電源ドック技術担当の佐々木です。
このコラムでは、色々なお客様サポートの中で複数回遭遇した、電源に関する不具合事例をご紹介していきたいと思います。
DC/DCコンバーターの技術サポートをしていたある日、多数の電源モジュールを使用しているお客様から「電源モジュールから音がするから至急来てほしい」との連絡が。
音がしているモジュールは1台だけ?
お客様のところへ訪問し回路図チェックしたところで、疑わしい点を見つけました。

しかし、1台だけの発生とのことで発生頻度が小さく疑問が残る。
早速、実験室に移動し正常なボードと問題のボードを複数並べて検証を開始しました。
すると…
正常だと思っていたボードからも「キーン」と言う音が!

こちらからも音がするようですが…

これは音が小さいので問題ありません。

!?
よくよく調べてみると、検証をした全てのボードから音がしていました。

電源の周辺回路に問題がある可能性が高いので、念のため波形を確認しましょう。
そこでお客様に電源の入出力波形を確認してもらうと、スイッチング周波数とは別に、低周波で揺れている電圧が確認されました。


(…原因はこれか!)
電源回路に関わるフィルターを含めた回路図を調べてみました。
結果、入力フィルターの設計に問題があることが判明しました。
音がする原因
約200mVp-pの約1200Hz(0.8msec)低周波発振
通常、入力フィルターの設計では電源が負性抵抗の振る舞いをするため、|ZS|<|ZI|を守る必要があります(電源システム安定化の条件)。
今回のお客様の設計では、フィルターのインダクタンス値とコンデンサーのESR値に問題が有り、安定化の条件が満たされておらず、振動が発生していたようです。

さらにお客様に詳細を聞いていくと、試作基板のDC/DCコンバーターも壊れていたことが判明!
やはりこの発振が破壊の原因でした。
弊社の提案を基に入力フィルターの再設計をおこない、発振の防止、DC/DCコンバーターの不具合対策もおこなうことができました。
本記事の内容を、定期開催している以下のセミナーで詳しく説明しています。ご興味のある方は、ぜひ受講ください。
自席で学べるLTspice ~ 電源ICモデルを使って電源回路を学んでみよう! ~
今回のポイント

電源入力フィルターの設計はとても重要
アプリケーションノート
負性抵抗動作によるスイッチング電源の発振について、より詳しく解説しているアプリケーションノートがダウンロードできます。
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