「ローカル5G」Non Public Network (NPN) 構成比較

はじめに

2022年6月末、「Beyond 5Gに向けた情報通信技術戦略の在り方」が総務省より発表されました。今後PoCへの投資額も増加傾向にあることからも、研究開発推進がさらに加速していくことが予測されます。5G通信領域・速度の拡大を目指す中で、ネットワークの安全性の向上も国の課題として掲げられています。

2022年7月、アンリツ株式会社とクアルコム社は協業により「Snapdragon™ X70 5G Modem-RF System」 を用い、5G SA環境下でのプライベートネットワーク技術(NPN)のプロトコルコンフォーマンス試験に業界で初めて成功したとの発表もありました。

今回は3GPP Rel. 16~17より順次開始され、IIoT領域での活用が期待されている5G NPN(Non public network)に関して、ネットワーク構成例について調べてみたのでご紹介します。

NPN(Non public network)各構成例の比較

NPNは、非公衆網ネットワークへ5Gを活用する上で、3GPPがRel. 16より定めている標準仕様です。特定の利用者に限定してネットワークへのアクセスが可能です。5G回線を占有し、プライベートネットワーク環境を構築します。NPNはネットワーク回線を各ユーザーに紐づけて占有しているので、セキュリティ性の向上に加え他のユーザーからの無線の干渉も少なく、URLLCやeMBBの性能向上にも寄与する機能となっています。

5G NPN構成想定として、5G-AICA(IIoT向けユースケースへの5G技術の活用検討を進める団体)では、図1のような構成例が検討されています。構成例は大きく分けて、ローカル5G環境下で構成されるSNPN(Standalone Non Public Network)と一部公衆網の設備を借りながらもプライベート5G環境下で構成されるPNI-NPN (Public Network Integurated - Non Public Network) があります。表1には、各構成例の特徴を示しています。

※ローカル5G: 非公衆網のネットワーク、ネットワーク環境の構築・管理はユーザー側でおこなう。
※プライベート5G: 非公衆網のネットワーク、ネットワーク環境の構築・管理を部分的または全体的に通信キャリア側がおこなう。

NPN構成比較模式図

図1 NPN構成比較模式図

○Standalone NPN (SNPN)

SNPNは、基地局と5Gコア(5GC)を自社で用意したローカル5G環境下でNPNを構築します。ユーザー側で設備が完結しているので、ネットワークの安全性・低遅延性にもっとも優れています。また公衆網を介さないので、キャリアのエリアに捕らわれないネットワークが構築可能です。ユーザー側で5G通信設備の運用や管理を全ておこなう必要がありますが、ほとんどのデータをローカル管理することが可能です。

○NPN shared RAN (PNI-NPN)

5Gコアは自社で構築しますが、共有基地局を介して公衆網側のネットワーク回線に接続する環境下でプライベート5Gを構築します。 SNPNと比較すると基地局が自社で所有する必要がないことに加え、NPNの管理・運用を公衆網側へ委託することが可能です。性能・コスト面では、SNPNとNPN shared RAN + Control planeの間に位置します。

○NPN shared RAN + Control plane (PNI-NPN)

NPN shared RANの構成に加え、さらに5GコアのC-plane(Control plane)の運用を公衆網側へ委託する構成です。U-plane(User-plane)側のデータは、自社で管理が必要ですが、ローカルでの管理が可能なためセキュリティ性も高いです。トータルコストを抑えつつも、高いセキュリティ性を保ったNPN環境を実装可能です。

NPN hosted by the public network (PNI-NPN)

基地局と5GCの2つのPlaneの運用を公衆網側へ委託する構成です。NPNは、「ネットワークスライシング」によって通信キャリア側から提供されます。

※ネットワークスライシング:ネットワークを仮想的にスライス(分割)し、互いに干渉しない独立したネットワークを構築可能な技術
デバイスの特徴(mMTC,URLLC,eMBB)に合わせた、ネットワーク提供が可能

表1 NPN各構成例特徴まとめ

おわりに

今回はNPNの各構成例について紹介いたしました。モジュールベンダーより3GPPのRel. 16に対応した5Gモジュールも徐々にリリースが開始されており、5Gの活用領域の更なる拡大への期待も高まってきています。今後もNPN対応の動きについて引き続き注目していきたいと思います。

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