波形観察
効率を測定したところ、レビュー前基板(白基板)の一部で効率が急激に低下する現象が確認されました。
今回はその原因を考えていきます!

レビュー前基板(白基板)とレビュー後基板(黒基板)は基板パターンのみが異なります。
詳細は、「自作プリント基板で電源作成!(2)」に記載してあります。
まず初めに、白基板で効率が急激に落ちている36V-1.5A付近の波形を観察しました。

波形は、上から順に「出力ノードの電圧」「入力ノードの電圧」「スイッチングノードの電圧」です。スイッチングが途中で途切れていることがみてとれますね。これが効率低下の原因かもしれません。
スイッチング停止の仮説
スイッチング動作が突然停止する原因としては、以下の4つの可能性が考えられると思います。
・過電流保護 (OCP):負荷電流が許容範囲を超え、保護回路が作動してスイッチングが停止した。
・過電圧保護 (OVP):出力電圧が規定値を超え、過電圧保護が作動してスイッチングが停止した。
・過熱保護 (OTP):コンバーターが過度に発熱し、サーマルシャットダウンが作動した。
・入力電圧低下 (UVLO):入力電圧が規定の下限を下回り、スイッチングが停止した。
まず、OCP、OVP、UVLOについては、電圧や電流がいずれも制限に達していないことが確認できたため、これらの原因は排除しました。さらに、過電流保護 (OCP) が作動した際の波形と比較しても、特徴が一致しませんでした。
残る可能性は「サーマルシャットダウン」です。では、どのようにしてサーマルシャットダウンが原因だと断定できるでしょうか?
原因はサーマルシャットダウンなのか?
そもそも「サーマルシャットダウン」は、どのような時に発生するのでしょうか?
データシートによると、IC のジャンクション温度が 150℃ を超えた時に、保護機能としてサーマルシャットダウンがかかると書かれています。ということは、IC のジャンクション温度が 150℃ に達しないように冷却すれば、サーマルシャットダウンは防げるはずです!
さらに、冷却することでスイッチングが途切れる現象がなくなれば、サーマルシャットダウンによる問題だったと確認できます。この仮説を検証するためには、基板全体を冷やしながら波形を観察する必要があります。そこで役立つのが「恒温槽」です。恒温槽は、内部の温度を設定範囲内で一定に制御し、材料や製品の温度試験、特性評価、または保管などに使用される装置です。

恒温槽での測定
上記のように基板をケースに入れて、恒温槽内に設置しました。恒温槽内の温度をー10℃に設定して波形を測定しました。
室温環境下と波形を比べた結果が以下になります。


室温環境化は起動から10秒程度でスイッチングの停止が観測されましたが、-10℃環境下では起動から3分経過後も途切れることなくスイッチングされていますね!
これでサーマルシャットダウンが原因だと突き止めることができました!
次回は、2つの基板間で生じた効率の差について、さらに掘り下げて考察していきます。
どのような要因が影響しているのか、詳しく見ていきますのでお楽しみに!
ユニバーサル基板編 / プリント基板編一覧
■ユニバーサル基板編
・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (1)
・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (2)
・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (3)
・ユニバーサル基板でDC/DCコンバーターを作ってみた (4)
■プリント基板編
・自作プリント基板で電源作成!(4)