抵抗やキャパシタの値は、20 とか 50 などのきりのよい数字ではなく、22 とか 51 のような値になっていることはご存じのとおりです。これは、部品の製造上の誤差を考慮して決めたものです。

たとえば、100 Ω の抵抗が 5 % の誤差を持っているとします。この抵抗の範囲は、100 × (±0.05) = 95~105 です。この1つ上の抵抗を 110 Ω とすると、110 × (±0.05) = 104.5~116 となって、ほぼ連続してカバーできます。100 の次が 110 なので、値のキザミは 10 % です。

ただ、10 % ずつ増やすと、24 回目は 985、25 回目は 1083 となって、1000 にはなりません。100 Ω の桁も、1 kΩ の桁も同じ数値にしたいので、10 % のキザミよりほんの少しキザミを大きくすると、24 回目にちょうど 1000 になります。式で表すと、10^(1/24) = 1.100694 で、10.0694 % となります。

別の表現をすると、対数目盛りの 1 桁を 24 分割したものです。この数値を E24 系列といいます。その半分の E12、さらにその半分の E6 も定義されています。逆にもっと細かい E48 系列や E96 系列もあります。E24 系列以下は表示桁は 2桁、すなわち、1.0 の次は 1.1 ですが、E48 系列以上では 3桁表示です。1.00 とか 1.05 といった具合です。表1 にこれらの値を示します。

表1 E系列
E6 E12 E24 E48 E96
1.0 1.0 1.0 1.00 1.05 1.00 1.02 1.05 1.07
1.1 1.10 1.15 1.10 1.13 1.15 1.18
1.2 1.2 1.21 1.27 1.21 1.24 1.27 1.30
1.3 1.33 1.40 1.33 1.37 1.40 1.43
1.5 1.5 1.5 1.47 1.54 1.47 1.50 1.54 1.58
1.6 1.62 1.69 1.62 1.65 1.69 1.74
1.8 1.8 1.78 1.87 1.78 1.82 1.87 1.91
2.0 1.96 2.05 1.96 2.00 2.05 2.10
2.2 2.2 2.2 2.15 2.26 2.15 2.21 2.26 2.32
2.4 2.37 2.49 2.37 2.43 2.49 2.55
2.7 2.7 2.61 2.74 2.61 2.67 2.74 2.80
3.0 2.87 3.01 2.87 2.94 3.01 3.09
3.3 3.3 3.3 3.16 3.32 3.16 3.24 3.32 3.40
3.6 3.48 3.65 3.48 3.57 3.65 3.74
3.9 3.9 3.83 4.02 3.83 3.92 4.02 4.12
4.3 4.22 4.42 4.22 4.32 4.42 4.53
4.7 4.7 4.7 4.64 4.87 4.64 4.75 4.87 4.99
5.1 5.11 5.36 5.11 5.23 5.36 5.49
5.6 5.6 5.62 5.90 5.62 5.76 5.90 6.04
6.2 6.19 6.49 6.19 6.34 6.49 6.65
6.8 6.8 6.8 6.81 7.15 6.81 6.98 7.15 7.32
7.5 7.50 7.87 7.50 7.68 7.87 8.06
8.2 8.2 8.25 8.66 8.25 8.45 8.66 8.87
9.1 9.09 9.53 9.09 9.31 9.53 9.76

※赤文字が10

n24

と異なる箇所

一般に、許容誤差は E12 は ±10 %、E24 は ±5 %、E96 は ±1 % と規定されていますが、これ以外の許容範囲の製品も存在します。

たとえば、E24 系列の抵抗を 10 ~ 1 MΩ(メガ・オーム)まで揃えるとすると、5桁分なので、24 × 5 + 1 = 121 種類の部品を用意する必要があります。プリント配線板に部品を実装する際のマウンタにこれだけの種類を準備して製造に臨みます。E96 系列ならば 481 種類となるので、実際には使用する分だけを選択して準備することになり、部品の取り替えの工数(費用)が発生します。「段取りのコスト」とか言われています。製造の自動化が進むと、出来るだけ少ない種類の部品を直列や並列接続して、少ない種類で設計することが望ましい場合もあります。

たとえば、73 Ω が必要だが、E24 系列では、68 Ω と 75 Ω しか選べません。E96 系列の 73.2 Ω を用いる代わりに、抵抗を 2 個用いて 51 Ω と 22 Ω を直列接続することよって、E24 系列でも実現できます。75 Ω と 2.7 kΩ の並列接続でも実現できます。抵抗の個数の増加と、製造コストの低減とのトレード・オフになります。設計とは、本来こんなところまで考えるべきなのでしょう。

ところで、10^(n/24) を計算してみた方がいらっしゃるのではないでしょうか。私は昔から好奇心旺盛だったので、このような記事をみると計算してみたくなります。実際に計算すると、たとえば、10^(10/24) = 2.6 になって、表1 の 2.7 とは異なります。このほかにも 10^(n/24) とは一致しない場合がいくつかあります。表1 には青字で示しています。2.7 の代わりに 2.6 にしたほうが、E48 とか E96 系列との連続性もあります。なぜこのような違いがあるかはよく分かりません。なお、E48 とか E96 系列にはこのような違いはありません。

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