前回の記事 LTspiceを使ってみよう-「ビヘイビア電圧源」でオリジナル波形を作ろう! ではビヘイビア電圧源(BV:Behavioral Voltage Sources)の使い方をご紹介させていただきました。今回も同じ電圧源ですが、制御型の電圧源E(Voltage Dependent Voltage Source)のご紹介をさせていただきます。

もしLTspiceを今から始められる方でしたら、以下の一覧から「基本編」を見ることをお勧めします。 

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どんなことができるの?

さっそくですが、使い方の例をご紹介します。

制御型の電圧源は4本の端⼦を備えています。左側の2端子が入力端子(制御端子)となり、入力電圧差に比例した電圧を出力させることができます。そのため、比例定数が1よりおおきければ増幅器と、1以下なら減衰器とみなすことができます。

ここでは「10倍の増幅器」を作ってみたいと思います。

まず "Select Component Symbole" のダイアログボックスの中で "e" を選択し、回路図上に置きます。

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図1:部品ダイアログボックスで "e" を選択

次に "E" となっている箇所に比例定数を記入します。10倍なので「10」に変更します。

コンポーネンツ(E1)のところにカーソルを合わせて右クリック、もしくは "E" の文字の上で右クリックでエディターが開きますので "Value" のところに値を記入します。

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図2:"Value" に任意の値を記入

次に図3のように配線を行い、1kHz・100mVp-pの正弦波形を加えて出力の波形を見て動作を確認します。

OUT端子の波形が10倍に増幅され1Vp-pの振幅波形が確認できました。このように簡単に増幅器を作ることができます。

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図3:回路図とシュミレーション結果

電圧制御電圧源で理想オペアンプを作ってみよう!

電圧制御電圧源が増幅器として働くことがわかりました。ここでは増幅器の代表的なICである「オペアンプ」との比較を簡単にしてみたいと思います。

例として図4のように、高精度オペアンプICの「OP07」を使い10倍の増幅器(非反転増幅器)を作成します。また、電圧制御電圧源も同様に抵抗を用いて10倍の非反転増幅器を作成します。

電圧制御電圧源の利得は非常に大きな値として1T(10の12乗)と設定しました。また、比較的わかりやすいシミュレーション例として周波数のスペックに着目します。

OP07の周波数数帯域幅(BW)は0.6MHzとなりオペアンプの周波数は無限大ではないため、BWより大きな信号は増幅器として働きませんので、実際に確認をしてみます。

OP07のデータシートは下記URLを参照ください。
http://www.analog.com/media/en/technical-documentation/data-sheets/OP07.pdf

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図4:10倍の非反転増幅器の比較

図5がシミュレーション結果となります。

入力信号が10MHzとBWより高いため、OP07の出力(OUT2:緑色)は減衰してほぼ0Vになっていました。一方、電圧制御電圧源で作成した増幅器(OUT1:青色)は、期待通り10倍に増幅された信号がでています。

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図5:10倍の非反転増幅器のシュミレーション結果

シミュレーションではどのデバイスモデルを使うのか悩む時があります。

特に増幅器回路の設計では、代表的なICとしてオペアンプICを使うことも多いと思います。しかし、何千種類もあるオペアンプICではどのモデルを使うべきか迷うこともあると思います。

また、オペアンプのスペックは現実的には、理想ではなくオープンループゲイン、周波数、入出インピーダンスなど制限がありノイズや温度の影響もあります。

このような場合、電圧制御電圧源を使うと理想増幅器とみなすことができるため、細かいスペックを気にせずに基本回路仕様の検討を効率的におこなうことができます。

今回検証したLTspiceデモ・ファイル

SimulationFile__2.zip

今回実施した2つのシミュレーションファイルが格納されています。ぜひ、お試しください!

最後に

今回は電圧制御電圧源を使い増幅器の作り方をご紹介させていただきました!
増幅器としての使い方以外にも、変数 S用いた伝達関数(Laplace変換関数)で定義する使い方もあります。
別の機会に改めてご紹介をさせていただきたいと思います。

まだLTspiceを使ったことがない方は、下記のリンクよりLTspiceをダウンロードしてみてください!
ぜひ、一度お試しください。

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