電流検出アンプで作る電子ブレーカー

電子ブレーカーのメリットとは?

回路の故障や操作ミスにより電源がショートすると過電流が流れ、電源の二次的な故障につながるばかりか、回路部品の発熱により火災などの事故にもなりかねません。そのため、電流制限機能などの保護機能を持つ電源も多いですが、より信頼性を高めるためにフューズを入れることも多いと思います。

 

しかし、フューズは溶断電流の誤差が大きく余裕を持たせないと電源投入時のラッシュ電流で溶断してしまうことがあります。また、一旦溶断してしまうと交換が必要なため、メンテナンスが面倒になる欠点があります。

 

電子的な回路ブレーカーを使うことで、保護電流を正確な値に設定することができ、電源の再投入で復帰するためメンテナンス・フリーとすることができます。

広い範囲の電源システムで使用できる電流検出アンプLT6118

LT6118は、パワーオン・リセット、リファレンス と コンパレータを内蔵したハイサイドの電流センス・アンプで、動作を-40℃~125℃で規定しているため、産業用や自動車用としても使用することができます。

 

また、2.7Vから動作可能で、60Vの最大定格を持っているので、広い範囲の電源システムで使用できます。 

以下にLT6118の特徴と機能ブロック図を示します。

 

LT6118の機能ブロック図(出典:LT6118 データシートより抜粋)
LT6118の機能ブロック図(出典:LT6118 データシートより抜粋)

  LT6118の特徴

  - 高速ステップ応答:500ns
  - 400mVの高精度リファレンスを内蔵
  - コンパレータ内蔵
  - パワーオン・リセット機能
  - 高速応答時間:500ns
  - 全しきい値誤差:最大±1.25%
  - 広い電源電圧範囲:2.7V ~60V
  - -40°C~125°Cの温度範囲で仕様を規定

 

LTspiceを使用した回路例と結果

下記は、LTspiceを使用したLT6118による回路例で、48V電源で約3Aを超えると P-MOSFET(Q1)により回路が遮断されます。

 

出力にある500uFのコンデンサは、パワーオン時のラッシュ電流により出力が遮断されないことを確認するためのもので、実際に回路に使用する必要はありません。

 

出力負荷に流れる電流はシャント抵抗R2で検出してOutAに電流出力されます。この電流をR3、R9の抵抗を介して発生させた電圧をコンパレータの入力INCに入れて、内部の400mVフィファレンスと比較して過電流を検出します。

 

OoutCに接続されたツェナー・ダイオードD2はM1のN-MOSFETのVgsを抑えて保護するためのもので、D1のツェナー・ダイオードも同様にQ1のVdsを制限して保護するためのものです。 

 

R10とC2による時定数でパワーオン時の不感帯を設けており、電源投入によるバイパス・コンデンサへのチャージで起こるラッシュ電流でブレーカーが動作しないようにしています。 

 

低い電源のシステム、例えば5Vでは、D1、D2は不要になり、R5やR10は1/10の値に調整する必要があります。

 

LT6118による48V 電源回路ブレーカーの回路例と動作波形
LT6118による48V 電源回路ブレーカーの回路例と動作波形

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