LTspiceを使ってみよう - 定パワー回路でコンデンサー容量を見積もる方法

LEDドライバーで作るフラッシュ回路を作るには、出力コンデンサーの見積もりが必要です。この記事では、LTspiceを使用してフラッシュ回路に必要なコンデンサーの見積もりを行う際に重要な、定パワー(CP : Constant Power)回路の作り方について詳しく解説していきます。

もしLTspiceを今から始められる方でしたら、以下の一覧から「基本編」を見ることをお勧めします。 

LTspiceを使ってみようシリーズ 一覧はこちら


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可変抵抗の作り方

LTspiceで定パワー回路を作るには、下記「可変抵抗を作ってみよう」の記事の内容を参考にします。

 

 

この記事に書いてあるように、抵抗値をパラメーターとして取り扱うことができます。

つまり入力電圧や出力電圧によって抵抗値をコントロールできることを意味しており、定パワー電源や負荷を作ることができます。

入力電流、電圧を制限しながら定パワーでコンデンサーを充電する手法

ここでは、入力電流、電圧を制限しながら定パワーでコンデンサーを充電する手法を示します。
回路図は以下の通りで、入力電圧6V,  制限電流1A,  効率80%,  充電電圧20Vと言う仕様を想定しています。

入力電圧が6Vで出力が20Vの想定なので、昇圧回路が必要と思われる方もいるかと思いますが、あくまでDC/DCコンバーターなどを使わない、簡易検討用の回路であり、ここでは定パワーで充電する(本来はDC/DCコンバーターで制御する)ことが重要なので、入力電圧は出力電圧より高く設定しても問題ありません。むしろ電流は高い電圧から低い電圧に流れるので、十分に高い電圧に設定したほうが良いです。

図1 : 入力電流、電圧を制限しながら、コンデンサーを充電する回路と電圧・電力波形
図1 : 入力電流、電圧を制限しながら、コンデンサーを充電する回路と電圧・電力波形


想定している入力は、電圧6V, 電流1Aの6Wになります。かつDC/DCコンバーターを通過したときに効率が80%とすると、入力として必要なパワーは、6W/80%=7.5Wとなります。電流制限用のR1の値によって、定パワーになるように制御したいので、以下のように設定します。

 
 コンデンサーの電圧=VOUT
 W = V*I
 W = VOUT * I ・・・①
 W = 6V * 1A / 80%・・・②
  

 ①と②より、
 I = (6V * 1A / 80%) / VOUT
 Rを可変抵抗VRとして使用するので、
 (VIN - VOUT) / VR = I
 より
 VR = (VIN - VOUT) / ((6V * 1A / 80%) / VOUT)

 
上記の計算式より
 VR = (VIN - VOUT) / ((6V * 1A / 80%) / VOUT)
が求められたので、ビヘイビア電源でVRという電圧を出力します。

 

VRで出力されているのは電圧なので、抵抗R1のパラメーターに「R=V(VR)」と入力し、ビヘイビア電源で計算される値を抵抗値として使用します。この結果、図1のグラフで見ていただくとわかる通り、コンデンサーに入力される電力が常に7.5Wになっていることがわかるかと思います。

定パワー回路でコンデンサー容量を見積もる方法

次に定パワー負荷を接続して必要なコンデンサー容量を見積もる方法を説明します。
先ほどの回路(図1)に定パワー負荷を追加した回路図が図2になります。

これを使うと、例えばエネルギーバンクにどれくらいの容量が必要か、LEDドライバーにどれくらいの出力コンデンサーがいるかなどの計算を、実際のDC/DCを使うことなく、高速に実現することができます。

 

この回路は、コンデンサー(470uF)のエネルギーバンクに定パワー充電を実施し、満充電(20V)になったら充電を停止します。
その後、30Hzの周波数で2.5msのOn Dutyで定パワー負荷(ここでは24W)をON(接続)しコンデンサーから放電しています。負荷のON/OFFは、スイッチを使っています。

図2 : 定パワー負荷回路と波形
図2 : 定パワー負荷回路と波形

定パワー負荷の作り方

図2で追加した、定パワー負荷の作り方を説明します。
 W=VI
 V=IR
上記の基本原則から
 R=V/I
 I=W/V
より
 R=V^2/W
となります。

 

よって、コンデンサーの電圧が負荷の入力電圧になりますので、24Wの定パワーの負荷に設定するためには、先ほどの回路と同様にビヘイビア電源に次の式を入力します。
 V=V(VOUT)*V(VOUT)/24
これで定パワー負荷回路の完成です。

 

このような回路を組むことでLEDドライバーを使用したフラッシュ回路を検討する際、事前にどのようなパワーを、どういったコンデンサーに蓄えれば良いのか簡単にシミュレーションを実施できます。

今回使用したシミュレーションモデル

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