将来の自動車の安全性・インフォテイメントを進化させる、ギガビットマルチメディアシリアルリンク (GMSL) SerDes IC

近年、自動車には多様な車載向けアプリケーションが実装されており、取扱うデータ量も急増しています。

映像データを取扱うアプリケーションにおいて、たとえば車載カメラに限定しても「高画質化」と「1台当たりの車両に搭載されるカメラ数の増加」という2つのトレンド要求があります。

車載カメラの解像度トレンド
車載カメラの解像度トレンド


また、インフォテイメントにおける車載ディスプレイの増加、高解像度化、および先進運転支援システム (ADAS) におけるアプリケーションの増加、たとえばE-mirrorやドライバーステータスモニター、パーキングアシストシステム、ドライブレコーダーなど、映像データを伝送するアプリケーションの増加と高解像度化の要求が急速に高まってきています。

こうした課題をお持ちの方におすすめなのが、アナログ・デバイセズ(ADI)社が統合した旧マキシム・インテグレーテッド(Maxim)社のGMSL SerDes ICです。
ここでは、ADIMaxim)のGMSL SerDes ICの特長を紹介します。

1台当たりの車両に搭載されるカメラ数の増加
1台当たりの車両に搭載されるカメラ数の増加

SerDesとは

SerDesとは、シリアライザー(Serializer)とデシリアライザー(De-serializer)の頭文字を取った造語であり、一般的には高速シリアル伝送をおこなうICを総称しています。10年以上前、取扱う解像度がSDStandard Definition)、たとえばVGANTSC相当の伝送で十分だった時代は、デジタルでの伝送はパラレル8bitで事足りていました。

しかし近年、求められる解像度がHDHigh Definition, 1280×720, Full-HD (1920×1080), 4K2Kと増加するに伴い、デジタル伝送をパラレルでおこなうには厳しい状況になりました。パラレルビット数の増加にともなって基板面積、ケーブル形状、長配線など、さまざまな制約が発生しました。また、伝送レート(クロック周波数)を上げることによるタイミング制約(セットアップ/ホールド)確保の難題化、設計の高難度化が顕著になりました。

そこで開発されたのがSerDes ICです。

SerDes IC
SerDes IC

シリアライザー・デシリアライザー間はシリアルで伝送されますので、基板面積やケーブル空間面積を消費せずに高解像度映像の大容量データを伝送することができます。また、シリアル伝送データ内にクロックを埋め込んで伝送するClock Embedded方式により、タイミング制約(セットアップ/ホールド)課題も解決されます。

今後も機器間で高解像度データを伝送する用途において、SerDesは欠かせない技術要素になると考えられます。

GMSLとは

GMSLとは、アナログ・デバイセズ (ADI) 社が統合した旧マキシム・インテグレーテッド (Maxim) 社が開発した、ギガビットマルチメディアシリアルリンクSerDes ICの総称です。旧Maxim社は2003年、業界に先駆けてGMSL SerDes ICをリリースし、以来約20年に渡って業界をリードし続けています。

GMSL SerDes ICの主な特長はこちらです。
 ・最長15mの同軸 (Coax) ケーブルまたはSTP(シールドツイストペア)ケーブルで伝送可能
 ・GMSLシリアライザーとデシリアライザーの相互運用により、リンクの各終端で異なるインターフェースの使用が可能
 ・GMSLリンク診断機能(Short to Battery、Short to GND、OPEN検知)
 ・スペクトラム拡散機能によりSerDesリンクの電磁干渉 (EMI) 性能の向上

リンクの各終端で異なるインターフェースの使用が可能

GMSLシリアライザーICの受信側およびGMSLデシリアライザーICの送信側は、さまざまなインターフェースを持つICが用意されています。これにより、さまざまなIC/システムをGMSLリンクで接続することが可能になります。

■ シリアライザー製品選択ガイド

型番

入力

インターフェース

速度(Mbps)

サイズ(mm2)

HDCP

アプリケーション

MAX96707

14

CMOS / LVCMOS

1740

16.8

 

1.7Gbps小型カメラ

MAX96709

14

CMOS / LVCMOS

1740

16.8

 

MAX96705

16

CMOS / LVCMOS

1740

26

 

MAX96711

14

CMOS / LVCMOS

1740

26

 

MAX9271

16

CMOS / LVCMOS

1500

26

 

1.5Gbpsカメラ/ディスプレイ

MAX9273

22

CMOS / LVCMOS

1500

37.2

 

MAX9249

4

LVDS

2500

50.4

 

2.5Gbpsカメラ/ディスプレイ

MAX9259

30

CML

2500

65.6

 

MAX9293

HDMI

3120

65.6

3.12Gbpsディスプレイ

MAX9277

4

LVDS

2800

50.4

 

MAX9281

4

LVDS

2800

50.4

MAX9275

30

LVCMOS

2800

65.6

 

MAX9279

30

LVCMOS

2800

65.6

 

MAX9291

 ー 

HDMI

3120

65.6

 

■ デシリアライザー製品選択ガイド

型番

入力

インターフェース

速度(Mbps)

サイズ(mm2)

HDCP

アプリケーション

MAX96706

14

CMOS / LVCMOS

1740

26

 

1.7Gbps小型カメラ

MAX96708

14

CMOS / LVCMOS

1740

26

 

MAX9272A

28

CMOS / LVCMOS

1500

50.4

 

1.5Gbpsカメラ/ディスプレイ

MAX9264

30

CMOS / LVCMOS

2500

65.6

2.5Gbpsカメラ/ディスプレイ

MAX9268

4

LVDS

2500

50.4

 

MAX9260

30

CMOS / LVCMOS

2500

65.6

 

MAX9278A

4

LVDS

3120

50.4

 

3.12Gbpsディスプレイ

MAX9282A

4

LVDS

3120

50.4

MAX9276A

32

CMOS / LVCMOS

3120

65.6

 

MAX9280A

32

CMOS / LVCMOS

3120

65.6

MAX9288

4

CSI-2

3120

50.4

 

MAX9278A

4

LVDS

3120

50.4

 

MAX9286

4

CSI-2

1500

65.6

 

カメラ用クワッドSER入力

ご覧のとおり、CMOS/LVCMOS、LVDS、HDMI、MIPI CSI-2など、さまざまなインターフェースを持つGMSL SerDes ICが用意されています。このほかにもGMSL製品ラインナップは豊富にありますので、お気軽にお問い合わせください。

GMSLリンク診断機能(Short to Battery、Short to GND、OPEN検知)

GMSLの一部のICGMSLリンク診断機能(ラインフォルト検出)を内蔵しています。GMSLリンクとLMN0/LMN1端子の間に外付けの抵抗ネットワークを付加し、1.5V 1.7Vの範囲のリファレンス電圧を含むことによって、システムは自動的にGMSLリンクの物理的状態を検出することができます。

OPEN検知(ケーブルの断線)、Short to Battery(バッテリーへの短絡)、Short to GND(グランドへの短絡)が検出された場合、オプションのハードウェア端子 (LFLTB/GPIO1) を使用してフラグを立てることができます。2つのラインフォルトモニター端子 (LMN0およびLMN1) が内蔵されており、同軸ケーブルおよびシールドツイストペア (STP) ケーブルと組合わせて使用することができます。

LMN0/LMN1端子の正常動作スレッショルドは0.57V 1.07Vです。ケーブルがGNDに短絡された場合、ライン電圧はこのスレッショルド以下に低下します。ケーブルがオープンの場合、ライン電圧は1.5V 1.7Vの範囲のリファレンス電圧まで上昇します。ケーブルがバッテリーに短絡された場合、ライン 電圧は2.5V以上に上昇します。

STP(左)および同軸(右)ケーブルのラインフォルト検出
STP(左)および同軸(右)ケーブルのラインフォルト検出

スペクトラム拡散機能

GMSL SerDes ICはスペクトラム拡散機能を保有しています。これによりGMSLリンクの電磁干渉 (EMI) 性能を向上させることが可能です。

こちらは、GMSLシリアライザー製品“MAX96707”のデータシートに記載されているスペクトラム拡散機能設定とスペクトラム拡散使用時のPIXEL CLOCK FREQUENCYグラフです。
“MAX96707”でスペクトラム拡散機能を使用する場合は、専用のレジスタ(SSレジスタ)を設定します。

SS

SPREAD (%)

000

Power-up default (no spread spectrum)

001

±0.5% spread spectrum

 010

±1.5% spread spectrum

 011

±2% spread spectrum

 100

No spread spectrum

 101

±1% spread spectrum

 110

±3% spread spectrum

 111

±4% spread spectrum


SSレジスタを設定することで、ピクセルクロックの特定の周波数にエネルギーが集中しないようにします。また、SDIVレジスタの手動設定により、ユーザーは PCLKIN 周波数にしたがって変調周波数(通常は 20kHz)を設定できます。これにより、電波障害 (EMI) の原因となる特定周波数へのエネルギー集中を緩和させることが可能です。

設定方法の詳細はデータシートをご参照ください。

スペクトラム拡散効果 左:ピクセルクロック=20MHz, 右:ピクセルクロック=50MHz

こちらの記事では、車載アプリケーションを設計する方に向けて、課題解決に最適なADI (Maxim) のGMSL SerDes ICを紹介しました。ご紹介した各デバイスの評価ボードをご用意しています。どうぞお気軽にお問い合わせください。

アプリケーション例

ADAS(先進運転支援システム)
・インフォテインメント

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