人類史上初めて訪れた環境保護・利用改善を「あるじ(主)」とする時代に変革していく社会。本記事では、この大変革に対応するコミュニティ・事業体の活動の意味と役割を解説し対応方法をご紹介します。

地球温暖化対策と「スマートエネルギーグリッド」

地球温暖化は、二酸化炭素排出量の増加により発生し、産業革命以降、平均気温が1度上昇しているそうです。たった1度であるにもかかわらず、昨今の風水害や干ばつ、山火事など大変な危険をもたらす原因になっています。しかも、このまま放置すると、2080年代には平均気温が4.5度も上昇すると言われます。

そこで温暖化対策が叫ばれるようになりました。世界的には、パリ協定が大きな転機となり、日本も2020年10月26日、当時の菅総理が所信表明演説で、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と述べました。ここで、日本の潮目が本格的に変わったと考えられます。

 

この宣言で日本は、温暖化対応を本格的に経済成長・社会変革につなげるスイッチであると明確に設定しました。実際に大胆な構造変化・社会変革を伴う施策が打たれ、大胆な予算措置も執られました。これにより、従来の「コスト増をもたらす温暖化対策」との認識が一変し、社会変革を行うことで温暖化対策がコストダウン策であり、スマートな社会を作る方法という方向性が明確になりました。

これは、エネルギー利用の大変革でもあります。利用者自身が最適なエネルギーの利用環境を選択し、投資を行い活用することで、大きなメリットを得られることが明確になってきました。温暖化対策は、再エネを主電源として、その原料は基本的に無料です。技術革新により再エネを作る・使う費用は低くなっていきます。

ここで発想を転換し、エネルギーをエネルギー企業から単純に買うのではなく、自分で作って使ったり、時として売ったりするという認識で行動すれば、エネルギーは収益源にもなり、人々の生活を便利にするツールなります。例えば、郊外や田舎にある空き家を利用し、自分の使う電気を自分で賄います。所属する企業などが、Web会議を主体しているのであれば、引越しすることも選択肢になってきます。土日はDIYと田舎暮らしを満喫し、ついでに農地を借りて太陽光発電も実施し、売電もできる社会になります。2050年は、エネルギーを賢く安全・安価に使える人と、エネルギーコストを負担するだけの人という2つに分かれる世界になっているかもしれません。

 温暖化対策として脱炭素社会を実現するためには、化石燃料の使用を減らし、再エネ主体の利用に変えます。自家発電と消費は、一人だと限られた量しか扱えません。そこで地域と融合してエネルギーを融通できる環境を作ります。そのためには、エネルギーの見える化と予測制御が必要です。

これは循環型の社会を構成することになります。エネルギーを自分たちで作るエネルギーマネジメント、地域連携での大胆な省エネマネジメント、そして、地域から出る廃棄物の処理時のエネルギーを利用するゴミマネジメントで構成された「スマートエネルギーグリッド」を作り上げていくこととなります。

スマートエネルギーを適合するメリット

このスマートエネルギーを利用する環境でわれわれは、どのようなメリットを得らえるのでしょうか。経済産業省が発表した2020年と2030年の発電コスト試算によると、2020年の原子力発電と太陽光発電の価格はほぼ同じですが、2030年では太陽光の方がかなり安くなります。さらに自家発電・自家消費なら、再エネ賦課金が発生せず配電も不要ならその費用もかからないので、とてもお得になります。

新しいタイプの太陽電池は、1kw当たり1万5,000円を目指して2025年を目標に開発中です。実用化されれば太陽光発電の設置コストが半分以下になり、とてもお得で、防災対応レベルも各段に向上します。地域エネルギーグリッドが適切に導入されていれば、とても安心できる地域となります。防災だけでなく地域の見える化は、さまざまなサービスのスマート化を実現します。インフラ管理や防犯対応、送迎・配達などがローコスト化した上で、より快適で便利になります。

スマートエネルギーの適合はどのように行えばよいのでしょうか。これまでは「それは総務の仕事なのでは?」と考えがちですが、発想を転換し、「これはESG対応の一環である」と考えれば、納得できるはずです。現代社会はESGに対応した業務を行うことが基本的に求められており、事業戦略なのです。もちろん、エネルギー研究者になる必要はありません。発想を転換してESGの対応で自分たちが何を、どうするのかを検討しましょう。

さらに、私たちがエネルギーの利用で今後得たいメリットと、エネルギーの自家消費で発生することを確認します。課題の選定、パートナーとの連携、他所の事例検証をして、実施要件を設定し、概要を設計していきます。そして、課題の整理と対策の設定をします。

併せて、現状と設定した要件による比較検討も実施するとよいでしょう。使用する電気は再エネか? 二酸化炭素どのくらい排出しているか? エネルギーコストはどのくらいか? 自社メリットは何か? いつまでにするのか? を整理し固めて行きます。

そして計画の策定、実行と検証です。この際に補助事業も織り交ぜます。現在政府は多数の補助事業を展開していますので、ぜひ補助事業を加えて実行計画を策定してみましょう。きちんとしてみると、例えば、200kwを発電し300kwhの蓄電池を制御してEV3台導入しても、毎月電気代が20%下がり、6年目から毎月10万円儲かる、なんてことができるかもしれません。

電力アグリゲーターの活用

スマートエネルギーを利用する上で重要な業務を担う事業者が、電力アグリゲーターです。スマートエネルギー環境は、再エネの利用を主体としますが、再エネは不安定な電力という課題があります。さらに周囲と連携しないと上手に使えません。分散電源であり、数万、数十万カ所という規模になりますから、それぞれに自己管理するのが難しいのです。電力アグリゲーターは、その環境を有効に運用します。

また電力アグリゲーターは、分散電源の管理運用、最適なエネルギーの需給調整、電力市場取引を担います。日本でも2012年頃から活動が始まり、毎年続々と参入者が増えています。2022年からFIP制度が開始されることもあり、このような事業者を自身のパートナーとして活用しましょう。

スマートエネルギー環境の構成

スマートエネルギー環境を構成する再エネ、蓄電池、省エネ、エネマネについて簡単に解説します。

まずは再エネです。太陽光発電は安価な電源となり、さらに多様な再エネ電源がさらに安価な電源になろうとしています。この辺りは制度と技術革新が進展により、ますます進化しています。エネルギーは使うのみから、自分で作り使うとお得な時代になって来ています。太陽光発電システムは、現状シリコン太陽電池が90%以上を占めますが、今後ペロブスカイト構造の太陽電池が登場すれば、コストが飛躍的に下がります。また、風力発電も入ってくる予定です。日本の周辺海域に洋上発電もあります、この辺りも導入の仕方の工夫がいろいろ登場してくると思われます。

次に蓄電池です。ここでは大きな技術革新とその実装がこの12年で進んでいます。これまで蓄電池は、通常はそれほど稼働をしない非常用電源として活用され、コストアップの要因でした。しかし新しいタイプでは、充放電回数の制限無しで大容量・大規模出力が実現され、価格も実用に耐えるローコスト化が進み、常用利用の電源として活用する時代になりました。今後本格的に活用することにより、再エネを安く常時使用する環境が整うことになります。

省エネは、オイルショックの時代に生まれた言葉です。最近は年間25%を削減するイメージでしたが、実際には、先端製品は技術体系が異なる方法を適合して数十%の省エネを実現しています。冷房や冷蔵庫、照明などで革新的技術の適合が進んでいます。

そしてエネマネは、様々な分散電源の個別最適利用と同時に、全体最適を行う制御を実行します。ここではAIが本格的に実装され活用されています。残念ながら、日本は制度の兼ね合いで導入が遅れていましたが、制度の変更によって本格的な導入期となってきました。電力だけでなく、熱、水などのインフラを全体で統合管理し、市場取引連動まで実現するツールもあり、今後様々な状況の中で活用されてくると考えられます。

スマートエネルギーグリッドサンプル事例

最後に地域や町や事業所で適合できるスマートエネルギーグリッドのサンプル例をご紹介します。

団地やショッピングモールなどの大規模需要家との連携を促進しています。需給状況に応じて電力の相互融通や、住民や企業が所有するEV車両を接続して地域の重点施設となる「移動する蓄電池」として連結もします。

さらに太陽光発電や定置型大型蓄電池を導入して、団地、学校・公共施設間で電力融通できるマイクログリッドを構築します。非常時には避難施設への確実な給電を実現し、平常時には再エネ利用の拡大を実現します。学校や公共施設では省エネの冷暖房設備を導入して電力消費量を大幅抑制します。また、地域内施設に設置する多様なIoT機器を活用して「電力消費量の見える化」「抑制・最適化」を実現し、エネルギー需給センターの業務を域内で運営します。

このサンプルは、地域の要件さえ整えばすぐに実行できます。ぜひ皆さんも検討してみてください。