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世界の大潮流となっている「ゼロカーボン化」。これにより個々人や事業体、地域の生活や社会の仕組みに対して、変革が求められています。ゼロカーボン化を実現するためには、サステナブルな地域開発の実施が必須となります。地域の特性を活かしたゼロカーボン産業育成とその基盤運用を行うことにより、サステナブルかつ発展的なゼロカーボン化を進めるスマートシティが実現されます。

本記事では、現在進められている地域事例を踏まえ、マクニカのゼロカーボンスマートゾーン実現への取り組みをご紹介します。

地域のゼロカーボン化を実現し、永続的に発展させるには?

温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボン化」。その実現と持続には、どのようなポイントがあるのでしょうか。

ゼロカーボン化の実現には、社会の構造変革を推進し「再生可能エネルギーの主電源化」と「エネルギー活用の効率化」を併せて実現しなければなりません。インフラ事業者ではなく、私たち自身が主体となって、エネルギー利活用を計画・実行することが重要です。個人、家庭、地域、組織が具体的に取り組み、連携することによって、最適な循環型経済(サーキュラーエコノミー)が生まれ、継続的なゼロカーボンゾーンが生まれます。

では、ゼロカーボン化にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ゼロカーボン化は、単なる二酸化炭素排出量の削減や省エネ推進にとどまらず、地域における、新たな産業の創出や発展につながります。エネルギー資源の乏しい日本において、地域に根ざした事業者による、電力の自給自足・地産地消を実現することは、電力の安定供給や災害対策の観点からも、大きな安心と安全を保障する仕組みとなります。

ゼロカーボン化の実現には、地域のインフラ開発、事業開発、産業育成を併せて行うことが必要です。一時的な投資で実現できるものではなく、永続的な連携と推進が求められます。そのためには「適応エリアや関わる事業者、居住者、利用者がハッピーになること」が絶対条件です。

今、日本は経済発展が30年以上にわたって止まり、海外との差が開きつつあります。「世界時価総額ランキング」の50位以内にランクインする日本企業は、1989年の32社から、今や1社だけに減っています。ゼロカーボン化は、私たちの国を足もとから再生させるために、重点的に取り組むべき事業領域なのです。

ゼロカーボン化の実現に重要なポイントは、生み出すメリットや達成に向けた仕組みを明確化することです。まさに新しい事業を行うことが求められています。政府による補助金や交付金施策も活用しながら、地域の連携と継続的な事業化に取り組んでいきましょう。

永続的ゼロカーボン化実現のポイント

ゼロカーボンを進める地域の例とその取り組み

ゼロカーボン促進に向けて、国内ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。2つの事例を紹介します。

まずは、福岡県北九州市をはじめとする筑豊地区の18自治体が共同提案した取り組みです。
先端エネルギーマネジメント、モビリティ連携、蓄電池の設置といった多様なテクノロジーを活用。太陽光発電、風力発電、水素など、複数の脱炭素エネルギーを推進し、同時にリサイクルを促進します。地域のエネルギー循環を促進し、多岐にわたる地域事業者と連携して新たな地域産業を創出します。自治体の強いリーダーシップのもと、多様な新産業の創出と発展を導く、大変意欲的な試みです。同市発表の事業規模は97億円ですが、これを起点に新たなエネルギー産業の育成を狙っていると考えられます。

続いては、北海道上士幌町による取り組みです。全町マイクログリッドと地域の新産業創出を明確に打ち出しています。
同町では、人口4900人に対して2万頭の牛がいます。その地域特性を活かして、家畜のふん尿処理過程で発生するメタンガスを使い、バイオガス発電を導入します。この電力だけで、町の使用電力量の約3分の1をまかなうことができるそうです。発電後に残る消化液は、固体部分は牛の寝わらに、液体部分は液肥として牛の餌を育てる畑などに再利用。余剰のバイオガス熱を利用して、果物のハウス栽培も行います。まさに地域資源を活用したサーキュラーエコノミーの事業化です。太陽光発電も導入し、町を挙げてのゼロカーボン化を促進します。地域産業のコアとなる「かみしほろ電力」の体制強化と地域連携で、この事業を推進するそうです。

上記2例はいずれも20224月に環境省から選定された「脱炭素先行地域(第1回)」に含まれています。選定された26地域には、次のような共通する特徴があります。これは、地域特性を活かした地域事業を育むためのポイントとも言えます。

地域事業を育むためのポイント (1)地域資源を取り込んだ再エネ発電の実施 (2)地域のマイクログリッド化 (3)自治体主導で地域事業者の連携事業体を創出・運営 (4)地域のスマート連携事業を創出

ゼロカーボン化は、国の予算だけで実現するのは不可能です。補助金や交付金事業を呼び水にして、その数十倍規模の事業を、地域で運営することが求められています。

特性を活かしたゼロカーボン化事業実現へのアクション

それでは、ゼロカーボン化事業の実現に向けて、実際にどのようなアクションが求められるのでしょうか。ここでは、自治体と事業者という2つのポジションについて説明します。

自治体に求められるアクションとは

まずは自治体です。ゼロカーボン事業がこれまでの公共事業と大きく異なるのは、地域産業の創出と発展が求められている点です。国は、事業計画策定から呼び水となる費用まで、積極的に支援する姿勢を取っています。適切に活用して進めましよう。

目的は、地域産業振興と地域経済循環のモデルを作り、事業を促進することです。地域事業者にお願いするスタンスではなく、説明によって事業への参加を促し、ハッピーになってもらうことが重要です。地域の経済循環が促進されなければ、ゼロカーボン化は達成できません。ゼロカーボンの取り組みの主体は、地域事業者とその連携事業体です。首長をトップとした体制を組み、事業者と連携した対応を実現しましょう。自治体こそが成果の最大の受益者となりますが、事業体の主運営はあくまでも地域事業者とし、自治体の役割は事業者選定と成果チェックにとどめます。

成果をチェックするポイントは、二酸化炭素排出量削減と地域GDPの成長です。連携事業体と相互チェックを行う体制が望ましいでしょう。

事業者に求められるアクションとは

それでは、事業者にはどのようなアクションが求められるのでしょうか。誤解を恐れずに言えば、SDGs対応施策はCSRや企業ブランド向上策として取り組むのではなく、むしろ「自社のコア事業そのものがゼロカーボン化である」というスタンスで、自社のコア事業と連携させて取り組むべきテーマです。どの業界であっても「提供製品・サービスをゼロカーボン化させる」「事業運営をゼロカーボン化させる」という2つを基本的なテーマとして事業を推進することが、ゼロカーボン社会の実現に貢献することになります。こうした認識のうえで戦略を策定していきましょう。

事業戦略や事業計画の策定にあたっては、TCFDTask force on Climate-related Financial Disclosure)の提言している財務情報開示事項を活用すると、整理や検討が容易になります。TCFDは、気候変動への取り組みや影響に関して、企業の財務情報を開示するためのタスクフォースです。企業が気候変動に関する財務情報を開示することは、世界的な潮流となっています。

TCFD提言では、気候変動関連リスク・機会に関して、下記の4項目についての開示を企業などに推奨しています。

(1) ガバナンス:どのような体制で検討し、それを企業経営に反映しているか
(2) 戦略:短期・中期・長期にわたり、企業経営にどのように影響を与えるか、またどのような戦略を立てているか
(3) リスク管理:どのように特定、評価、管理しようとしているか
(4) 指標と目標:リスクと機会の評価について、どのような指標を用いるか、目標の設定をどうするか

TCFDの提言は、さまざまなフレームワークとの整合が実施されています。自社のゼロカーボン戦略をチェックするために活用しましょう。ゼロカーボン化は現状からの変更をともないますが、近い将来、確実に対応しなければいけないアクションです。前向きに実践していきましょう。

ゼロカーボン化事業実現へのアクション

ゼロカーボン化を強力に推進する構成ツール

マクニカでは、サーキュラーエコノミーゾーンの構築と運用を多面的に支援しています。エネルギーマネジメント、省エネマネジメント、ゴミマネジメントという各領域でサービスを展開。ゼロカーボン化に必要な「エネルギーを作る」「エネルギー消費を抑える」「エネルギーを賢く使う」ためのツールやサービスを提供しています。

マクニカの提供するサービス

ここでは、マクニカの提供するサービスの中から、事業構築運用支援、エネルギーマネジメントシステム(EMS)、蓄電池をご案内します。

マクニカの事業構築運用支援は、事業化調査からコンサルティング、構築、運用まで幅広く対象としています。AIIoTなど世界の最先端技術の活用によるゼロカーボン化の実現に向けて、フラットな位置から提案と支援を行います。例えば、経済産業省や環境省、国際協力機構(JICA)など、国内外で豊富な支援実績があります。多様な製品を扱う商社の強みを活かして、幅広い市場の最新情報を提供し、サーキュラーエコノミーの多様な要件を支援します。

次に、エネルギーの使用状況を管理するエネルギーマネジメント領域の製品として、ポルトガルを拠点とするCleanwatts(クリーンワッツ)社のEMSツールを紹介します。1台からモニタリング・制御が可能で、利用状況に応じた従量課金のため、イニシャルコストを抑制しながら手軽に導入できるのが最大の特長です。ガスや水など電気以外のエネルギーも併せてモニタリングが可能です。同社のクラウド型エネルギー管理プラットフォーム「Cleanwatts OS」では、ビル、工場、家庭向けの電力管理機能、太陽光発電や蓄電池の管理機能、マイクログリッドを可能にするVPP(バーチャルパワープラント)機能などが統合されています。ダッシュボードは見やすく、カスタマイズも可能です。既存の制御システムやアプリケーションとの連携にも柔軟に対応できるため、多種多様なデータを収集して分析・可視化し、予測や制御に活用できます。欧州・ブラジルでの実績が多くあり、政府、自治体、学校、病院、空港、鉄道、ホテル、ショッピングモール、製造業などでの導入、多様なデータ利用要件で活用されています。

続いて、蓄電池です。蓄電池領域では大きな技術革新があり、その実装がこの12年で進んでいます。従来は非常用電源や予備電源として扱われることが多く、コストアップ要因となってきましたが、現状では常用電源としての利用が可能となってきており、価格も実用的な範囲になっています。20年を超える長寿命の製品が登場し、安全なリサイクルも可能で、運用コスト、廃棄コスト、安全性コストなどを勘案すると大変ローコストです。今までの蓄電池と違う使い方ができる製品となっています。

まとめ

本記事では、地域特性を活かして、どのようにゼロカーボンシティの実現に取り組むべきか、ゼロカーボン化の促進によって生まれる効果とその方法を紹介しました。世界的な新産業創出競争の中で事業を組成することとなりますが、地域が主役のアクションです。地域の資源や特性を活かしたハッピーな事業モデルを創出し、発展に導いていきましょう。

マクニカでは、サーキュラーエコノミーゾーンの構築と運用を多面的に支援しています。ゼロカーボン化ソリューションに関心をお持ちの方は、ぜひご連絡ください。

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