対応機器のアップリンクにおいて最大電力での送信が可能となっており、セル端でのカバレッジを向上させることができます。

省電力機能

バッテリー駆動する機器においてはバッテリー寿命を延ばすために、機器の消費電力を削減することが重要なポイントとなります。リリース16では、いくつか新しい省電力機能が導入されています。例えば、WUS(Wake Up Signal)と呼ばれる機能が実装されており、通信の保留状況をデバイスに通知し、通信が不要な場合はスタンバイ状態にしておくことで、定期的に基地局に問合せを行うDRX(Discontinuous Reception)の間隔をさらに広げることができるようになり、低消費電力状態を維持することが可能となっています。その他にも、低消費電力設定の最適化、オーバーヘッドの削減、より効率的な電力制御メカニズムなどを導入することでバッテリー寿命の長期化を実現することができるようになっています。

NRアンライセンス (NR-U)

5Gには通信キャリア会社が運用するキャリア5Gと、誰でも運用が可能なローカル5Gがありますが、いずれも運用するためには総務省の無線局免許が必要でした。しかし、リリース16で新たにアンライセンスバンドを5Gに解放する標準仕様が示されたことにより誰でも設置することが可能になりました。NR-Uにはライセンスバンドとアンライセンスバンドを併用するAnchored NR-Uとアンライセンスバンドだけを使用するStandalone NR-Uの2種類が定義されています。

無線アクセス・バックホール統合伝送 (IAB)

5Gのミリ波ネットワークのカバレッジを広範囲に拡大するための重要な課題の1つとして、ミリ波の基地局を追加で展開する際のコストがあります。リリース16では、ネットワークのバックホールを実装するために新しくIAB(Integrated Access Backhaul)という方法を導入し、5Gミリ波ネットワークの展開とカバレッジの強化をより容易かつ迅速に行うことができるようになりました。IABは基地局が5G通信を用いた機器への無線アクセスと無線バックホールの両方を提供することで、有線バックホールを必要としなくなるため、新しい基地局を効率的に増設することが可能となり、5Gネットワークの展開に必要な時間を大幅に短縮することができます。

URLLC機能の拡張 (eURLLC)

ファクトリーオートメーションなどの新しいユースケースに対応するため、リリース16では5G URLLCの基盤を強化しリンクの信頼性をさらに向上することでレイテンシーの低減が可能になりました。信頼性と遅延は密接に関係しており、エラーが増加すると、エラーを修正するために追加の送信が必要になるため、遅延が増加していきます。このようなユースケースでは、遅延の制限が厳しくなっているため、単に再送回数を増やすだけでは不十分です。そこでシステム課題を克服するために、CoMP(Coordinated Multi-Point)が導入されています。CoMPは、multi-TRPを利用して、空間的に冗長な通信経路を用意することで、ある経路が一時的に遮断されても、残りの経路を利用して通信を途切れさせないようにする技術となっています。

おわりに

本記事では3GPPのリリース16における5G仕様のアップデートからいくつかのポイントを取り上げて紹介しました。

リリース16に対応した製品は、弊社でお取り扱いしているThundercomm社からLGAタイプ(TurboX T62G)がリリースされております。

M.2(TurboX T62M)もまもなくリリースされる予定です。

最新の製品開発状況などに関する情報はウェブページに掲載されていない場合もございますので、詳細は弊社までお問い合わせください。

5G関連製品(リリース16対応)

5G関連製品(リリース15対応)

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