省エネ豆知識「熱の伝わり方」

熱の移動方法

省エネ豆知識「熱の移動原理」では、熱が高いところから低いところへ移動する原理についてご紹介しました。
熱の移動方法には、伝導、対流、輻射(放射)の3つの方法があります。

伝導

接触することで発生する熱移動。
高温の物体と低温の物体を接触させると、高温の物体から熱エネルギーが低温の物体に伝わり、低温の物体が活性化され温度が上がります。

身近な例としては、ホットカーペットや湯たんぽなど、人が温かいものに触れることで熱が伝わったり、氷枕など、冷たいものに触れることで熱が奪われることで発生します。

沸騰したヤカンなど熱い物体に触れると熱く感じるのは、熱い物体の熱エネルギーによって人体の原子、分子が活発になり熱く感じるためです。逆に、氷の入ったグラスなど冷たい物体に触ると冷たく感じるのは、人体の熱エネルギーで冷たい物体の原子、分子を活発させることにより、人体の原子、分子の運動が緩慢になり冷たく感じるためです。

対流

空気や液体などが循環することで発生する熱移動。
高温の空気や液体は上昇し、低温は下降することによって、空間内を循環し温度が均一化されます。

身近な例としては、風を循環させるエアコンや扇風機は対流による熱移動を利用しています。

エアコンが天井近くに設置されるのは、冷房の空気が下降する為です。
ちなみに、高温の空気や液体が上昇する理由についてですが、高温になると空気や液体は膨張し、密度が下がります。密度が下がるということは、重さが軽くなることになりますので、空気や液体が上昇することになります。

輻射(放射)

物体が遠赤外線(電磁波)を放射することで発生する熱移動。
輻射とは、遠赤外線を用いた熱移動のことで、放射・熱放射・熱輻射とも言われます。空気や水などの媒体が無くても熱を伝達します。

身近な輻射の例としては、遠赤外線を放出することで物体を温める電子レンジやオイルヒーターなどは、輻射による熱移動を利用しています。

実は、熱を持つ様々な物体(人体も含む)は大なり小なり遠赤外線を発しています。そのため、物体同士が接触していない場合や風がない場合でも、遠赤外線によって高温の物体から低温の物体へ熱が移動します。高温の物体は、低温の物体に熱を吸収され、原子や分子の運動が緩慢になることで温度が下がります。

太陽光が暖かく・トンネルの中が寒く感じる理由

太陽光が暖かく・トンネルの中が寒く感じる理由は、輻射による熱移動が発生している為です。

太陽は宇宙にあり、宇宙には空気や水はありません。しかし、太陽光を浴びると人は暖かいと感じます。
これは、太陽から出ている遠赤外線の目に見えない光のエネルギーによって、人体の原子、分子の運動が活発になる為です。(太陽と人の温度を比べると、当然、太陽の方がはるかに高い為、太陽から人への輻射の熱移動が発生する訳です。)

また、トンネルに入ったときのことを思い出してみましょう。太陽光とは逆に、ヒヤッと感じることがあったのではないでしょうか。
これは、トンネルと人体の間で、遠赤外線のやりとりが発生している為です。人体とトンネルの温度を比較すると人体の方が温度が高い為、人体からトンネルに向けて遠赤外線の熱移動が発生することになります。そのため、トンネルは人体の遠赤外線によって少しずつ温められますが、逆に見ると人体はトンネルによって遠赤外線を吸収され、人体の原子や分子の運動が緩慢になり、体温が下がる為涼しく感じるのです。洞窟の中も同じ原理で寒く感じます。

放射率、分光放射率ってなに?

放射率εとは、比較対象となる物体と基準になる物体の単位時間あたりの放射エネルギーの比率です。
放射率の値の範囲は0~1の値で、放射率が高いほど放射しやすいということになります。基準になる物体は、黒体と呼ばれる、全ての波長、温度で理想的な放射を行う理論的なもので実在しません。

分光放射率は、全ての波長ではなく、特定の波長での比較対象となる物体と黒体の放射エネルギーの比率となります。熱輻射の場合の分光放射率は、遠赤外線領域での放射エネルギーの比率を指します。

放射率と吸収率は、=(イコール)の関係があり、遠赤外線の放射率が高い(放射しやすい)ということは、遠赤外線の吸収率が高い(吸収しやすい)ということでもあります。つまり、放射率が高いとその分遠赤外線の照射が増える為、対象を暖め易くなり、同時に吸収率も高くなる為遠赤外線の吸収が増え、対象を冷やし易くなります。

  • 放射率ε(全放射率):比較対象となる物体と黒体の全ての波長での単位時間あたりの放射エネルギーの比率
  • 分光放射率:特定の波長での比較対象となる物体と黒体の放射エネルギーの比率
  • 黒体(完全放射体):全ての波長、温度で理想的な放射を行う理論的な熱放射体

金属の放射率

放射率は材質によって異なりますが、同じ材質でも表面の状態によって異なります。

金属の場合、一般的に表面を研磨すると放射率は下がり、表面が酸化したり粗くなると放射率が上がります。各金属の一般的な放射率の目安としては、表のようになります。(※1)

また、アルミニウムの場合、アルマイト加工をすることで、放射率を0.9以上に上げることが可能です。

※1:測定条件によって値は変わる為参考値とお考え下さい。

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