電球に流れる電流は、オームの法則により求めることができます。
1.5 V 、0.3 W の電球を考えます。電力 P = 電圧 V × 電流 I なので、電球に流れる電流は 0.2 A です。抵抗 R = 電圧 V ÷ 電流 I の関係から、抵抗 R = 1.5 V ÷ 0.2 A = 7.5 Ω となります。
この抵抗値は、電球が光っているときの値です。光っているときには電球の光っている部分(フィラメント)の温度は 2000 ~ 3000 ℃ にもなっています。ちなみに、ガラス表面は数 10 ℃ からせいぜい 100 ~ 200 ℃ 程度です。

一般的に、抵抗値は温度に対して正の温度係数を持っています。 電球が冷めているとき(光ってないとき)の抵抗値は、光っているときより 1 桁以上小さい値です。そうすると、光ってないときの抵抗値は 7.5 Ω の 1/10 として 0.75 Ω です。この瞬間の電流値は 1.5 V ÷ 0.75 Ω なので、2 A もの電流が流れます。すぐにフィラメントの温度が上がるので、抵抗値は高くなって、定常値に落ち着きます。
このことは、電球のオン/オフを半導体で制御する場合に非常に重要となります。メカニカルのスイッチの電流耐量には余裕があるので、瞬間的に 2 A 流れてもそんなに大きな問題は生じませんが、半導体の場合には、0.2 A のつもりで設計して瞬時でも 2 A もの電流が流れると、たちまち破壊に至ります。それでは、定常時の電流値の 10 倍の耐量を有する半導体を用いるかというとそれは極めて不経済です。
昔のコンピュータのインジケータは LED ではなくて、白熱電球を使っていました。 それも、昔の SF 映画に出てくるように、コンソール上にはかなりの数の電球があったので、駆動回路もその分だけありました。この課題にどのように対処するかは重要な問題でした。
定格の 10 倍もの耐量を有する駆動回路ではなくて、せいぜい 2 倍程度の耐量の駆動回路でなんとかならないかという工夫をしました。これ以下の答えを読まずに少し考えてみて下さい。


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答え
駆動回路は一般的にオン(ほぼ 0 Ω)とオフ(ほぼ無限大)の 2 つの状態を持ちます。オンとは電源と電球とを接続して点灯することで、オフとはこの経路を切断して消灯することです。
電球の抵抗値を、点灯時に 7.5 Ω、消灯時に 0.75 Ω とし、電源電圧を 1.5 V とします。先に述べたように、点灯時の消費電力は、電圧が 1.5 V で、電流は 1.5 V ÷ 7.5 Ω = 0.2 A なので、1. 5V × 0.2 A = 0.3 W となります。
オフの状態からオンにした瞬間は、上述のように 1.5 V ÷ 0.75 Ω = 2 A の電流が流れます。

この駆動回路に並列に例えば 7.5 Ω の抵抗を接続して、オフの状態を完全な開放ではなくて、7.5 Ω の抵抗値にすると、駆動回路がオフのときには電球は 7.5 Ω の抵抗を介して電源につながります。 このときに、仮に、電球の抵抗値が 2.5 Ω になっていたとすると、流れる電流は 1.5 V ÷ (7.5 Ω + 2.5 Ω) = 0.15 A です。このときの電球の電力は、I^2R = (0.15A)^2 × 2.5 Ω = 0.056 W となります。0.3 W で規定の明るさになる電球の 1/6 程度の電力なので、電球はぼんやりと点灯します。この状態を、半分(厳密に半分ではないですが)点灯した状態なので、半点灯と呼びます。このときに駆動回路がオン(0 Ω)なった瞬間の電流は、1.5 V ÷ 2.5 Ω = 0.6 A で、本来の 0.2 A の 3 倍、並列抵抗を入れないときの 2 A に対して 1/3 程度の電流ですみます。並列抵抗値を大きくすると半点灯時の明るさが暗くなり、駆動時のピーク電流が大きくなり、逆に並列抵抗を小さくすると半点灯時の明るさが明るくなり、駆動時のピーク電流を小さく抑えることができます。

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