電源ドック技術担当の佐々木です。
このコラムでは、色々なお客様サポートの中で複数回遭遇した、電源に関する不具合事例をご紹介していきたいと思います。
ある日、お客様からこんなお問い合わせがありました。
仕様は満足しているはずですが・・・

DC/DC コンバーターの入力電圧を上げると出力電源が不安定になって困っています。。。
お客様が直面したトラブルの詳細はこちら
- 出力電圧が不安定で、低周波数で変動をしているため、FPGA の電源要求を満たさない
- 入力電圧、出力電圧は規定範囲内
- 周辺回路については回路定数の問題なし
そこで早速お客様先を訪問。
DC/DC コンバーターの出力電圧とスイッチング波形をオシロスコープで観測してみると・・・


スイッチング波形が崩れています。出力電圧が不安定になった原因はこれですね。
この電源 IC は、今の回路条件で入力電圧を 7V 以上にすると、出力電圧を低くすることができないんです。

え?でもこの製品のデータシートには『28V まで入力可能』と書いてありますよ。
データシートが間違っているということですか?

スイッチング DC/DC コンバーターには、入出力電圧差とスイッチング周波数で決まる Minimum On Time という規定があります。
今回はその規定を満たしていないため不安定状態になったようです。
出力電圧が不安定になった原因 → Minimum On Time 規定の逸脱
スイッチング DC/DC コンバーターは、スイッチング動作(PWM)のオン・オフの平均電圧が出力電圧となります。高い入力電圧から低い出力電圧を得る場合、スイッチングのオンの時間は短くなります。「オン時間をどれだけ短くできるか」というのが Minimum On Time です。
今回はオンの時間を非常に短くしたことで Minimum On Time の規定を逸脱し、出力電圧が不安定になっていました。
試しに入力電圧を少し低く(スイッチのオンの時間を少し長く)してみると、Minimum On Time の規定内に収まり正常な波形を得ることができました。

今回のポイント

スイッチング DC/DC コンバーターは、Minimum On Time にも注意が必要!
アプリケーションノート
電源のMinimum On Timeの規定を逸脱した場合について、より詳しく解説しているアプリケーションノートがダウンロードできます。
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