はじめに

前回の LTspiceを使ってみよう - 基本編 では、リニア・レギュレータICのLT3045を例に、LTspiceでの回路図作成及びシミュレーション方法を紹介しました。

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今回は、DC-DCコンバータの中でスイッチングレギュレータの高速シミュレーション機能について、降圧コンバータのLT8640を用いて紹介します。

DC-DCコンバータの評価項目

一般的に、電源回路の設計において標準的に行われる評価項目として下記が挙げられます。

  1. 出力リップル電圧
  2. 変換効率
  3. 電源起動時の挙動
    出力電圧オーバーシュート・突入電流有無の確認
  4. その他
    SWノードの波形、出力の過渡応答性など


これらを全て実機で確認するのが欠かせない事ではありますが、基板作成の前に如何に机上計算して設計値を検証することがとても大切です。

そこで煩雑な手計算ではなく、LTspiceを使用することにより、基本特性の机上計算が容易に行えることが設計者にとって大きなメリットとして挙げられます。ここでは触れませんが、設計の事前検証のみならず、実機で起きた動作問題の解析にもLTspiceが非常に有用な手段となります。

では、LTspiceでどうやって確認するのか、ここで出力リップル電圧と電源の変換効率に絞って紹介します。

出力リップル電圧について

使用するLT8640の回路図

先に使用するデバイスLT8640を簡単に説明します。
このICは定格電流5A、入力電圧範囲3.4V~42V、出力可能範囲0.97~41Vを持つ同期式降圧コンバータです。

下記図に示しているように、入力電圧(緑)が12V、出力電圧(青)が5Vで動作する回路(左側)を構成しており、デバイスの動作周波数は2MHzに設定しています。

このように、まず回路図をLTspiceで作成し、入力電圧から期待の出力電圧が作れるか一目瞭然になります。
さて、赤く囲んでいる5Vの波形が安定しているように見えますが、この時にリップル電圧はどのくらいなのかを見てみましょう。

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LT8640の回路図と入出力波形

出力リップル電圧の計算方法

降圧コンバータの出力リップル電圧は下記の式で見積もる事ができます。
左側はリップル電圧の設計目標値ΔVoutです。右側は出力コンデンサCoutとそのESR値、インダクタのリップル電流値ΔILとIC動作周波数fで構成されています。

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リップルの概算式

設計手法として、左側の目標値に対し、実際のリップル電圧値を右の式で見積もり、式が成立するまでCoutなどの調整を行います。使う部品のバラツキもあれば入力電圧変化によりΔILも変わったりするので、計算のパターンが複数あり、少し手間がかかります。

LTspiceで出力リップル波形を表示させる

LTspiceで下記の操作すればリップル電圧を直観的に見るができます。
1.上記5V波形にある赤枠の部分にマウスを合わせます。
2.測定したい範囲を左クリックしてドラッグします。この操作でマウスが囲んでいる部分が拡大されます。

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マウス操作のイメージ図

2の操作を下の図のように数周期の波形がはっきり見えるまで繰り返します。
ご覧のように、オシロスコープで見たような波形がLTspiceでも見られますね。

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リップルの拡大図

拡大した波形の縦軸レンジが上手く合わせられない場合に、ツールバーにある「Autorange」アイコンを左クリックするとレンジが自動的に調整されます。

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Autorangeアイコン

正確なリップル電圧を確認

上記の拡大波形から概ねなリップル電圧値が読み取れますが、正確に数字を見る為に、下記の操作を行います。
1.測定したい範囲をまず1か所を左クリックし、もう1か所の方にドラッグしそのままホールドします。

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マウス操作イメージ図

2.ウィンドウ左下のステータス・バー内にあるdxおよびdyの測定データを確認します。

ステータスバーで表示されているdx=1.985MHz、dy=2.95mVは其々波形の周波数(周期)と振幅を意味しています。この結果から、現在の回路定数でリップル電圧が小さく抑えられているのと、動作周波数も設定通りの2MHzくらいになっていることが分かります。

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ステータスバー

使用するCout、インダクタLや入力電圧Vinが変わればLTSpice上で該当部品の属性を変えてから、再度シミュレーションを回してΔVoutが確認できるので、とても便利です。

また、マウスのホールド操作に不慣れの方は、波形にカーソルを追加して測定する方法もありますので、ぜひお試しください。
詳細はメニューバーの「Help」→「Help Topics」から「attached cursors」を検索してください。

電源の変換効率

続きまして、電源の変換効率のシミュレーション方法を紹介します。

特に電池を使うアプリケーションは駆動時間を延ばすために高効率を求める事が多く、実機を起こす前にICメーカの評価ボードでICの実力を確認しますが、時間がかかるのと評価ボードの用意がない、あるいは、簡単に自分が使う仕様に合わせられない場合があります。その時にどうやって効率を見積もるか悩む方が少なくないと思います。

実測時の効率計算

上記の回路を例に、LTspiceによる効率の自動計算をここで紹介します。
DC-DCコンバータの効率は入出力電圧と電流を計測して、下記の式に代入して計算を行います。

η=Vout*Iout/(Vin*Iin)*100%

VoutとIoutは出力電圧と出力電流、VinとIinは入力電圧と入力電流です。

LTspiceでの自動計算

では、LTspiceではどのように上記の計算を行うのでしょうか。

LTspiceではDC-DCコンバータの効率計算を行う時に、回路の入力電圧源を入力電力(Vin*Iin)とみなされるのに対し、出力の電流源或いはRloadに指定した抵抗を出力電力(Vout*Iout)であるとみなされます。LTspiceは回路の定常状態を自動的に検知し、定常状態の10サイクルくらいのデータを用いて損失電力などを計算し、回路の変換効率を自動的に計算してくれます。

難しそうに言いましたが、これをやるには、通常の時間領域.tran解析の設定に、定常状態検出の設定を追加するだけです。

下記の図のように、メニューバーの「Simulate」にある「Edit simulation cmd」を開き、「Stop simulating if steady state is detected」のチェックボックスをオンして、そしてもう一度シミュレーションをかけます。

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メニューバーからSimulate

   

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Edit simulation cmd

このシミュレーションの完了状態は通常の.tran解析と異なり、下記のように出力電圧が拡大された状態で止まります。

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シミュレーション完了時

計算結果の見方

上記の状態で既に効率が計算されており、マウスでメニューバー「View」→「Efficiency Report」で「Show on schematic」でやると、計算結果を回路図の下が表示させることができます。

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効率レポートの表示

下記の効率レポートに示されているように、効率の最終結果だけでなく、ICをはじめ、周辺部品の個々がどのくらい消費しているかも全部計算されています。これは特に効率改善を図ろうとする時に、どの部品の損失をもっと抑えれば良いかのヒントにもなります。

また今回作ったLT8640の12V入力、5V出力の回路は1A負荷時に効率が96.8%となりますが、この精度はどう考えれば良いでしょうか。
これはLTspiceでの回路の定数(周辺部品の属性も含め)を実回路にどれだけ忠実に反映できているかに関係します、つまり、回路条件が実際の回路に近ければ近い程、精度のよいシミュレーション結果が得られるとのことになります。

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効率レポート

最後に

上記の様に簡単な操作でDC-DCコンバータの特性確認が手軽に行える事がLTspiceの魅力です。

また、周辺定数のパラメータを変化させることが容易ですので、基板作製前、特性確認をしながらの周辺定数最適化に非常に便利なので、ぜひ、一度お試しください。

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